表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
144/350

142、悪魔は余裕

「すいません、遅れてしまいました。」



俺は呑気に森の奥から出てきた。

森の奥、といってもオークキングが出てきたところからではなく、左奥からだ。

「拐われた女性たちを助けて、小屋を燃やしてたら遅れてしまいました。・・・おや、皆さん怪我してるじゃないですか。」

そんなに遅れたつもりはないけど、皆怪我してるなあ。

まあ、ジェネラルが女性に手を出すまでのんびり眺めてたから思ってたより遅れたけど。


俺はサーチでオークキングたちが森の奥に隠れてジェネラル1体が長に成りすましているのもわかっていたし、ジェネラル1体が小屋に隠れていたのもわかっていたので、盗賊たち4人の後を隠蔽魔法でつけていた。

盗賊たちがジェネラルに勝てるとは思えなかったので、女性4人だけでなく冒険者の女性2人も捕まって乱暴される可能性があると思ったからだ。

でも思ったより女性たちの絶望の顔が素晴らしくて様子を見てしまったから盗賊2人は死んでしまったんだが。


ジェネラルは俺の魔法剣で普通に切れたので腕を切り落とした後に連撃したら呆気なくバラバラになった。

ハイオークより強いと聞いていたのに、そこまでではなかったのでちょっと期待はずれだと正直思った。

それからはジェネラルの死体をアイテムに入れて女性たちにヒールを一応かけた。

女性たちは助かったとわかったようだが、怖い思いをした直後で怯えていたのでシャドウダイブで俺の影に隠れていたクロ助を出して気持ちを癒してみた。

鳴いて女性たちの手にスリスリするクロ助に、冒険者の女性2人はすぐに落ち着いてくれて、拐われた女性4人に話しかけて励まし女性たちは小屋を出て村の左奥から人間の村に向かってもらうようにした。

サーチしたら森に魔物はそこまでいなかったし、冒険者の女性2人が女性たちを守るから任せて大丈夫だとは思ったが、一応クロ助も一緒に連れていかせた。

冒険者の女性2人よりレベルが高く強いクロ助がいれば大丈夫だろう。

クロ助は未だに1匹で戦ったことはないが・・・まあ、サーチで人間の村まで行けるかそれとなく見とくか。


女性たちが森の左奥に消えて、女性たちを助けた合図に残っていた小屋3つを燃やして、さあレガードらのところへ行こうかなと思っていたらオークキングが奥から出てきたのが見えたというわけだ。



レガードを始めレオら冒険者にオークたちまで、俺の呑気な登場に唖然としていた。

だが、オークらは一斉に雄叫びをあげた。

「「「ブオオオォォォォ!!」」」

皆はどうやらその雄叫びにガタガタと震えていたが、俺にはただの雄叫びにしか聞こえない。

「あー、はいはい。静かにしてくださいね。」

俺は適当やそう言ってスタスタと囲まれているレガードらに近付いた。


「大丈夫ですか?うわっ、結構ざっくり噛まれてますね。レオたちも細かい怪我が目立ちますねえ。」

「お、おい・・・!おまっ、お前!?」

「殺されたのは・・・5人ですか。死体はどうします?埋めます?」

「それどこじゃねえだろ!?今の状況わかんねえのかよ!?」

皆の怪我の状態をざっと見たり、死体を見回していたらレガードが怒鳴ってきた。

「ブオオォォォ!」

「わかってますよ。だから聞いてるんじゃないですか?」

「ブオオォォォ!」

「周り見ろよ!キングにマジシャンまでいんだぞ!?」

「ええ、いますね。」

「ブオオォォォ!!」



「ちょっとうるさすぎですね。静かにしてくださいって言ったでしょう?」


ジャラジャラジャラ・・・!


