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128、悪魔はギルマス部屋で話す

「これはどういうことか、説明してもらえますか?」



ギルマスの部屋にて、ソファに座った俺の前にはギルマスのサルフェーニアと警備長のエジテスが座っていて、俺は困り果てて目の前に座るサルフェーニアに問いかけた。

俺の隣にはルナメイアが座っていて、クロ助を膝にのせて撫でながら俺に微笑んできている。


ルナメイアに見つかって「ユウジン様!」と言われ、ギルド中の目線が俺に集中してギルドの外にいる野次馬もジロジロ見てきたので慌てて逃げようとしたが、ルナメイアの側にいて警護していた警備長エジテスがものすごいスピードで俺の腕をつかんでギルドの2階に上がってギルマスの部屋に連れてこられてソファに座らされ、隣にルナメイアが座って今に至るのだ。


サルフェーニアはというと俺が困っているのが本当におかしいようでニヤニヤしてくるし、エジテスは興味無さげにしていてどう見ても俺の味方がいない状況になってしまっている。


「ルナメイア様はずっとユウジンが帰ってくるのを待っていたのよ。」

「ず、ずっと?」

「あなたがマリルクロウ様とヴェネリーグ王国に旅立って1ヶ月後位かしらね、ルナメイア様がいきなりギルトに来たのよ。ユウジンがいつ帰ってくるのか聞きに。」

は!?と思ってルナメイアを見ると、ニコリと微笑んできた。

「申し訳ありません。父上からマリルクロウ様とヴェネリーグ王国に向かった冒険者がいると聞いて騎士長に調べてもらったら、ユウジン様だと知って・・・。てっきりすぐに帰ってきて下さるものと思って、ずっと王城に居続けてお帰りを待っておりました。それでもいてもたってもいられず、忍んでギルドに来たのです。」

そういえば、ルナメイアは西のカサブラという町にいつもは住んでいると聞いたことがあったな。

カサブラに帰らずに首都で待っていたのか。

「ルナメイア様は月に1回はギルドに来てね。そのおかげで街は大騒ぎさ。絶世の美女として間近で見る機会もなかった第一姫様がギルドに現れたんだもの。ルナメイア様を見て何人の冒険者が卒倒したかわからないね。」

「え、そんなに・・・?」

「しかも3日前くらいかな?ヴェネリーグ王国の内紛がおさまったって噂が流れてね。それを聞いてからはルナメイア様は毎日ギルドに来て、テーブル席で待つようになってねえ。」

もう噂が流れてきたのか!?早いな!

それで毎日ギルドで待つようになったって・・・ヴェネリーグ王国からここまで1週間くらいかかることわかってるはずなのに。


「そんなにギルドに来てお城は大丈夫なんですか!?騎士長も見当たりませんし、警備は?」

その疑問にエジテスが答えた。

「これはお忍びだから国王にはもちろん内緒だ。騎士長にはルナメイア様は部屋にいると偽装工作のために城に残ってもらっている。警備は私が身辺警護をしているし、外の野次馬の中に私服の警備兵も潜ませてある。」

そう言ってきた強面の表情に疲れの色が見える。

大変だな、警備長・・・。


「あの、ユウジン様。わたくしが勝手に待っていたこと、ご迷惑だったでしょうか?」

ルナメイアは微笑みから不安げな表情で俺を見てきた。

うっ・・・、ものすごい美女にそんな顔をされたらいくら俺でもたまらない気持ちになる。

まあ、ここで「別に待ってなくてカサブラに帰って頂いてもよかったのに」なんて言うほど俺もバカでもアホでもない。

「そ、そんなことないですよ。待っていただいて嬉しいです。ありがとうございました。」

俺はいつもの笑顔を張り付けてそう言った。

心にもないことだが、真に受けたルナメイアはポッと頬を染めてうつむいた。



その時、時刻を知らせる鐘がなった。

いつの間にか窓の外は夜になっていて真っ暗だ。

「・・・ルナメイア様、時間のようです。」

エジテスはすっくと立ち上がった。

「城で夕食が始まってしまいます。国王と一緒に召し上がる予定ですので、参加しないとまずいです。」

「え、ええっ・・・!?」

ルナメイアは慌てて俺にぐいっと近づいてきた。


「あ、あの、ユウジン様。またお会いして頂けますか!?」

「えあ、は、はい。」

その勢いに思わずはいと言ってしまった。

ルナメイアはとびきりの笑顔を見せるとクロ助を俺に渡してきて立ち上がり、一礼してエジテスと共に部屋から出ていった。

「またお会いできるのを楽しみにしています!」と笑顔で言ってきて、その姿は正直可愛らしかった。


「・・・あんなに行動力のある方なんですか?」

残された部屋で、俺はまだニヤニヤしているサルフェーニアに言った。

「ルナメイア様と言えば、穏やかな性格で大人しいと言われているのよ。いつもご自分の部屋の窓辺で読書をされているような方よ。だから私も驚いてるんだから。恋は人を変えるってことね。」

