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145、悪魔は襲われる

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。

リズさんオススメの店というのは大衆居酒屋に近いところで、俺たちは2人用の半個室に案内された。


メニューを見ると、リズさんオススメのパエリアやパスタの他に居酒屋の定番の唐揚げや枝豆、冷奴もあった。

こっちの世界でもビールに枝豆は付きものらしい。

個人的にはビールには餃子なんだが、さすがに女性と来てそれを頼むアホではないので、リズさんオススメのパエリアとサラダなど女性をターゲットにしたものを頼んだ。

お酒は無難にレモンサワーだ。

因みにクロ助には刺身を頼んだ。


店ではずっと来た料理の感想や世間話をしたり酒を飲んだりした。


「ユウジンさん、この街にも慣れました?」

「まだ2週間ぐらいしか経ってないですからねえ。あまり街の中を色々と見て回ったりもできてないんですよ。」

「えっ!色々と観光名所があって面白いところたくさんあるんですよ。」

へえ、観光名所ねえ。

「そんなのあるんですか?トリズデン王国にいた時はそんなのなかったので気にしてなかったのですが。」

「宗教のこともあって、首都は訪れる人も多いんです。だから観光にも力を注いでて。今、オススメなのは首都の南にある湖とその湖畔に建つ物見塔ですかね。」

「湖に物見塔?湖はわかりますが、なぜ物見塔が建っているんです?」

「色々と伝説があるんですけど、ある高名な魔法使いが建てたとかドラゴンが造ったとか、実際のところは誰もわからないんです。数百年前からあって、ある決まった日と日時にその塔の天辺から湖を覗いたら銀色に輝いて、輝いている間に願い事をいうと叶うとか言われてるんです。」

ドラゴンがどうやって造るんだ?

1つ1つレンガ積み上げんのか?

それになんで銀色に輝いている間に願い事をいうと叶うんだ?

流れ星的なやつだろうか?

「そ、それ本当ですか?」

「ふふっ、ユウジンさん信じてないですね?まあ、私も信じてないんですけどね。多分、観光客を呼び込みたいからそれっぽく言ってるだけだと思うんですよね。」

まあ、確かに俺のいた世界でもそれっぽいキャッチフレーズで有名になった観光地なんていくつもあったしな。

こんなファンタジーの世界でもその手法が取られてたとは、案外使える技なんだろうか。


「あとは・・・、あ!"黒の一族"の別荘とかもありますよ?」


俺は思わず目を見開いた。

「・・・え!?く、"黒の一族"!?」

"黒の一族"は御存じ、元当主のじいさんに孫のマスティフがいる超有名冒険者一族の通称だ。

こんなところでその名を聞くことになるなんてな・・・。

すぐに平静を装ったので、リズさんはそこまで俺が反応したように見えなかったようだ。

「そうそう。あの有名な冒険者一族様の別荘が首都の近くにあるの。何年かマリルクロウ様と当主様が住んでらっしゃったんだけど、半年くらい前かな?急にマリルクロウ様が旅に出られたそうで、今は当主様も西大陸に行って一族の方たちはいないみたいだけど。でも別荘のお庭は昼間だけ一般に解放されてて、とても人気の観光地なんですよ。」

じいさんが半年前に旅に出た、ということは恐らくトリズデンに向かった時期だろう。

そういえば・・・マスティフが手紙を出して1ヶ月くらいでトリズデンの首都に来たな。

この近くの別荘から来たというなら・・・いや、だとしてもここからトリズデンの首都までは馬車で約2ヶ月半かかるはず。1ヶ月は早くないか?


もしかして・・・あのじいさんならジョギング感覚で走ってきたとか?

だとしたら、それくらいで来そうな気がするが・・・それはいくらなんでもない・・・か?

