表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
148/350

146、悪魔は勧誘される

俺はがらの悪い男たちに囲まれていたふむ、と思案した。


「アニキ!落ち着いてくだせえ!」

子分がなだめようと声をかける。

せっかく挑発したんだから落ち着かれたら面白くない。

「こうやって襲ったところで警備兵に捕まるのがオチでしょうからやめた方がいいと思いますよ?」

「はっ!俺はそんなアホじゃねえんでな。」

「え、アホじゃないんですか?てっきり見た目からそうかと思ってました。ふふふっ」

髭面男はカチンときたみたいでますます顔を赤らめて睨んできた。


「くそっ!アニキを馬鹿にしやがって!」

周囲の男たちもそれぞれ武器を持ち出した。

「へへっ!ビビったか?すぐには殺さずなぶり殺してやるよ!」



「あ、いいですねソレ。すぐには殺さずなぶり殺すって。こんな感じでしょうか?」




ザンッッ



俺の真後ろで今まさに棍棒を振り上げていた男の腕が切り落とされた。

「「「え?」」」

切り落とされた本人を含む男たちは間抜けな声をあげ、それから切り落とされた腕がドサッと落ちた。

「ぎゃああぁぁああ!!」

血がどばっと出て、男はもがき苦しみだした。

「お、おい!?大丈――――」




ザンッッ



駆け寄ろうとした俺の左側にいた男の足が太ももから切り落とされた。

「うがああぁぁっ!?」

「お、おい!?どうなってんだ!?」

足を切られた男は足から血を噴き出しながら地面を転がっている。

他の仲間は駆け寄ったり呆然としている。

アニキといわれた髭面男は顔色を変えて呆然と傷付いた仲間たちを見ていた。


「うわっ、汚い血がついてしまいました。」


俺は左手に持った血のついた魔法剣を振った。

そう。俺が彼らの腕や足を切り落としたのだ。

右手はリズさんを支えているから空いてないので、魔力とイメージで刃を伸ばして左の腕を振り回すだけで切り落としたのだ。

後ろの仲間の位置や動作などはサーチで把握していた。




「おい!どうした!?なにがあった!?」


と、複数の警備兵がドタドタとやって来た。

俺は素早く剣魔法を解くと短杖を腰にさした。

そしてあからさまに困った演技をする。


「すいません!助けてください!なんか揉めてるみたいでこの人が突然この人たちに切りかかって!」

「「は!?」」

俺が髭面男を指してそう言うと、髭面男たちはぽかんとして俺を見てきた。


「なんだと!?こんな街中で刃物を振り回すとは貴様らどういうことだ!?」

運悪く(・・・)剣を持っていた髭面男はあっという間に警備兵に取り押さえられた。

「ち、違う!俺たちは・・・その・・・!」

髭面男はまさか「有り金と女を置いていけと脅していた」とは言えず、オロオロしているので余計に挙動不審になった。

「違うんです!アニキはなにもやってません!あいつが・・・あいつが!」

仲間は取り押さえる警備兵に必死に俺がやったと言うが、警備兵は「なにを言ってんだコイツ」みたいな顔をしている。

それはそうだ。

俺は今、女性を支えていて尚且つ刃物なんて持ってない。

肩に猫まで乗せていて攻撃できるとは誰も思わない。

まあ、後はこの優顔が合間っているんだろう。


結局警備兵に全員まとめて連れていかれて、腕と足をそれぞれ切り落とされた男2人は治療してもらうようで警備兵が手配した担架でどっかに行ってしまった。

俺も少し事情を聞かれて、適当に「有り金と女を置いていけと脅していたがいきなり髭面男が仲間に切りつけた」と言っといた。

後で髭面男の仕業ではないとわかったしても、脅していたのは事実なのでどっちにしても彼らは犯罪者とされるだろう。

まあ、どうでもいいけど。


結局、リズさんは家に帰りついてもずっとフラフラ酔っていて、家の鍵を開けて彼女が中に入ったところでドアを外から閉めて鍵をかけるように言って宿屋に帰った。





ある部屋に、男女2人の声が響く。


