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150、悪魔は壊す

それから色々と魔法を唱えてみたが、まったく魔法は使えないことがわかった。


いや、正確には一つ以外は使えないということがわかった。


それは・・・アイテム収納魔法だった。


なぜかはわからないが普通にものを出し入れできた。

もしかしたら収納の時に困るからとかもっともらしい理由があるのかもしれないが、とにかくアイテム収納魔法が使えるならそれを利用する他ない。


「・・・ふむ、しょうがないですね。」

なのでアイテムを利用した方法で魔道具を探すことにした。

やり方はいたってシンプルだ。

手近な魔道具と思われるものひとつをアイテムに入れて魔法を唱えてみる。

使えないなら、アイテムに入っているものは魔法を使えなくする魔道具ではないということだ。

だが、シンプルなだけに面倒臭い。

何回かやったところでクロ助があくびしだした。

まあ、それほどこの部屋には魔道具と思われるものがゴロゴロあったのだ。

もしかしたらここは魔道具の保管庫かコレクション室かもしれないな。

幸い、カーテンをして部屋が暗くなっているということはここの部屋への出入りは少ないようで、隠蔽魔法が解けた俺が見つかる可能性は低い。

俺は淡々とアイテムに入れては魔法を唱えてを繰り返した。


そうして20個ほど色んな道具を出し入れしたところで、俺の唱えた光魔法がポッとついた。

「!?やっと見つかりましたか・・・。」

俺のアイテムに入っているのは女神像と思われるもの片手で持てるほどの大きさの白い像だった。

どうやらこれが魔法を使えなくする魔道具か。

その魔道具をアイテムに入れた状態で、部屋の魔道具に次々と鑑定魔法をかけた。


「ふむふむなるほど・・・。」

部屋にあった魔道具のどれもが役に立ちそうなものばかりで、いつかのトリズデンの某領主が自慢気に見せびらかしていたジュラルミンケースが見た目のマジックバッグまであった。

こういったものはじいさんが旅に出るときに持っていきそうなんものだが・・・。

持っていってないということは、もしかしたらこれらはコレクションとして置いているということか?

だとしたらさっきからベタベタ触りまくってるのってコレクターからしたらまずいかもしれない。内密にしよう。



「・・・!?これだ!?」


俺は魔道具の中からやっと目的の魔道具を探しだした。


転移装置(テンイソウチ)(クニ)

本体のある国内のみどこへでも転移可能。

分身を持った状態だと国内のどこからでも本体に転移可能になる。


魔方陣の描かれた円形ラグの中央に白い杖のようなものが刺さっている。

白い杖の湾曲した先端には細い腕輪のようなものがいくつか引っ掛かっていた。

本体というのは恐らくこの杖のことで、細い腕輪のようなものが分身、ということのようだ。


ふむ・・・国内限定の転移装置か。

ということは、じいさんが1ヶ月でトリズデンの首都に来た謎はこれで解決した。

恐らくじいさんは、イルヴァルナスとトリズデンの国境ギリギリまで転移装置で移動してきたのだ。

そして国境を通過してトリズデンの首都に来たということだ。

国境から首都まで本来なら馬車で2週間で着くが、カサブラの町まで馬車できて、それから徒歩で首都に来たと考えると1ヶ月くらい。

そういえば初めて会ったときは馬車でなくて徒歩だったことを考えるとあながちではないだろうか?

となれば、イルヴァルナスに入った時にすぐに分身を使ってここに来られる可能性は高い。

そうなればとても面倒臭い。


・・・なぜだがすでにイルヴァルナスに入っていてもおかしくないほど日が過ぎているのに、いまだに国境に張った俺の罠魔法に反応がないし。

もちろんこの別荘にいる気配もない。


じいさんらの身になにかあったのだろうか・・・?




