表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
125/350

123、悪魔は浄化させる

アウルサからたった今、首都に来たヒースティ王子によると、首都の塀の外は騎士兵士が塀に沿って防御体制を取っていて、迫り来る魔物たちは死者たちと戦っているそうだ。


「正直、見てられるものではなかった。腕や頭を潰されても魔物に向かっていく姿が惨たらしくて・・・。」

生きている騎士兵士たちは死んだはずの仲間が死者として魔物に向かっていく姿に戦慄して呆然と死者と魔物の戦いを見つめていたらしい。

「父上が亡くなられたことで魔物にかかっていた使役魔法が解けたはず。今頃は魔物たちは山に帰ろうとしていると思う。・・・だからユウジン、死霊魔法を解いてくれ。戦っている死者たちはあまりに憐れで見ていられないくらいなんだ。」

ヒースティ王子は俺にそう訴えかけてきたが、俺はニコニコ笑ったまま、断った。

「申し訳ありませんが、できません。解き方がわからないんです。」

「・・・え!?」


「いやー、思いつきで取ったので解き方については考えてませんでした。王子は知っていますか?」

「い、いや、わからない・・・。」

「では困りましたねえ。このままでは、死者は首都にさ迷うことになってしまいますねえ。」

俺は口では困ったと言いながら、ニコニコ王子を見ていた。

王子は戸惑っている。

「そんな・・・。どうしたら・・・!?」


「例えば、浄化の炎、なんてのがあったらいいんですけどねえ。」

「え?・・・それは、どういう?」

「炎というのは「再生」や「浄化」を表すとされています。だから死者を浄化させる炎、なんてのがあるんじゃないかなと思ってみたんですが・・・。」

「炎・・・「再生」・・・!?ま、まさか!?」

ヒースティ王子は驚いた顔で俺を見てきた。

他の皆は俺がなにを言っているのかわからず首を傾げている。


『・・・なるほど、そういうことか。』


そんな声がして、ヒースティ王子の周りに炎が舞い、炎はフェニックスの姿となった。

「すごいきれい!あれがフェニックスなのね!?」

フェニックスを初めて見たアシュアはキラキラした目で見ていて、レフィも見とれていた。

じいさんは「レベルCのはずじゃがしゃべるとはのう・・・。」と少し驚いている。

『すべてを察した。我にこれをやれと言うようだな。』

「さあ、なんのことだか。」

俺がとぼけた返事をすると、フェニックスはフンと鼻で笑った。


「フェニックス!もしかして・・・。」

『ヒースティ、首都の浄化を我に命ずるのだ。』

「命ずる?ど、どうして?」

『そうすることに意味がある。さあ、命令を。』

「で、でもそうするように言ったら・・・フェニックスがせっかく今まで隠してきたことが・・・。」

『なに、我のことが明らかになってもヒースティの使役になっているのだから近づいて来る者もいないだろう。使役した魔物にさえも心優しい者をもり立てるのも悪くない。』

ヒースティ王子は少し躊躇しながらも、フェニックスをじっと見つめて考えると、フェニックスに命じた。

「わかったよ、フェニックス。・・・首都を浄化してほしい。」

フェニックスはニコリと笑った。


『了解した。我が主よ。』


フェニックスは天に向かって高く鳴くと、フェニックスの全身から炎が舞い上がりまばゆい光を放った。

「っ!?眩しい!?」

皆があまりの眩しさに手で顔を覆う。

すると俺たちの周りに光の粒が覆って、俺は魔力を使ってしんどかった体があっという間に回復した。

ステータスを見てみると、あんなに少なかったMPが全回復していた。

マスティフやレフィもしんどさがなくなったようで、戸惑っている。


フェニックスは優雅に翼を広げると飛び立ち、じいさんの開けた壁の大穴から外に飛び出した。

フェニックスから出るまばゆい光はより一層強くなって首都中を照らし、フェニックスが大きく首都の上空を回るとそこら中から光の粒が溢れた。

生きている物はその光の粒に覆われると傷が癒えて欠損した手足すら繋がった。

死者は光の粒に覆われると虚ろだった目が穏やかになり、魂が体から抜けて天へと召されていった。


「こ、これはなんとすごい能力じゃ・・・!?」

さすがのじいさんも回復した自身の体に驚いていた。

フェニックスはしばらく首都を回ると大穴から帰ってきた。

「さすがフェニックスですね。」

「ユウジン、これはどういうことじゃ?フェニックスにあんな能力があるとおぬしは知っとったのか?」

俺が感心しているとじいさんが話しかけてきた。

「ええ。俺の住んでいたところではフェニックスは有名ですから。フェニックスは再生能力という特殊な能力を持っていて、例え倒されても死体の炎からまた生まれ変わると言われています。故に絶対に死ぬことはない最強の生物と思っています。」

「な、なんと!?そんな能力が!?」

「大昔にはその能力が知られていてランクSでしたが、ランクS目当ての冒険者が来ては炎で死んでいったのを憐れに思ってランクCのただの鳥の魔物のフリを数百年していたそうですよ。そうフェニックスが言ってました。」