オークたちの足元から突如、黒い鎖が飛び出してきてオークたちの体にがんじがらめに巻き付いた。

鎖はオークたちの口元にも巻き付きオークたちは苦し気にもがき暴れるが、鎖はびくともせず、地面と繋がっている。

もちろん、これは俺の罠魔法でオークたちの足元に拘束魔法を張ったのを発動させたのだ。

張るタイミングなんて認識していたらいつでも張れるのだからいくらでもあった。

「なっ!?なんだ!?」

冒険者たちは突然オークたちが拘束されたのを見て唖然としていた。

レオは信じられないという顔で俺を見てきた。

「まさか・・・!ユウジン、お前がやったのか!?」

俺は当たり前のようにニコリと笑った。

「ええ。だってうるさかったでしょう?」

冒険者たちは驚いて俺を見てきていた。


「さて、今のうちに。」

俺は呪文を唱えた。


『我が前の傷つきし者たちに癒しの光を、ハイヒール×6』


俺が回復魔法を唱えると、冒険者6人が光に包まれレガードの足やレオやイザークらの細かな傷もあっという間に治った。

冒険者たちは信じられず、自らの体を見回している。

「傷などは回復しましたけど、しんどいでしょうし雄叫びで満足に動けないでしょう?ちょっと休んでて下さい。すぐすみますんで。」

俺はニコニコ笑ったそういうと、レガードやレオが声をあげた。

「ちょっと待て!!お前みてえなのがオークキングが敵うわけがねえ!よええくせに偉そうに言うな!」

「ユウジン!ランクが低いんだろう!?無理するな!死ぬぞ!?」

レガードは自らが誰よりも強いと思っているから俺の言っているのが信じられないという感じで言ってきて、レオは俺を心配して言ってきているようだ。

うーん、ポリポリ。

やっぱこの顔が弱く見えるからかなあ?


「まあ、大丈夫ですって。見ててください。」

俺はオークらに視線を向けた。


「まずは・・・ハイオークと戦うなんて時間の無駄ですから省きましょうか。」


ドオオオオォォォンッ!!


鎖でがんじがらめになっていたハイオーク5体の頭が同時に爆発した。

罠魔法でハイオークの頭に爆発魔法を張っていたのを発動させたのだ。

ハイオークらの拘束魔法を解くと、ハイオークらの体は力なくバタバタと倒れた。

「ジェネラルは大したことなかったですし、マジシャンもそのぶんじゃあ、大したことないでしょうねえ。さようなら。」


ドオオオオォォォンッ!!


マジシャンの頭も爆発した。

「オークキングは・・・戦いましょうか。いい運動になるかもしれませんしねえ。」

俺はオークキングの拘束魔法を解いた。


「ブオオォォォオオォォッ!!」


オークキングは怒りで狂ったように吠えてきたが、まったく気になることもなく腰の短杖2本を手に取った。

剣魔法で短杖を魔法剣にする。

今回は上から刃を出す、片手剣の双剣スタイルだ。

動き回る運動を兼ねてるから、魔法は使わないことにしよう。

一応これでも肩書きは魔法使いだが、もう魔法使いなんだかわからないな。


俺は身を低くして駆け出し、オークキングに近づいたがオークキングはそれに合わすように斧を振り上げて俺の頭めがけて下ろしてきた。

それをわずかな動きで避けて腕を切りつける。

俺のたっぷりの魔力でてきた刃はいとも簡単にオークキングの太い腕を半分すっぱりと切った。

その流れのまま、オークキングの太ももを鎧ごと刺し切り裂いた。


「ブオオォォォ!?」

痛みに吠えながらもオークキングは斧を振り回した。

それを避けながら少し力を入れて足首を狙って切り裂いた。

ズバンッという音がして足首を切り落とした。

「ブオォォオオォォッ!?」

それでも少しよろけただけで、斧を振り回すのは止めない。

その姿は気迫に満ちている。

さすが王。


だが、少しよろけたのが所詮オークというところか。

俺はすかさずもう片方の足首を切り落とした。

「オオオオォォォォ!?オオォォォッ!!」

ドシンッと背中から倒れたが、オークキングは諦めずに起き上がろうと体を起こそうと腕を地面につけた。

ズバンッと音をさせて、腕を切り落とす。もう片方も続けて。

「オオオオォォォォッ!!」

それでも暴れるオークキングに俺は乗って、短杖の下から刃が出るようにする。

そして2本を振り上げる。


「はい、さようなら。」

ブシャアアァッ


心臓に2本突き立てると勢いよく血が吹き出した。

ああ・・・、しまった。

『不滅の外套』着てない。

服が汚れるなあ・・・。

そう思いながらも突き立てた魔法剣を離さず、しばらくそのままでいるとオークキングは動かなくなった。


魔法剣をさっさと抜いて短杖に戻し、腰にさしながらオークキングから下りると、冒険者たちが俺をぽかんとした表情で見ていた。

うーん、そんなに見られるの好きではないんだけどなあ。


俺はニコリと笑った。

「すぐすむって言ったでしょう?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