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151、悪魔は孫と会う

別宅に行った翌日。


また教会に来るようにヴェリゴに言われていたので、宿屋を昼過ぎに出た。

そして教会に向かって歩いていると。

「あ、こんにちわ。」

と声をかけられた。

声の方を見るとふわふわの腰まで長い茶髪の美少女がいた。

確か・・・この子は・・・。

「こんにちわ。クラリスさん、で間違いなかったですか?」

「そうです、クラリスです。覚えてて下さったんですねユウジンさん。」

「あなたこそよく覚えてて下さいましたね。」

そう言うと、クラリスはくすくすと笑い出した。

「そりゃあ、肩にネコちゃん乗っけてる人なんて他にいないですから、すぐ覚えちゃいました。」

・・・それはそうだ。

肩に猫を乗っけた人間なんて俺以外に見たことないしな。

目立つから降ろしたい気持ちもあるが、なんだかんだでクロ助は肩が気に入ってるからもう今さら降ろせない。

目立ちたくないんだがなあ・・・はあ。


ふとクラリスの手元を見ると、買い物かごを持っていた。

「お買い物中でしたか?」

「お母さんにお使い頼まれちゃって。買い物は終わってこれから教会に帰るところだったんです。」

「おや、俺も教会に向かうところだったんですよ。」

「また寄付しに来ていただけるんですか?ありがとうございます!一緒に行きませんか?」

俺は思わぬ申し出にニコリと笑った。

「喜んで。では、かごを持ちますよ。」

「えっ!?だ、大丈夫ですよ。」

「重いものを持つのが男の義務らしいので、付き合っていただけると助かります。」

クラリスはくすっと笑うと「では、遠慮なく」とかごを差し出してくれた。


しばらく一緒に歩くと自然と雑談することとなった。

「へえ、神父とクリナさんと3人であの教会に暮らしてらっしゃるんですか。」

「そうなんです。私のお父さんは私が幼い頃に亡くなっちゃって、お母さんが私を1人で育てながら働いてたんですけどお母さんが病気になったのをきっかけにおじいちゃんの教会に一緒に住むことになったんです。今はお母さんの病気は治ったんですけどなんかそのままずるずると住んでるんですよね。」

「そうなんですか。」

「お母さんは飲食店のホールやってるんですけど、私はあまり接客って好きになれなくて。だからなかなかお金が貯まらないから早いところ仕事探したいんですけど・・・。」

この世界の仕事は男尊女卑ではないが向き不向きがはっきりしている。

飲食店のホールは女性ばかりで冒険者ギルドの受付だって女性率が高い。

それに対して鍛冶仕事や大工仕事は男性ばかりだ。

つまり力仕事は男、華やかな仕事は女、と決まっていると思われる。

なので職業選択は俺のいた世界より狭まっていて華やかな仕事以外を探すというのは結構難しいのではないか。


「接客以外となると・・・事務とかですかねえ。」

「そうなんです。事務なら私は読み書きも計算もできるからいいなとは思っているんですけど、経験者が優遇されるんです。しかも男女関係ないし年齢制限も結婚の有無も関係ないから競争率が高くって・・・。後は・・・使用人くらいしかなくて迷ってて。」

使用人か。

俺のいた世界には貴族がいなかったから使用人という仕事なんて考えもしなかったが、使用人ならホールより接客しなくていいし、いいのではないか?

「使用人は花嫁修業の仕事ともいわれていて、未婚の若い女性しかなれないんです。ちゃんとしたマナーとかも勉強できるし、・・・も、もしかしたら雇い主の貴族様に見初めてもらえるかもしれませんから。」

クラリスはそう言うとちょっとポッとした。


・・・ん?もしかして・・・。


「違ってたらすいませんが、もしかしてクラリスには見初めてもらいたい人がいるんですか?」

「えっ!?」

あっという間に顔が真っ赤になった。

これはビンゴか。

「ふふふ、想い人がいるなんて素敵じゃないですか。」

「やだ!お母さんにもバレてないのに・・・!」

クラリスは真っ赤の顔を両手で覆って慌てていた。

美少女なのでその仕草がとてもかわいらしい。


「ふふふ、どんな方か聞いてもいいですか?」

「うっ・・・あ、あの、おじいちゃんにもお母さんにも内緒にしてくれますか?」

「もちろんです。」

「あ、あの、去年、教会に寄付で来られた方で、爵位はわからないんですけどとてもきらびやかな服を着てらっしゃったので、多分高位の爵位の方だとは思うんです。長い銀髪に金の瞳のとても見目麗しい方で、一目で心を奪われてしまったんです。多分・・・40代後半とだいぶ年上なのですが。」

すごいな30歳差か・・・?

こんな美少女が惚れるオジサンなんてちょっと見てみたい気もする。

「おじいちゃんのお友達みたいなんですけど、なんか聞くのも恥ずかしくて・・・聞いちゃったら私をかわいがってくれているおじいちゃんなら気づかれるんじゃないかって、思って・・・。」

「話してみて大丈夫じゃないですかね?神父のことですから、応援してくれそうな気がしますが。」

あの神父ならクラリスを溺愛してるっぽいし。


「その貴族様のお名前はわかってるんですか?」

「あ、はい。クラウデン・バズテリア様というそうなんです。」


俺はその名前に思わず目を見開いた。

だが、すぐさまいつもの笑顔を張り付けた。

クラリスは恥ずかしがって俯いていたので俺が驚いていたのは気づいていないようだ。


・・・その名前には覚えがあった。

先日会った仮面の貴族に鑑定魔法をかけた中に、その名があったからだ。

・・・なにかに利用できるかもしれない。

その貴族も。

この娘も。



「・・・もしよろしかったら、その貴族様のこと、調べてみましょうか?」

えっ!?という顔をしてクラリスは俺を見てきた。

「クラウデン・バズテリア様の名前がわかっているのでしたらすぐに爵位くらいはわかるかもしれません。俺にも貴族様の知り合いがいますので、会ったときに聞いてみましょう。」

「え、よろしいのですか!?ご迷惑になりませんか?」

「大丈夫ですよ。聞くだけですし。ただ、その貴族様に会った時に聞くので、数日かかると思いますが・・・。」

「いえ、数日なんて大丈夫です。貴族様のことを聞けるならいつでも構いません。ありがとうございます!」

クラリスはとても輝いた笑顔で返事してきてくれた。

俺はニヤリと笑うのを我慢してにこりと笑った。




そう話しているうちに教会に着き、中に入ると神父が祭壇のところにいた。

クラリスは神父にただいまと言うと俺に一礼して住居スペースと思われる部屋へと去っていった。

「クラリスと一緒にいらっしゃるとは・・・クラリスになにもしてないでしょうな?」

ものすごい冷たい空気を出して俺を睨んできた。

・・・くくく、全然怖くないが、ビビるフリするか。

「だ、大丈夫ですよ神父。たまたま一緒になっただけでちょっと雑談してきたくらいです。」

俺が苦笑すると神父は冷たい空気は解いてくれたが本当か?という目で見てきた。


「ま、まあまあ、神父。それより俺を呼んだのはなんの用事ですか?」

「・・・ユウジンを呼んだのは、依頼をしたくてね。」

ヴェリゴはそう言うと、懺悔室に入るように言ってきた。

誰にも聞かれたくない依頼のようだ。

懺悔室に入ると小窓の向こうのヴェリゴの方から、小窓の隙間から1枚の紙を差し出してきた。


「ここに、ある女性の名前と特徴を書いてます。


・・・この女性を秘密裏に暗殺してください。」





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