134、悪魔は去った後2
マスティフ視点が続きます。
ホムンクルスは俺たちのことを知っていると言ってきて、俺とじいさんは首を傾げた。
「なにを言っとるんだ?ホムンクルス。」
「あなたがこどものころからいっぱいぶゆーでんをつくってきたのも、たくちゃんのひとたちをちゅくってきたことも・・・だいぢなひとたちをあくまきょうにころちゃれたこともちってるの。」
その言葉に俺もじいさんも驚いて固まった。
「おくちゃんをつれちゃらわれてころちゃれたわよね?ちょちてちょれのかたきをうちにいったちょうなんもころちゃれた。」
じいさんは柔らかな笑顔が消えて、顔を強張らせている。
2人が殺された当時が思い出されたのだろう。
「おぬし・・・なぜそれを知っている!?わしの妻と長男は病死したことにして、悪魔教に殺されたことは"黒の一族"の家族しか知らんことだぞ!?」
「このちぇかいのちぇいぶつちゅべてのきおくやおいたち、れきちなんかもちゅべてかみちゃまのちちきなの。ちょれをあたちももっているの。」
「神の知識を持っていると!?」
「ちょう。ゆうぢんのおかげよ。」
「ユ、ユウジンの・・・?」
「ゆうぢんがてちゅたーなのはちってる?」
俺とじいさんはテスターという言葉が出たことに少し驚いて頷いた。
「ゆうぢんはかみちゃまによってこのちぇかいにきたてちゅたーだから、かみちゃまとつながりがあるぢょうたいで、ほむんくるちゅをつくるのをぢゃいりょうあつめでかかわってくれたから、あたちがかみちゃまとつながることができたのよ。」
なるほど。
ユウジンはこうなると思ってたのかはわからないが、結果的にすごいホムンクルスを造るのに貢献したって訳か。
正直ホムンクルス自体、初めて見たからなんとも言えないが本来はこんなにペラペラ喋れないし表情も無表情だと聞いたことがある。
舌ったらずなしゃべり方だが、見た目が赤ちゃんみたいだから違和感はないし、小さな女の子のように表情はコロコロ変わるわで、フラスコにさえ入っていなければとても人造とは思えないな。
やっぱりユウジンが関わるとすげえ面白いことになるんだな。
俺がユウジンってすげえなと感心していると、じいさんはホムンクルスに聞いた。
「神の知識を持つというのはわかったし、わしらのおいたちなどのことを知っているのも、本当だと信じよう。それで、なぜ店主を遠ざけてまでこの話をしたんじゃ?」
えっ!?ホムンクルスはわざとモメントにケーキを買ってくるように言ったのか!?
「おぢいちゃんはあたちがかみちゃまのちちきをもってることも、ゆうぢんがてちゅたーということもなにもちらないから、とおぢゃけたの。たまたまだいちぇいこうちてあたちがゆうちゅうだとおもってる。でもちょれでいいの。むかんけいのひとはかかわらなくていいことだちね。」
「ふたりもおぢいちゃんにはないちょにちてよ!」とホムンクルスは明るく言った。
「あたちがあなたたちをよんだのは、おねがいをちたかったの。」
「お願い?」
「ゆうぢんのぢゃまちないでほちいの。」
じいさんはその言葉に眉を潜めた。
「それは・・・なぜじゃ?」
「ゆうぢんのおかげでかみのちちきをもてたから、いろんなことがわかってとってもたのちいの。とくにあまいものがたくちゃんたべられるから、とーってもちあわちぇなの!だから、おぢいちゃんもだいちゅきだけどゆうぢんもだいちゅき。だいちゅきなゆうぢんがこのちぇかいをたのちんでくれるのをてつだいたいの。」
本当に甘いものが好きなんだなあ。
そしてユウジン、ルナメイア様に続いてこんな幼女?からもモテんだなー。
と、俺が呑気に思っている横で、じいさんは眉を潜めたままでいた。
「それは・・・難しいのう。」
「えっ、むぢゅかちいの?」
「おぬしは知っておるのか?あやつは絶望のためにこの世界に来たと言っていた。気に入らない者の絶望の顔を見るためならば他の人も平気で犠牲にするような、危険な考えを持っておる。あやつが好き勝手に世界を旅するというなら各地で争いが起こって、恐ろしいことになるぞ。」
「ちょうなってるんだったら、とっくにこのくにでなってるわ。このくにでゆうぢんはあらちょいごとをまきおこちた?だれかぎちぇいになった?ゆうぢんはめだつのがきらいだからあなたがかんがえるようなことはおこらないとおもうし、むちろぢんちんばいばいやあくまきょうのゆうかいみちゅいはゆうぢんがいたからあきらかになってかいけつちたとおもわないかちら?」
まあ、確かに・・・この国は、変な争い事はなくて平和だな。
まあ、あいつの性格で目立つのが嫌いなのは知ってるから、そう考えると争い事を起こすとは思えないか。
・・・まあ、ヴェネリーグでは首都決戦では目立っていたけどな。
・・・ん?
