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13、悪魔は教わる

朝。



ビリッ



「ふぉっ・・・!」


俺は軽い衝撃で目を覚ました。


実は寝る前に枕に罠魔法で、朝起きる時間に微弱な電流が流れるように雷魔法をリンクして罠をはっていたのだ。

「う~ん、もうちょっと微弱な方がよかったか。いたた・・・。」


まあ、ぶっちゃけこうやって目覚ましがわりになるかなと雷魔法を取得したのだが。

これから野宿することもあるだろうから、朝起きられるようになったら旅に役立つはず・・・と思ってるんだけどなあ。


俺はさっさと食堂で朝食をすませ、部屋に戻って荷物をまとめ、宿屋を出ようと出入り口に行くと、ララが待ち構えていた。

ララはとても寂しそうな顔をしていた。

「やあ、ララ。お見送りしに来てくれたんですか?」

「うん。ユウジン、またうちに泊まりに来てね?」

「ええ、ここは食事も美味しいですし、清潔で居心地いいので機会があればまたお世話になろうと思っています。」

ララはニヘラと笑って握手して別れた。

ララは「また来てね~!絶対よ!」と手を振ってくれた。


毎日、今日は何が出るのかと楽しみにしていたし、ティーラさんもララもいい親子だったし。

また来たいなあ。




俺が待ち合わせのギルド前に行くと、すでに"金の栄光"の4人が立っていた。

「おはようございます。お待たせしました。」

俺がそう声をかけると、4人はそれぞれ挨拶してくれた。

4人の足元には大きな荷物がいくつもあった。

「これそれぞれ皆の着替えや私物が入ってるんだ。これ頼めるか?」

アルトクスがちょっと申し訳なさそうに言ってきたが、全くもって問題ない。

俺は笑顔で「大丈夫ですよ」と答えるとアイテムウインドウを出して次々と荷物を入れていった。

アイテム一覧にはちゃんと「アルトクス着替え」とか「リリナ私物」と分かりやすく表示が出て、俺がそれに感心していると皆は俺がアイテムウインドウに荷物を次々入れているのに感心していた。


「アイテム収納魔法はまだ大丈夫か?後どれくらい入りそうだ?」

「えーと、今の荷物を後6倍にしても大丈夫なくらい入りますよ。」

「ねぇ!だったら食料もたくさん持っていっても大丈夫ね!」

ウィズリーはキャッキャと機嫌良く声を弾ませた。


俺が料理の出来立てはアイテムに入れるとずっと出来立てのままで保存されると説明すると、それからは持ち帰りの料理や露店で人気の串物などを次々と買って入れていくことになり、ある程度買っては物陰でアイテムに入れてを繰り返すこととなった。

