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116、悪魔は行方不明ー計画の真相

マスティフ視点です。

グラエム王は驚きで固まっていた。

いや、グラエム王だけでなくオーランド王子もアシュア・カルディル・ティーガも驚いていた。



誰もまさかブラックドラゴンをじいさん1人で倒せるなど思わなかったし、イナゴの王アバドンを俺とレフィの2人で倒せるとは思ってなかったのだろう。

あれ?そういえばグラエム王の護衛の騎士がさっきまでいたのにいない。

ドラゴンとじいさんが戦っている間に逃げたな?


とはいえ、俺とレフィはかなり攻撃を受けてしまった。

鎧を着ていたところは鎧がボロボロになったぐらいですんだが、鎧を着てなかった二の腕や手や頭や顔に太もも、腰なんかは喰われまくって手なんて骨まで見えてる。

血はダラダラ出ているし、大剣を支えに立ってるだけで全身が痛い。

俺は黒の固めの鎧を着ていたからそれぐらいですんだが、俺より軽装のレフィはさらにひどくて全身血だらけだ。

「レ、レフィ!しっかり!」

アシュアが慌てて支えていたけど、意識が朦朧と仕掛けてる。

かなりヤバい。


「大丈夫か?マスティフにレフィ。」

じいさんはさっさと俺たちに駆け寄ってきた。

ブラックドラゴンを倒したというのになんでそんなにピンピンしてるんだよ・・・。


『我が前の者に癒しの光を、全てを治せ、ハイヒール』


じいさんは光魔法で俺たちの傷を治してくれた。

レフィ、俺の順にかけてもらって、喰われまくった全身は光に包まれてあっという間に傷は塞がった。

「傷は治したが、失った血と魔力は治せん。しんどいじゃろうからしばらく休んでるとええ。」

俺とレフィは謁見の間の壁に寄りかかって座らせてもらった。

貧血でクラクラするし、魔力のない状態特有の内側から来るズシッとしたしんどさがあるが、成り行きを見守ることはできた。



グラエム王はワナワナと怒りに震えていた。


「・・・オーランド!これはどういうことだ!?大事な駒が倒されたではないか!?」

「・・・す、すいません父上・・・。」

うん?なんだ?

さっきと違って、オーランド王子が謝るなんておかしくないか・・・?

と、オーランド王子はキッとじいさんを睨むとツカツカとじいさんに歩み寄った。

「どういうことだ!?マリルクロウ!・・・俺は確かに"お前とドラゴンが戦うように仕向けてやるから、殺されろ"と言ったはずだ!」

は!?

グラエム王とオーランド王子とじいさん以外はえ!?という顔してオーランド王子を見た。

さっきまでの喋り方と全然違うじゃねえか!

もしかしてこれが本当のオーランド王子の喋り方なのか?

じいさんはなにを考えているのか、ニコニコ笑ったままだ。


「さあ・・・そんなこと言われましたかのう?」

じいさんはとぼけたようなことを言って首を捻る仕草をした。

ものすごくわざとらしい仕草に、オーランド王子はイラッとしている。

「せっかくお前を「計画」のついでに殺せると思ったのに・・・!」

すごくとんでもないことを言っているぞ、王子。


「オーランド、本当にお前はマリルクロウを使役しているのか?お前が我らが宿敵を殺すチャンスだと言ったから、余はドラゴンまで出してやったのに・・・。」

「すいません父上。ですがマリルクロウは使役できています。」

オーランド王子はグラエム王に頭を下げた。



「え?・・・ちょ、ちょっと待て!父上にオーランド!2人とも・・・争っていたのではないのか!?それに使役とはなんだ!?」

グラエム王とオーランド王子の会話にさすがにおかしいと思ったのか、ユースギル王子が声をあげた。

グラエム王とオーランド王子はチラッとユースギル王子に視線を向けると、2人とも鼻で笑った。


「はっ、なにを言うユースギル。余らは「計画」のために争っていたのだ。」

「ふっ、兄さんは相変わらず頭が弱いですね。」

「な、な、なんだと!?」

オーランド王子はニヤニヤしながらユースギル王子に近寄った。

その不気味な笑顔にユースデル王子はたじろいだ。


「はははっ、兄さんに教えてあげますよ。この内紛は全て、悪魔教の御告げから来た「計画」だったんですよ。」

「あ、悪魔教だと・・・?悪魔教は確か・・・そこにいるマリルクロウによって壊滅したのではないのか!?」

「いいえ。悪魔教は隠れてずっと存在していました。そして父上は信者でした。」

「父上が!?そんな馬鹿な!?」

ユースギル王子が慌ててグラエム王に視線を向けると、グラエム王はさも当たり前のように肯定した。

「そうだ。余は悪魔教の信者として長年幹部たちに仕えてきた。そして悪魔教より「王族から人間を使役できる者を産み出せ」と言われていた。最初は「虫」次は「鳥」と、失敗続きだったが、ようやく「人間」が産まれた。それがオーランドだったのだ。」