「・・・やあ、どうだった?彼は。」

「・・・申し分ありません。」

「そうか。レガードから聞いた時には信じられなかったが・・・。まず強さはどうだった?」

「恐ろしく・・・強いです。ならず者たちの腕や足を見えないほどのスピードで切り落としていました。」

「彼は魔法使いのはずだが?」

「恐らくは剣も強いのでしょう。見たこともないおかしな剣を使っていました。」

「ほう?君は仕事柄色んな人と会うのに、見たこともない剣か?」

「はい。短杖に魔力の刃でできた剣が生えている感じのものを。」

「短杖に・・・魔力の刃・・・?ふむ、もしや剣魔法といわれるものか?噂には聞いたことがある魔法だが・・・。」

「魔法を使うところも見たかったのですが、予想外に警備兵が来るのが早くて見れませんでした。」

「わかった。・・・で、性格はどうだった?」

「本当に・・・私は震えました。」

「というと?」

「彼の容姿からは想像もできない残虐性に感動してしまい震えてしまいした。本当に、なんでもないように柔らかい笑顔をしたまま、彼は腕や足を切り落としたのです。・・・本当に素晴らしかったです。」

「ほう・・・。君がそんなに惚けるなんて珍しい。」

「彼の性格や残虐性を調べるためにならず者を雇った甲斐がありました。・・・私が酔ったフリをして彼に抱きつき、ある程度体の自由を奪ってからならず者が手筈通りに彼に絡んでくれて、どう出るか試してみて正解でした。警備兵が来なかったら恐らく彼はならず者たちをゆっくりとなぶり殺していたでしょう。なんと・・・素晴らしい。」

「君がそこまで言うなら大丈夫だろう。我が悪魔教に引き入れようではないか。」

「ええ!ぜひそうしてください!彼ならきっと、ファースト様やサード様の助けとなるでしょう!」



「ご苦労様でした。また何かありましたらお願いしますね、リズ。」

「はい、神父様。」







リズさんと飲んでから数日後、俺はまた寄付のために協会に来ていた。



「こちらをお願いします。」

そう言ってトレイに10万インをだした。

「いつもありがとうございます。」

神父ヴェリゴはにこやかな笑みを浮かべてそう言ってきた。


「冒険者のお仕事は順調ですかな?」

「いいえ。それが・・・オークばかりを倒していたら、剥ぎ取り小屋の職員に怒られまして。しばらく買い取ってくれなくなりました。」

今だに剥ぎ取り小屋には立ち入り禁止と言われている。

もう数日で倉庫が空くらしいのでそれまで暇で、別の依頼をしたり街をブラブラしている状態だ。

「ふふふっ、それだけたくさんのオークを倒して下さっているということですね。オークは女性を拐う卑しい魔物ですから、倒していただけると娘と孫娘を持つ身としましては安心できます。」

「そう言っていただけると嬉しいです。」

会話もそこそこに、教会を出ようかなと思っているとヴェリゴはなにやら言いたいことがあるような顔で見つめてきた。


「うん?・・・神父、どうされました?」

「いえいえ・・・。実はこの間の懺悔室での話に関することで、ちょっとお話ししたいことがありましてね。」


・・・ついに来た!と俺は心の中でニヤリと笑った。


「・・・それはなんでしょうか?」

なにも知らないフリをして、首を傾げてみる。

「ちょっとここでは・・・。懺悔室でよろしいですかな?」

「・・・わかりました。」


俺は懺悔室に入って座り、しばらくすると小窓の向こうにヴェリゴが座った音がした。


ああ、くそっ。

懺悔室に入ってから、ニヤニヤが止まらない。

膝の上のクロ助はちょっと呆れた目で見てくる。


「ユウジン、・・・君のその・・・ここで前に言っていた人を殺したいという思いですがね。どうにかできるかもしれない。」

「え、それは・・・どういったことでしょう?」



「・・・君、悪魔教というのは知っているかな?」




俺は狂気の笑顔をした。


ここが誰にも見えない懺悔室でよかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