なぜ物陰で入れるかは、俺がアイテム収納魔法持ちだとバレるのが面倒と思ったからだ。

皆もそこは理解してくれて体で見えないようにもしてくれた。

因みに食費は全部"金の栄光"もちだ。

それ以外の自分の分は自己負担だそうだ。


そして食料をたんまり入れてからは、野宿になるからと野宿に必要なものを買いに行くこととなり、俺は皆に教わりながら買ってはアイテムに入れていった。

「まだ余裕あるならテント買わない?」

ウィズリーがテント用の布をチラチラ見ながら皆に聞いていた。

「テントって、皆さん持ってないんですか?」

ラノベでは野宿でテントは当たり前だったからてっきりテント持ってると思っていたのだが。

「基本的に野宿のときは焚き火の周りで毛布にくるまって寝るのが普通ね。テントはいちいち設営しなくちゃいけないし、荷物になるから。」

「へぇ、なるほど。」

俺は今後のことも考えて自分用に安物のテントを買って、皆は男女で1つずつ買っていた。


それから武器屋に行ってヴァンパイア用に銀の杭をいくつか買った。

こちらの世界のヴァンパイアも弱点は同じで銀製品とニンニクと日の光だそうだ。

十字架はないらしい。こちらの世界にあの宗教はないからね。

その中でも特に効くのが銀製品と神聖魔法らしい。

俺は武器屋に来たついでなので、新しい短い杖を買って今まで腰にぶら下げていただけの安物の短い杖は売った。

新しい短杖は木に蔦が絡まったようなデザインで、ベテランがよく使うポピュラーなものらしい。

そして一応と思って銀の短剣も個人的に買った。




そんなこんなで買い終わったのは昼頃だった。

俺たちは昼を食べて出発となった。

「さ!もう準備いいな?では出発!」

アルトクスは意気揚々と出発を宣言して、歩きだした。



目的地は町の北の山奥にある廃城なのだが、そのまま北の山を直線で行くとなると山の魔物と戦いながら行かなければならないし、山のアップダウンがしんどいので、今回は町の西から出て山をぐるっと迂回して反対側から山に入った方が廃城まではすぐなのだそうだ。

「西からぐるっと迂回というと・・・サラサク平原を通って行く感じですか?」

「そうそう。あの平原は山の魔物よりは弱い魔物ばかりだから、もし出会ってもそこまで苦戦することはないからな。」

歩きながら地図を見てルート確認をしているアルトクスに俺が話しかけるとにこやかに答えてくれた。

「でも最近、クレイジーボアの大群の目撃情報が出ているわよね?」

そう話しに入ってきたウィズリーの発言に内心反応する俺。

「そういやあ、討伐依頼出てたなあ。まだあの依頼誰も受けてないはずだよなあ。」

「た、大群なんて具体的な数がわからない書き方でしたから、み、みんな警戒して受けないみたいでしたから。」

やっぱり警戒するよな。

これはクレイジーボアがいなくなったのがすぐにはバレないかな?

あ、でもイルミに買い取ってもらったからそっちからすぐバレるか。



歩いて数時間、サラサク平原に着いたが俺はバテていた。

「はあ・・・。やっと着いたんですね・・・。」

「いや、ユウジン目的地っぽく言っているけど、ここ目的地じゃないからな。お前体力無さすぎだぞ?」

「すいません・・・。」

地球でも電車やチャリだったからこんなに歩いたのは初めてだ。

背の小さく華奢なリリナでさえ息切れもしてない。恥ずかしい!


それから少し休憩させてもらって、平原を横断する形で北に進んだ。

1時間ほど歩いたところで夕方になった。

「今日はこの辺りで野宿しようか。テント張るのにいいところは・・・あそこにあるでっかい岩の影にしよう。」

5メートルほどの大岩が近くにあったので、そこの岩影に移動した。

そして俺はアイテムからテントを出して張り方を教わりながら、自分用のをたてた。

続けて皆の荷物を出してそれぞれに渡して、野宿用の細々したものもウィズリーに指示されて出した。

その間にアルトクスとカルファーとリリナは焚き火用の枝を拾ったり近くの木になっていた木の実を採ってきたりしていた。


焚き火の用意をして、ウィズリーが火魔法で火をつける頃には辺りは暗くなっていた。

俺が大鍋ごと買ったビーフシチューとロールパンを出すと皆待ってましたと食べ始めた。


「野宿でこんな料理が食べられるのなんて夢にも思わなかったわ。ホント便利ね、アイテム収納魔法って。」

そういやあ、ラノベのテンプレでも主人公のアイテムボックスから出しだ料理を食べてそんなこと言う奴いたなあ、と思ってしまった。

「ほ、ホント便利ですね。う、羨ましいです。」

リリナは舌鼓をうちながらニコニコ笑顔で言ってきた。

オドオドしていたのがだいぶ慣れたのかな。

相変わらずどもっているから、普段からこう言うしゃべり方なんだろうか。


「なあ、ユウジン。この依頼終わったら俺らのパーティに入らねえ?」

急な誘いに俺は驚いてしまった。

「ええ!?な、何でですか?まだ一緒に戦ってすらいないじゃないですか?」

「いや、こうして出会ったのもなんか運命感じちゃって。やっぱ俺はすげえな。アイテム収納魔法なんて引き寄せて。ユウジンが入ってくれたら俺・・・だけじゃなくて、俺らのパーティがきっと成長すると思うんだよ。」