人身売買?
「・・・おい、ホムンクルス。人身売買って?」
「あれ?おぼえてないかちら?きぢょくがえらいきぢょくにこどもをうって、まほうぢっけんのぢっけんだいにちていて、ちゅかまったぢけんおぼえてないの?」
「・・・あー、そういやあ、そんな事件が前にあったな。えっ、あれってユウジン関わってたのかよ!?」
「ゆうぢんがたまたまみつけてこらちめて、ちょうこをけいびへいのみえるところにおいてけいびへいにつかまえちゃちぇたのよ。ゆうぢんはぢぇつぼうがみえたらどうでもいいみたいだから、なのりでることはちなかったみたいね。」
ええー、あの事件が発覚した時に俺やアシュアは散々その貴族の事件のことをユウジンの前で話してたのに、水くさいなー。
「あなたはゆうぢんよりもあくまきょうをおったらいいとおもう。あくまきょうをにくんでいるでちょう?」
「・・・。」
じいさんはなにかを考えるように黙ってホムンクルスをじっと見ていた。
「・・・まあ、ゆうぢんがあくまきょうをおってるから、ゆうぢんをおったらあくまきょうにたどりつけるかもちれないわ。」
「!?あやつは悪魔教を追って首都を出たのか!?ヴェネリーグでは手がかりがまったくなかったのにか!?」
「あなたたちがちらないだけで、ゆうぢんはてがかりをつかむほうほうをもってたの。」
えっ!?そんな方法があるなら教えてほしかったのに!
「・・・かみちゃまのちちきによると、あくまきょうはたぶんもうすぐかいめつちゅるとおもう。」
「「!?」」
ホムンクルスのぽつりと言ったその言葉に俺もじいさんも驚いた。
「な、なぜそう思うんじゃ?」
「たぶん・・・ゆうぢんがかいめつちゃちぇるとおもう。」
「お~い、帰ったぞ~!」
俺たちが驚くなか、両手いっぱいにケーキを持ったモメントが帰ってきた。
途端にホムンクルスは真剣だった顔を子供のあどけないものに変えて、ケーキを見て飛び上がって喜んでいた。
俺とじいさんは心にモヤモヤしたものを抱えたまま、ケーキをもらってモメントとホムンクルスと当たり障りのない話をして、しばらくして店を出た。
じいさんは店を出てしばらく歩きながら、なにやら考え事をしていた。
ユウジンを倒そうとしていたじいさんは、どうしようかと考えているのだろうか?
ユウジンが悪魔教を壊滅させるというのが本当なら、じいさんはユウジンを倒すのか?それとも壊滅に協力するとか?
俺は・・・正直なところ、ユウジンが絶望のためにこの世界に来たとしても、じいさんのように倒そうと思えなかった。
絶望の顔を見たいというのはあくまでもユウジンの1面であって、俺はあいつがたくさんの人助けをしている1面も知ってる。
誰もやりたがらない箱の依頼を、好感度上げるためだったとしても毎日コツコツやるだろうか?
特訓の依頼も丁寧に教えていたし、フラヴィーナの領主をメンタルめちゃくちゃにしてたけど、その後は善政をするようにしか命令しなかったし。
あいつは優しい1面もちゃんと持ってると思うから、倒そうと思わないし「ユウジンってすげーな」って呑気に思えてるんだと思う。
なにより、俺はあいつの強さを気に入ってるんだから、模擬戦以外で刃を向けるきになれないんだよなあ・・・。
なーんてな、じいさんに言ったら「お前は甘い」って言われるのかな?
「・・・まあ、どちらにしてもユウジンを追うことには変わりはないってことじゃな。さて、ユウジンがどこに行ったか、聞き込みでもするかのう。」
じいさんはどうやら切り替えたようで、いつものニコニコ笑顔でそう言ってきた。
それからしばらく聞き込みをして、肩に黒猫を乗せた青年がある朝に首都の西側の塀の外で豪華な馬車に乗るのを目撃されているのがわかった。
さらにその朝に、ずっと首都にいたルナメイア様が突然西のカサブラの町に帰ることになって、豪華な馬車で帰っていったとの話も聞けた。
さすがにこの情報を聞いて、バカとかアホとか言われてる俺でもわかる。
俺とじいさんは数日後、首都を出て西のカサブラの町を目指した。
次からは宗教国家イルヴァルナスが舞台となります。
そして急で申し訳ありませんが、このタイミングでしばらくお休みさせていただこうと思います。
というのも、この先のことは大まかにしか決まってなくてを詳しく考えるお時間をいただきたいのと、もうひとつの小説を集中的に書きたいということもありまして。
楽しみにされているかたには申し訳ありませんが、ご理解をお願いします。
予定では今月いっぱいか来月上旬頃までお休みしようと考えております。
再開しましたら、主人公の暴れっぷりを楽しんでいただけるようがんばります。