ユースギル王子は失敗扱いされたことよりも、オーランド王子が使役魔法持ちであったことに信じられないという顔で、オーランド王子を見た。


「お前・・・使役魔法は使えないと・・・」

「父上の判断で伏せられていたんですよ。楽しかったですよ、「死ね」と言えば誰でも笑顔で命を絶っていくんで。あの頃は何人メイドや執事が死んだかわからないですね。」

俺はそれを聞いて今更ながら使役魔法にかかっていたことを思うもゾッとした。

多分死んだメイドや執事は当たり前のようになんの疑問も持たずに死んでいったんだろう。

死んでいった者たちは苦しまないとは思うが、恐ろしい。


「父上は俺が何人も殺していることを知って、悪魔教に相応しいと入れてくれたんです。自分が信者を辞める後任として俺を推薦してくれて、俺は悪魔教の虜になって頑張って幹部"セカンド"までなったんですよ。」

そういえばユウジンが幹部だと言ってたな。本当だったみたいだ。

「そして"セカンド"になって初めて、悪魔教の最高指導者様より御告げをもらいました。「人間の国を混沌とさせ、たくさんの魂を献上しろ」と。だから他の幹部と父上と話し合ってこの国を混沌とさせるために内紛させる「計画」を考えついたのです。」

「そ、そんな御告げとかいうので・・・な、内紛をしたというのか!?」

「そうです。父上は何年もかけて他国侵略を掲げつつ、軍事力を上げるという名目で魔物と人を掛け合わせる実験も行いました。もちろん、俺も協力しましたよ。魔物(・・)()が必要でしたからね。でもこの実験は最終的に国内に強くなった魔物をばら蒔いて人々を殺しまくってもらうためのものでしたがね。」

『!?そ、そんな・・・!?』

軍事力増強と思っていたティーガが驚いてそんな声を呟いていた。


「ああ、そう言えばティーガがいたな。お前のおかげで実験が進んだよ。結果的には父上がドラゴンを使役したことで、ドラゴンに国内を蹂躙させたらよくなったから、実験は頓挫したけどティーガはずっと実験を続けていたみたいだな?父上と俺が関わっていることを隠すためにカルディルに実験場を破壊するように指示したのは正解だったかな?」

なるほど、カルディルがアウルサで実験場を破壊したいと言っていたのは使役魔法で指示していたのか。


オーランド王子はユースギル王子の方を向いた。

「父上が他国侵略を掲げた頃に俺の方は、使役した人を使って父上と2人の兄さんの評判を少しずつ下げながら、俺の評判を上げるようにしたんですよ。優しくて正義感があって人望がある、いかにも悪王に反旗を翻るような人物に自分を仕立てあげた。そして機を見て、反旗を翻したのです。おかげで大きな内紛になって混沌としてくれたし、人々もいっぱい死んでくれました。領主たちを使役して一緒に戦わせてここまで大規模になって、悪魔様も喜んでおられると思いますよ。」

ゾッとするような笑顔でクククと笑っていた。


「あ、そう。因みにこのあとは父上が降伏して俺が王となって悪魔教の国として栄える予定ですよ。」

「は!?ふざけんな!王は俺がなるはずだ!」

「悪魔教でもないのに王になってもしょうがないでしょう?兄さんはたまたま長男に産まれたから一応世継ぎってことになっただけで父上は毛頭、継がせる気はなかったのですよ。ねえ、父上?」

グラエム王はニヤリと笑った。

それは肯定の意味に見えた。

「そ、そんな・・・!」

ユースギル王子は顔面蒼白になってヨロヨロと膝をついた。



「・・・ですが、解せないこともあります。」

そう言って、オーランド王子は真剣な顔をして、グラエム王を見た。

「父上、この「計画」は後3年は長引かせる予定だったはず。サビザにいた騎士兵士をキュベレに向かわせる予定ではなかったし、兄さんをキュベレに送って城を手薄にする算段ではなかったはずです。今まで台本通りだったではないですか?どうされたのです?」


「それについてなのだがな・・・オーランドよ。」

グラエム王はものすごく真剣な顔になった。



「・・・悪魔様(・・・)が余の元に来られたのだ。」



「・・・は?」


オーランド王子はぽかんとしたが、俺たち全員もぽかんとした。





書いてて書き抜かりがないか自分でもわからなくなりました。


ピンと来た人もいるでしょうが、グラエム王はおかしくなってません。

さーて、次の話は急展開だよー!

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