確かカサブラにはルナメイアがいるが・・・。

まさか、な。


・・・まあ、なるべく来ないことにはこしたことはないし、これは壊させてもらうか。



俺は腰の短杖を取り出すと魔法剣にして、白い杖を折るように切った。

白い杖はバキッと音をたてて折れて、途端に白い杖から感じていた魔力を感じなくなった。

よし、これで壊れたようだ。



目的を終えた俺はアイテムに入れていた女神像を元に戻して部屋から出た。

素早く隠蔽魔法を自分にかけて1階に降り、誰もいない空き部屋の窓から外に出て死角になるところで隠蔽魔法を解いて何食わぬ顔をして観光の続きを再開した。



さて、そうなんこれでしばらくじいさんらの心配はしなくていい。



これから悪魔教について色々と探るとするか。






*********




「ちょっと・・・!待ってくれよじいさん!?」



トリズデン王国のカサブラの町の近くの山奥。


マスティフは急いで歩いている祖父の背中にそう叫んだ。

「遅いのうマスティフ。はようせんと置いていくぞ?」

口調はのんびりながら歩くスピードはまったく遅くならない。

風のように木々の間をぬい大岩を飛び越える。


「だから待ってって!・・・なんでこんな山道行くんだよ!ちゃんと舗装された道あったじゃねえか!」

「あんな曲がりくねった道よりここを通った方が最短で頂上に行けるぞ?頂上の湧水を汲んで帰らんといかんじゃろう?」

だからといってむちゃくちゃだと、マスティフは大岩をよじ登りながらそう思った。

最短ルートで向かっているために崖なんていくつ登ったかわからない。

マリルクロウは持ち前の身体能力でそれらを難なく通過しているが、マスティフは体力と根性だけでくらいついているだけだ。

当然マスティフの体はボロボロで痣だらけであった。

「ルナメイア様が頂上の湧水を汲んできてくれたらユウジンの向かったところを教えてくれると言って下さったからこうして山奥まで来ておるのだろ?そのついでにマスティフの訓練にもなる。ほれ、はよう来んか。」

訓練、と言われたらマスティフは黙るしかなかった。


トリズデン王国の首都スクリュクスを出たマリルクロウとマスティフは数日かけてカサブラの町に着いた。

そしてすぐさまルナメイアに面会を求めたのだが、不自然なほどに面会はなかなか進まず「ルナメイア様の体調が優れず」「迎えの馬車が壊れて」などでやっとのことで会えたと思ったらルナメイアはとんでもないことを言ったのだ。

「すいませんが、体調が優れず・・・この町の近くの山奥の頂上の湧水を飲めば体調も落ち着いてユウジン様のことを話せるかもしれません。」

ということで、こうしてマリルクロウとマスティフは山奥の頂上を目指しているというわけだ。

明らかな時間稼ぎなのはさすがのマスティフでさえも気が付いた。

彼女に無理にでも問いただして聞けることもマリルクロウの英雄としての立場的にできたのだが、英雄はトリズデンの王族を脅したと変な噂にされても困るのでマリルクロウはさっさと受けてさっさと終わらせることにしたのだ。

だが、ただ山奥に行くのも勿体ないという考えから、マリルクロウはマスティフに訓練と称した過酷な山登りをさせているのだ。


「わしはうれしいんじゃぞ。訓練に後ろ向き気味じゃったおぬしが急に訓練をつけてくれなんて言ってくるなんてのう。・・・まあ、なんでそう言ってきたかは聞かんがのう。」

今までマスティフはマリルクロウの訓練に多少嫌々ながら従ってこなしていた。

だが、首都を出発した日にマスティフはマリルクロウに「訓練をつけてくれ」と言ったのだ。

なので「これも訓練」と言われたらマスティフは従わざるおえないのだ。


マスティフはこれまでより一層強くなりたいと思ったのだ。

あいつに追い付けなくても、ずっと後ろから見守れるほどは強くなりたい、と。


それを知ってか知らずかマリルクロウはマスティフの要望に理由も聞かずに了承すると、過酷な訓練をするようになったのだ。



「・・・くそっ!負けるか!」

マスティフは大岩を飛び降りて軽やかに移動するマリルクロウに追い付こうと走る。

その姿にマリルクロウは口元を緩める。


(わしの読みが外れていなければ、ユウジンはイルヴァルナスに向かったやもしれんな。しかし、イルヴァルナスのどこに向かったかはルナメイア様の話を聞かんとわからんじゃろう。そうでなくても、1度イルヴァルナスの別宅に帰るのもええかもしれん。コレクションにしておるが役に立つ魔道具があるからのう。)

マリルクロウはそう思うと、胸に忍ばせていた腕輪を取り出した。

(もしイルヴァルナスの首都じゃったらこれですぐ別宅に行けるんじゃが・・・そうは都合よくならんじゃろうのう。・・・ん?)

マリルクロウは腕輪が魔力を帯びていないことに気が付いた。


すぐさま鑑定魔法をかけると、『転送装置の腕輪(本体破損)』と出た。


それにはマリルクロウは目を見開いた。



「・・・まさかな。」




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