「だからしゃべるのか。そうか・・・。なんとも優しい故に難儀な魔物だのう。」

じいさんはフェニックスを見てそう言った。



『さて、我らも逝かねばならんな。』

光の粒に覆われているドラゴンはそう言って俺に近づいてきた。

アバドンやカルディルもこちらに近づいてきた。

『人間。改めて礼を言おう。お前のおかげで恨みを晴らせた。』

『倒されたあのままだったらあのクソ王子を恨んだまま、それそこ亡霊になっていたかもしれない。』

『ありがとう、ユウジン。』

「どういたしまして。」


『・・・せめてもの礼をしたいのだが。』

「え?礼、ですか?」

『ドラゴン族は受けた恩は必ず返さなくてはならないと気がすまないのだ。そうだな・・・。』

ドラゴンはそう言うと、骨の頭でクロ助をじーっと見てきた。

『お前の黒猫は・・・どうやら適性が特殊のようだな?』

「え、わかるんですか?」

『なんとなくな。・・・我はブラックドラゴンだから相性はいいかもしれん。黒猫よ、我の力の一部を受けとらんか?』

「え!?クロ助に!?」

『お前はなんとなく、我の力が無用なほどなにかの力に覆われている。ならお前の黒猫がいいだろう。』

なにかの力・・・?

もしかしてテスターということで神様の力っぽいもののことだろうか?


「ミャミャー!」

クロ助は力強く、ちょうだいっ!という感じで鳴いた。

『よし、黒猫に我の力の一部を授けるとしよう。』

するとそのやり取りを見ていたアバドンとカルディルも乗ってきた。

『ふむ、面白い。俺も借りを返したいから、黒猫に力の一部をやろう。俺は闇属性だから相性いいしな。』

『俺は違うがオーガの方が闇属性のオーガだから、俺もオーガの力の一部をやろう。』

3体の体から黒い光の塊が出てくると、それは3つともクロ助の周りを覆い、クロ助の体の中に入っていった。

クロ助はなにか考えているように自分の体中を見回すと、3体に「ミャー!」とありがとうと鳴いた。

それを聞いて3体は穏やかに笑うと『ではな。』と言って体から離れ、浄化していった。


『・・・ユウジン。』

3体が逝ったのをなんとなく見送っていると、ティーガに声をかけられた。

ティーガも光の粒に覆われている。

『あなたに生き返らせてもらったおかげで、グラエム王やオーランド王子が実験をした真意が知れました。ありがとうございました。』

「いいえ。こちらこそ、証人としてここまでありがとうございました。」

『・・・私もあなたに礼をしたいのですが、私は彼らのように力はありません。なのでこれを受け取って下さい。』

そう言ってティーガは胸ポケットから鍵と手紙を取り出して渡してきた。

鍵はちょっと豪華な彩飾が施された銀色だ。

『これは我が一族の金庫の鍵です。私は独身で親戚家族もいない天涯孤独の身ですから私の逝った後の財産を受け取って下さい。』

「は!?ほ、本当にいいんですか!?」

『アウルサは領主ということでいましたが、一族の屋敷は代々この首都にあって、そこに金庫があります。私がいなくなれば国に没収されるだけの金です。どうせなら使ってください。手紙にはあなたに渡すようにと書いてますので屋敷を管理している執事に渡したら私の字だとわかるでしょう。』

「・・・そ、そうですか。わかりました、ありがたく頂戴して使わせていただきます。」

俺はそう言ってポケットにしまった。

ティーガはそれを見ると穏やかな笑顔をなって、皆に一礼して天に召されていった。




それから首都はすぐにグラエム王とユースギル王子とオーランド王子が亡くなったことが知れ渡り、大騒ぎとなった。

俺たちは外で待機していた騎士兵士を首都の中に受け入れ、城と首都の治安につとめてもらった。

貴族たちや大臣は翌々日には首都に帰ってきてあっという間にヒースティ王子に取り入り出した。

王族はヒースティ王子だけとなったことで、必然的にヒースティ王子が王になることになり、いい地位に着こうと取り入ってきたのだ。


「必然的に王となってしまっていいのだろうか・・・。私はまったく政治はわからないし、人望もないのに・・・。」

ヒースティ王子はそう呟いていたので、俺は呑気に紅茶を飲みながら答えた。

「そうですか?俺はヒースティ王子が王となっても、誰も文句は言わないと思いますよ。だって突如現れた謎の死者たちをあっという間に浄化して首都にいる全員の傷を癒したフェニックスの主なんですから。首都を救った心優しい王様として、人気出ると思いますがねえ。」

「え!?・・・も、もしかして、そうなるように・・・私を首都に呼んだり、死霊魔法を使ったりしたのか・・・!?フェニックスが命令してくれと言っていたのは、フェニックスの手柄ではなく私の手柄にするため!?」

「・・・さあ、なんのことでしょうねえ?」

俺はニコニコ笑顔でそう答えた。




これにて内紛は終わりです。


それから、ユースギル王子について、名前を間違ってユースデルと書いていたのを今日やっと気付きました。

実は下書き時点でよく間違ってしまうのですが、こんなにめちゃくちゃユースデルと間違って書いていたとは思わず(汗)

今日書き直しました。申し訳ありませんでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