・・・俺の知らない移動手段の可能性も考えといた方がいいか。

それで追ってこられたらコツコツ真面目にオークを倒しまくってた苦労(・・)が水の泡になってしまうかもしれない。


「・・・別荘というのは気になりますね。庭はとてもきれいでしょうねえ。」

俺は思案していたが、悟られないようになるべく呑気に聞こえるように言った。



それからは追加で色々と頼んで食べたり飲んだりして、リズさんの愚痴を聞いたりと楽しいひとときを過ごした。

リズさんは食べ物を口に入れる度にコロコロと表情を変えて、職員の仕事の愚痴を言ってはお酒をがぶ飲みしていた。

「うふふふ~・・・駄目だわ。飲みすぎちゃったわあ~。」

リズさんの目は明らかに座っていて顔は真っ赤だ。

口調もだいぶ砕けているし、それに頭がフラフラしている。

本当に、誰が見ても飲み過ぎだ。

「リズさん、もうここらでお酒はやめましょう。料理も食べ終わったところですし、出ますか?」

「う~・・・ふふっ、出る~。」

このままでは意識が混濁する可能性があるな。

それまでには家に送り届けないと。

俺はさっさと会計をすませて、店を出ようとフラフラ歩きだしたリズさんをさりげなく支えた。

セクハラにならないように二の腕を掴んだ程度だが、リズさんは特になにも言わないしむしろ気づいてないようだ。


「リズさん大丈夫ですか?」

「だいじょーぶー!ふふふっ」

「大丈夫じゃないですね。・・・せめて家に着くまでは頑張って下さい。家はどこですか?」

リズさんはフラフラしながらも家の場所を教えてくれて、家の屋根の色まで教えてくれた。

・・・サーチで探してみたらちょっと歩かないといけない距離だな。

そこまでリズさんがもつのか微妙だ。


リズさんのふらつきが心配になって、躊躇しつつも肩を抱くように手を回して支える。

するとリズさんは何を思ったか、俺に抱きついてきた。

「ふふふっ、ユウジンさん暖か~い!」

リズさんは俺より身長が低くて俺の肩に頭をもたれる感じで背中に手を回された。

美女にそんなことをされてしまうと、さすがの俺もドキドキしてしまう。

「うふふふっ、ふふふ~。」

「ちょ、リズさん、離して下さい。リズさん?」

「ふふふ~」

「駄目だ。酔いがひどい。」

このまま家に送っていくことになるのか。

くそっ、女子のいい匂いと柔らかい感触が・・・。

俺はグッとこらえて支えて歩くことに集中する。

なんかさっきからクロ助がものすごい鋭い目でリズさんを見ている。

と、クロ助がリズさんの手を引っ掻いた。


「きゃっ!痛っ!」

思わずリズさんは手を離した。

「だ、大丈夫ですか?ヒールします。」

俺は慌ててリズさんの手にヒールをかけた。

「どうしたんだクロ助?怒るなんて珍しい・・・。」

それどころか怒ったことなんてなかったし、誰にでも懐いていたはずだが。

クロ助は肩の上でぷいっと顔を背けていた。


リズさんは痛がってはいたが酔いは覚めないものの、抱きつくことはなく手をだらりと下げてフラフラ歩いていた。

しばらく歩いたので、リズさんの家まであとちょっとのところまでこれた。




「・・・うひひひ、よう兄ちゃん。いい女連れてるねえ。」

いかにもがらの悪い髭面男が病みに紛れるように俺たちの行く手を阻んだ。

立ち止まると、左右や後ろから仲間と思われるボロい鎧を来た男たちが現れていつの間にか囲まれていた。

・・・んまあ、いつの間にかではないけど。

ずっとサーチで待ち伏せしてたの見えていたしな。

「おとなしく有り金と女寄越しな。そしたら悪いようにはしないぜえ?」

正面の髭面男がニヤニヤしながらそう言ってきた。

これはやっぱり俺の顔を見て勝てそうってことで襲ってきたのかなあ?

「うーん、すいません。有り金使っちゃってないですし、この方はお世話になってる方なんで無理なんですよねえ。」

俺のむちゃくちゃなオーク討伐依頼もちゃんと処理してくれる有能な子だと思うんだよな。

「あ?ごちゃごちゃうるせえな!アニキが寄越せっつってんだろ!?」

左の仲間がめちゃくちゃメンチきってきた。

なんか一気に地元でヤンキーに絡まれた感じになってきた。

俺はそれでもなんでもないようにニコニコしながら対応した。


「すいません。どこのアニキさんか知らないのでできませんねえ。なにか伝説を作られた方ですか?ドラゴンとか倒された方ですか?まさかその出で立ちで国王でもないですよねえ?」

「!?ってめえ、馬鹿にしてんのか!?」

アニキといわれた髭面男は顔を赤らめて腰にさしていた剣を手にとってこちらに構えてきた。


さーて、挑発に乗ってくれたのはいいけど、取り囲まれているしこっちはリズさんがいるから戦いにくいし。

どうしようかな・・・?




クロ助が怒ったのは・・・聡い方ならわかったと思います。

クロ助は女の子でユウジンが大好きなのです。

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