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148、悪魔は貴族の信者に会う

リズさんはギルドにさっさと退職願いを出してすぐに受理されたそうで、数日後には辞めていなくなっていた。


冒険者の間では「結婚して辞めたらしい」とか「実家に帰ったらしい」とか様々な憶測が出てリズさん目当ての冒険者は肩を落としていた。

どうやらリズさんのファンもそれなりにいたようで、しばらくはギルドがお通夜くらい暗かった。

俺としてはギルドが暗いなんてどうでもよかったがね。



それより、今日はまたヴェリゴに教会に呼び出されていた。

また信者に会うらしいが、今度は知らない信者と会うようだ。

なのでクロ助には教会に行く前に俺の影にダイブしといてもらった。

ヴェリゴから聞いたのだが、クロ助の「神の使い」は悪魔教信者にとってはあまりよく思わない者もいるそうだ。

幸運を呼ぶのは嬉しいがそれが敵対している神からのものなのが気に入らず、かといって逆の「悪魔の使い」は悪魔様からのものだが不幸になるのは嫌なんだと。

なんとも面倒臭いなとは思ったが、ここでクロ助が「神の使い」ということで変ないちゃもんをつけられたくなかったし、そうはいってもクロ助にかけている魔法を解いて「悪魔の使い」だとバラすのも面倒臭いのでクロ助には影に入ってもらったのだ。

クロ助はつまんなそうに入っていったので、後でいい刺身でもやろう。


「やあ、ユウジン。これから行くあるところで待ち合わせしていてね。わたしについてきてくれ。」

ヴェリゴは教会に来た俺を見つけるや否や、そうにこやかに言ってきた。

「あ、はい。待ち合わせですか・・・。どんな方なんですか?」

「我ら信者はたくさんいるが、その中には貴族様も何人もいてね。その中でも今日は3人が会ってくれるそうだ。君の話をしたら興味を持って下さったそうだよ。」

ほう、貴族か。

だから教会に集合ではなくこちらから出向くのか。

「俺の話、ですか?」

「そう。わたしも興味があるが、君はレガードとリズの話では特殊な武器を使って尚且つ不思議な魔法も使うのだろう?それを見たいと貴族様たちがおっしゃってね。」

恐らく俺の剣魔法と罠魔法のことか。

レガードの前で両方やったからそれが報告されたようだな。

まあ、信者のお偉方の興味を引かすためにわざと(・・・)レガードたちの前でやったのだから効果はあったようだ。



ヴェリゴについて首都の貴族の屋敷が立ち並ぶ一角にやってきた。

両サイドにある屋敷は思いっきり豪勢なものから質素なものまで色々あるが、その中の少し質素な屋敷に案内された。

玄関でメイドにヴェリゴがなにか言うと、すぐに執事がやって来て屋敷の中を案内してくれた。

屋敷は全体的にアンティーク調になっていて、高そうな調度品が並んでいた。

さすがに天井にシャンデリアはなかったが、そこかしこに淡い光のランプがあってめちゃくちゃ雰囲気があった。

執事は応接室に案内してくれて、執事がノックして「失礼します」というと中から「おう。」という声が聞こえてきた。

ドアを開けて先にヴェリゴが部屋に入るのにその後をついて入ると、明るい声がした。


「やあ、ヴェリゴ。久しぶりだな!」

応接室は四角い大きなテーブルを中心にコの字型にソファがあって、3人の人物が座っていた。

上座となる奥の位置に黒い仮面をつけた豪華な貴族服を着た男が座っていて、左に青い仮面をつけて控えめな貴族服を着た男がいて、右に緑の仮面をつけて控えめな貴族服を着た男がいた。

仮面は舞踏会とかで着けるような目の周りだけ覆うもので、それに白い布のようなものがついていて頭に被ると髪すら見えなくなるものだ。

多分それで頭を隠すことで誰か特定されないようにしているんだろう。

だが、かろうじて見えている顔の下半分で若いかどうかくらいならわかる。

黒の貴族は中年くらいで、青と緑の貴族は俺と変わらないくらい若い。

ヴェリゴに明るく声をかけてきたのは黒の貴族だ。


「お久しぶりです皆様。お元気そうで嬉しく思います。」

ヴェリゴは一礼をしてそうにこやかに言った。

そして俺を紹介してくれた。

「先日お話させていただきました彼が新しく信者となりました者でございす。」

俺もヴェリゴに習って一礼した。

「はじめまして、冒険者のユウジンです。」

「ふむ・・・、本当にこの者が?失礼だが、とても我らの信者とは思えぬし、強いという風には見えないが・・・。」

やっぱりこの顔では信じてもらえないか。

黒の貴族は口元を緩ませているが、青と緑の貴族は2人とも怪しいという目を思いっきり向けてきていた。


「自分で強いというのはおこがましいですが、必ず皆様のお役に立てると思います。」

とりあえずそう言ったが青と緑の貴族はまだ怪しんでいた。

まあ、本来ならそれが正解の反応だ。

こんな見た目で得体の知れない奴がきたら誰だって警戒する。

・・・口元を緩ませている黒の貴族の方がどうかしているのだ。

なにも考えてないのか?

