127、悪魔はトリズデン王国に戻る
ヴェネリーグ王国で暇を潰していた時や北の山を移動している時に、俺は色々と確認事項ができたので、確かめていた。
まずは俺のステータスだ。
死霊魔法で生き返らせた者たちが戦った経験値が使役していた俺に来るのかわからないが、何気なくステータスを確認するとレベルが上がっていた。
そして思わぬ変化もあった。
名前:ユウジン・アクライ(阿久来優人)
種族:人間(魔法使い)
年齢:24
レベル:59→62
HP:2070→2220
MP:3540→3690(×4)
攻撃力:466→489
防御力:563→593
智力:737→778
速力:613→640
精神力:317→333
運:216→229
超適性:罠魔法・(取得)多重魔法
戦闘スキル:上級短剣術・中級剣術・双剣術
魔法スキル:最上級罠魔法・最上級鑑定魔法・アイテム収納魔法・中級火魔法・中級水魔法・中級風魔法・上級土魔法・初級雷魔法・中級光魔法・拘束魔法・隠蔽魔法・探索魔法・死霊魔法・剣魔法・操剣魔法・最上級多重魔法
そう。
なんと超適性に多重魔法が加わっていたのだ。
首都での死者を蘇らせた内紛終結の前に確認したときは確かになかったのに新しく取得している。
・・・考えられるのは、最上級にしたことと最上級にした後使いまくったことか。
ただ最上級にしたことで超適性になるなら、先に最上級にした鑑定魔法が超適性になるはずなのになってないということは、恐らく最上級になってからある程度の数を使用しないといけないのかもしれない。
神様がくれるものとしては最強の武器防具や全魔法取得に比べたら正直しょぼいと思っていたが、これはいいもらいものをしたな。
つまり俺は、級のある魔法を最上級にしてある程度使えば、超適性にできるということで、超適性にすればMP消費は1になり、MPを気にせず強い魔法を打ちまくることも可能になる、ということだ。
これは全魔法取得より使い勝手はいい。
全魔法取得なら、レベルを上げまくらないと魔法を打ちまくることはできないが、超適性はある程度のレベルを上げるだけでできる。
さらにスキルや魔法を取得しやすいテスターだから最上級には上げやすい。
神様に今度会ったときは礼を言わないとな。
因みに多重魔法は超適性になって何が変わったかというと、1度にできる魔法の数が変化していた。
最上級になって最大1000までだったのだが、超適性のため最大5000までに増えた。
5000なんて、逆にそれほど魔法を多重する機会があるのか疑問だがまあ、最大を気にせず魔法を打つことができるというのはありがたい。
それからクロ助の方はレベルは変わらないが、ドラゴン・アバドン・オーガの力の一部をそれぞれもらっていたため、影魔法が進化した。
まず、ドラゴンの力でウェアがドラゴンにもなれるようになった。
そしてアバドン。
「クロ助、アバドンの力はなにかわかるか?」
「ミャー!」
クロ助はもちろん!という感じで肩の上で鳴くと、一瞬にしてクロ助の体が無数の黒いなにかになって霧散した。
「は!?」
俺が驚いてよく見ると、クロ助が霧散したなにかはもやでできたイナゴだった。
無数のイナゴは俺の周りをしばらく飛ぶと、足元の地面に集まって猫の形になり、クロ助の姿になった。
「す、すごい・・・。これだったら攻撃を避けることも、相手にまとわりついて目眩ましもできますね。」
クロ助はえっへんと胸を張っていた。
では、オーガはというと。
「フミャー!」
クロ助がそう鋭く鳴くと、影が尻尾にまとわりついて長く伸びた。
そこまではいつものフォースなのだが、そこからは2つに別れてもやがモコモコ大きくなり、オーガの2本の腕と同じ大きさの腕が出来上がった。
クロ助によると腕で攻撃することはもちろんできるし、1トンまでなら持ち上げることも可能らしい。
すごいな、クロ助が段々人間離れならぬ猫離れしていっているんだが・・・。
クロ助自身はめちゃくちゃ喜んでいるからいいけど。
近い将来、ものすごい戦力になりそうだ。
クロ助自身もヤル気あるからそうなる気がものすごいする。
こうして俺は逃亡しながらも自身とクロ助の戦力の確認をしていた。
そしてトリズデン王国に戻ってきた俺は首都スクリュクスに移動して、夕方から夜にかけての時間帯に到着することができた。
こんなに早く着いたのはもちろん、クロ助のウェアのおかげだ。
だがさすがにドラゴンの姿を誰かに見られるのは面倒だったのでスクリュクスの大分手前の森に降りてそこから歩いて首都に入った。
とりあえず、宿屋"銀狼の遠吠え"でまた世話になろうと向かい、受付にいたハドソンさんに挨拶すると、ハドソンさんは俺たちの再会にとても喜んでローズさんを慌てて呼んだ。
ローズさんは目にも止まらぬ速さで来ると一瞬にしてクロ助を抱きしめて頬擦りしていた。
「チビちゃ~~~ん!会いたかったわあ!!」
「ミャ、ミャー・・・」
あまりの勢いにクロ助は引いていた。
けど気付かないローズさんは撫で回しながらハートを飛ばしまくっていた。
しばらく撫で回したローズさんは満足してのかやっとクロ助は解放され、クロ助は俺の肩の上に戻ると疲れて遠い目をしていた。
「戻ってきたということは、またうちに泊まっていってくれるってことかい!?」
「あ、はい。ですが、数日後にはまた出ないと行けないんですけど。」
「数日とは、なかなか忙しいんだねえ。その間でもゆっくりとしていって。」
ローズさんはまたしばらくクロ助に朝会えるとルンルンで食堂に去っていった。
「部屋はユウジンが使ってた部屋が空いてるからそこでいいだろ?夕飯時には少し早いが、部屋に行くかい?」
「同じ部屋にしてもらってありがとうございます。とりあえず、4日お世話になることにします。夕飯時になるまで時間潰しに、ちょっとギルドに行ってきます。」
俺がギルドに行くと言った途端、ハドソンさんはニヤリと笑った。
「そうだな。ギルドに行ったらいいかもな。今ギルドは面白いことになってるぞ。」
「面白いこと?」
なんだろう?トリズデン王国を出る前のギルドは普通だったはずだが?
俺が首を傾げていると「行ったらわかる」とハドソンさんは言ってギルドに行くように促された。
宿屋を出て、しばらく町の様子を見ながら歩いてギルドに向かった。
町は相変わらず賑わっていて、やはり内紛なんてないからヴェネリーグ王国の町より店も多いし人も活気に溢れている。
絶望が見れないのは残念だけど、こうやって賑わっている町というのも結構好きだったりするんだよな。
・・・うん?
ギルドの建物に近づいてきたが、やけに人が多い気がする。
皆ギルドの中を窓から覗いていて、老若男女いろんな人がたむろしていた。
こんな光景、俺がいたときはなかったぞ。
俺は疑問に思いながらも人をかき分けてギルドの扉を開けた。
いつものように、ギルドの中は冒険者が多くいて、俺が中に入ったら一斉に皆が見てきた。
ガターン
誰かが勢いよく椅子を引いて立ち上がった音がした。
「ユウジン様!」
「え?」
まさか呼ばれるとは思ってなかった俺は椅子の音がした方で声がしたギルドのテーブル席に目を向けた。
そこにはものすごく豪華なドレスを着た、とんでもない美女がいた。
白に近い金髪をなびかせて、睫毛の長い赤い目をうるうるとさせながら俺を見ていた。
「ル、ルナメイア・・・様!?」
「やっとお会いできました!ユウジン様。」
は!?