「驚いてるというよりかは面白がってるでしょう?」

サルフェーニアは楽しそうにふふふと笑った。



「ところで・・・話は変わるけど、マリルクロウ様たちはどうしたんだい?一緒に帰ってきてはないのかい?」

「じいさんらは内紛の後のヴェネリーグ王国の人事などでアドバイザーになって色々と新しい王に助言していましたよ。しばらく帰れそうもないかなと俺だけ先に帰らせて頂いた次第です。」

「ってことは、本当に内紛は終わったのね?」

「はい。グラエム王とオーランド王子の内紛は首都で大騒動となりまして、次男のヒースティ王子以外が病死(・・)して、ヒースティ王子が王となりました。まあ、詳しくはじいさんが帰ってきたら聞いたらいいと思いますが。」

「ふうん・・・。あんた以外がヴェネリーグ王国の手助けをしているのなら、あんたはやらなかったの?」

「俺は政治なんてわかりませんからね。素人がでしゃばったら邪魔でしょうから。」

あちらの世界で普通の一般人として暮らしていたから政治なんてまったくわからない。

そんな奴があれこれ言ったところで国がよくなるとも思えないしな。


「あんた頭いいから頼られそうだと思ったんだけど、そうかい。ヒースティ王には会ったの?というのはどういう人?」

「争いを好まない平和主義の心優しい王ですよ。政治なんて無関心だったそうで内紛中は巻き込まれないように別宅に籠ってるくらいでしたからね。その王がどこまでやれるか、楽しみではありますね。」

「え、そんな王で大丈夫なのかしら?王だったら外交のこともあるし、厳しいことも決断しなきゃいけないこともあるでしょう。」

「それは・・・大丈夫でしょう。綺麗事で進めていったらいいと思いますよ。それで滅ぶようならそこまでの国だったというだけですし。国は王だけで支えられているものでもないですから、大抵ヒール役も現れてうまくいくもんです。」

「・・・あんたヴェネリーグ王国に残っても十分手助けできると思うわよ。」

サルフェーニアはそう言って呆れていた。


「まあいいわ。マリルクロウ様が帰ってきたら話を聞くことにするわ。その時はあんたも呼ぶかもしれないわね。」

「あ、すいませんが俺は数日後にまたトリズデンから出る予定でして。」

サルフェーニアはえ!?と驚いた表情をした。

「え!?さっき帰ってきたのに、数日後に出るのかい!?」

「ええそうなんです。ちょっと用事ができまして・・・。」

「用事って、ギルドの依頼ではなく?」

「はい。あくまでも個人的な用事で。」

「なんだそうかい・・・。どこの国に行く予定なんだい?」


俺はニコリと笑って言った。


「内緒です。」





ほどなくして冒険者ギルドを出た俺は宿屋に帰ることにした。

本当はギルド裏の剥ぎ取り小屋に行きたかったが、予定外のことのせいで夜になってしまったからな。

明日の午前中に行くことにしよう。

因みに宿屋への帰りは一応、顔に隠蔽魔法をかけて誰だかわからないようにした。

・・・でもまあ、よく考えたら肩に黒猫乗せてるというものすごく目立つ姿だから顔がわれてそうだな。

一応、念には念をということでクロ助にも隠蔽魔法をかけて帰った。



「よう、ユウジン。姫様見れたか?」

宿屋の受付にいたハドソンさんにそう言われてリアクションしそうになった。

そういえば、ギルドに行くと言ったらなんか面白そうな顔してたな。

ルナメイアがいることを知ってたのか!?

「え、ええ。姫様がいたので驚きましたが、人もたくさんで驚きました。」

「なんでも待ち人がいるらしくって、ギルドで待ってんだとよ。噂じゃ冒険者の男らしいぞ。あんな美人に待たれてそいつは幸せだろうなあ、あーうらやましい!」

「は、はは・・・。」


まさか俺を待ってたなんてハドソンさんは夢にも思ってないようだ。

まあ、俺も待たれてたとは夢にも思ってなかったけど。





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