いや、服装で高い爵位だろうからちゃんとした教育を受けてきたはずだからバカではないだろうし、落ち着いた雰囲気からそれはないか。

むしろ・・・なにが来ても驚かないという自信の現れってところか。


貴族3人が名乗ることはなかった。

そこまで特定を避けているということか。

・・・まあ、鑑定魔法でわかっているんだけどな。

ご丁寧に3人とも隠蔽魔法でステータスを隠蔽していた。

そこまで特定されないようにしていたが、まさか俺が最上級鑑定魔法で見えるなんて思ってないだろうな。


「早速だが、不思議な魔法や武器を使っているそうだな?それを見せてくれるか?」

黒の貴族に促され、俺はニコニコしながら解説することにした。

「不思議と言っていただいて恐縮ですが、俺が使っていますのは罠魔法と剣魔法です。それを無詠唱でやっているだけです。」

黒の貴族と俺の横にいたヴェリゴがほう、と感心した声を出したが、青と緑の貴族2人はわからないような反応をした。

「まずは剣魔法ですが。」

俺は腰にさしていた短杖1本を手に取った。

「魔力を刃にしてこの短杖を剣として使ってます。これを2つ両手に持って双剣にしたり、込める魔力によってナイフから大剣まで刃を伸縮できますから魔物によって刃を変えて使っています。」

そう言って実際に刃を出して、魔力を込めて刃を伸縮させたりしてみせた。

黒の貴族はほうほうと面白そうに見てきて、ヴェリゴと青と緑の貴族2人は驚いたように見ている。


「この刃は込める魔力によって切れ味も変わります。」

そう言うと黒の貴族は応接室の隅に置かれていた高そうな壺を切ってみろと言ってきたので、切ったら黒の貴族は切れ味に喜んでいた。


「それから罠魔法ですが・・・。」

俺はさっさと短杖をしまって罠魔法について話した。

青と緑の貴族2人はやはり罠魔法についてもわからなかったようで、俺の説明に驚いていた。

「罠魔法・・・聞いたことはあったがすごいな。だが、確か罠魔法というのは魔力がとても使うと聞いたことがあるのだが?」

「俺は罠魔法に適正があるのでそれほど魔力はかかりません。」

「ふむ、それは面白い。・・・それで無詠唱でやられたら気付く訳がないか。」

「そうです。だからいつもは無詠唱で使ってます。」

「恐ろしいな。まさか今は張ってはいないだろうな?」

冗談混じりに言ってきた青の貴族に俺は微笑んだ。

「ふふふ。俺は認識しているところでしたらどこでも張れます。皆様の首に爆発魔法を張ることも、この屋敷を地割れに飲み込むことも、この首都を洪水で沈めることも今すぐできます。実行しろと言っていただけたら今すぐ発動できますよ?」

俺の言葉に青と緑の貴族は顔を真っ青にした。

・・・黒の貴族とヴェリゴは少し驚いただけだった。

さすが、イカれてる。


「申し訳ありません。ちょっと冗談が過ぎました。さすがにそんなことはできません。皆様は悪魔教大事な方々ですし、首都を洪水にするほどそんな魔力ありませんし。」

だが屋敷を地割れに飲み込むことはできますけどね、という無言のアピールはしといた。

それで俺は十分使える(・・・)と思ってくれたと思う。


「ふははは!なんとも面白いなユウジン!」

黒の貴族はわかってくれたようで大きく笑ってそう言った。

「ひとつ聞きたいが・・・例えば、村を爆破しろと言われたら可能か?」

「・・・可能です。・・・が、できればやりたくはありません。」

黒の貴族はピクリと反応した。

「ほう?なぜだ?」

「俺は絶望した苦しむ顔を見たいのです。村を爆破したら全員の苦しむ顔を見ることができないではないですか?そんなもったいないことはしたくありません。」

青と緑の貴族は少し引いていたが、黒の貴族とヴェリゴは俺の言葉を聞いて感心した。

「ははは!素晴らしい!気に入った。ユウジンは本当に、悪魔教にぴったりの人材だ。お前が入信してよかった。これからのユウジンの活躍に期待するぞ。」

「ありがとうございます。」

俺はにこやかにお礼を言って一礼した。




俺はヴェリゴと屋敷を出て、貴族街を出てすぐヴェリゴと別れた。

「すいませんクロ助。」

「フミャー」

路地裏に移動してクロ助に出てくるように言うと、ちょっとふて腐れたクロ助が出て来て抱き上げるとすぐに肩に乗った。

不機嫌に尻尾で背中をテシテシされるので、これは確実にいい刺身を捧げなければと思った。


「許して下さいクロ助。おかげでファーストに会えたんですから。」

「ミャー?」

え、いたの?という感じでクロ助は鳴いた。

「ええ、鑑定魔法かけましたから。あの黒の貴族がファーストでしたよ。」



さて、これから・・・どうしようかな?




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