確かにパーティに入った方が俺はこちらの世界の情報が入りやすいし、魔法や戦い方を教わるには効率的だ。

だが、俺のチートがバレる可能性は高くなるし、バレたらバレたで面倒なことになりそうだ。

そして気になるのは、アルトクスの言い方。

なんか自分本意に聞こえるが。


俺がなんとも言えない顔をしていると、ウィズリーが耳打ちしてきた。

「ごめんね、アルトクスは本気で自分が英雄になると思い込んでいるの。小さな頃から英雄に憧れてて、結構強かったし負けたことがなかったから、そう思い込んじゃったみたいで。」

「小さな頃からって、ウィズリーもしかして・・・。」

「私とアルトクスは幼なじみなのよ。ああいう性格だから好き嫌いがはっきりするけど、悪意はないの。無理だったら私たちで説得して諦めさせるから私たちには遠慮なく言ってね。」

「はは・・・、ありがとうございます。」

なんとなく、アルトクスで苦労しているんだろうなと思った。

アルトクスには「この依頼が終わるまでには返事する」と言っといた。

アルトクスはオーケーしてくれるものと思っていたようで、その返事に不満な感じを出していたが、ウィズリーがなだめていた。



夜は見張りするという話になって、アルトクス→カルファーと俺→ウィズリーとリリナというペアとなった。


そうと決まればとさっさと寝て数時間後、交代の時間になって俺は自分に仕掛けていた雷魔法で目を覚ました。

今度は超微弱にしたので一瞬ビクッとしただけで痛みはなかった。


テントを出るとちょうどカルファーも出てきて、アルトクスは「異常はなかったぞ。んじゃ、お休み~」といってテントに入っていった。

それからはカルファーと雑談をしながら焚き火に枝を追加しつつ、時間を潰した。

「ユウジンは見張り初めてなんだよなあ?眠くない?」

「眠いです。でもこれからこうやって野宿する必要が出てくるかもしれませんし、慣れないとですね。」

「んじゃあ、見張りをしていて、魔物の気配を感じるのをやってみるかい?」

「魔物の気配ですか?」

「まあ、殺気に近い感じかなあ。なんか空気が張り詰めてるていう感じ?それがわかるようになったら、奇襲してくる盗賊とかもわかるようになると思うんだよ。」

「なるほど。わかるようになるコツとかあるんですか?」

「う~ん、要は魔力と感覚をリンクさせて魔力を周りに流して、それに感覚をのせるって感じなんだけど、リンクさせ方や魔力の流し方に感覚ののせ方はどれも口では説明は難しいかなあ。」


それはもしかして、ラノベでよく出てくる「サーチ」と呼ばれる魔法ではないのか?

サーチは確か、自分を中心に魔力を広げて範囲内に何があるかわかるようになる魔法だったはず。

この世界にサーチはないのか?

いや、魔法としてないならもしかして今できるんじゃないか?


俺はサーチを参考にしながら体内にある魔力と感覚を繋げて、それを自分を中心にしてのばすイメージをしてみた。





あれ?・・・・・・できた。



「おい、どうしたあ?急に考え込んで。」

カルファーに言われて慌てて魔力をのばすのを止めた。

「え、いや、確かに難しいなって思いまして。」

「まあ、だいたい練習して1~2年かかるものだから地道にやっていけばいいさ。」

なんでかカルファーには魔力のばしてたのバレてないようだ。

っていうか、1~2年かかるのか・・・。

すぐできたなんて言ったらめんどくさそうだからできないフリしとくか。




こうして魔物の奇襲もなく、見張りは無事に終わった。






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