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113、悪魔は行方不明ー2つの決戦

「ゴォアアアアアァァッッ!!」



ブラックドラゴンは姿を現すなり、天に向かって吠えた。

その咆哮のせいで謁見の間の壁はビキビキとヒビが入っていた。

体長8メートルほどで全身に鎧のように真っ黒な鱗が覆われていて、頭に曲がりくねった大きな角が2本に真っ赤な牙が口からのぞかせている。

背中に巨大なコウモリのような翼をもち、それがはためくだけでものすごい風が巻き起こった。


真っ赤な目が、ぎょろりとこちらを見た。

姿を現しただけで威圧を感じていたのに、こちらを見ただけでものすごい威圧が俺たちを襲った。

「ひいいいっ!?」「うわああぁっ!?」

ついてきてくれていた騎士たちはたちまちのまれて真っ白い顔色でガタガタ震えだして逃げるように我先にと謁見の間から出てってしまった。

俺たちも震えて全く動けない。

特に俺たちの中でレベルの低いアシュアは倒れそうなくらいガタガタ震えて歯もガチガチ鳴らしてレフィの腕にしがみついている。

レフィもいつもの無表情だが顔色は真っ青で手も震えているのを必死に抑えようとしている。

俺も手足が震えて竦み上がっているが、なんとか大剣を掴んでいつでも戦えるよう準備している。

オーランド王子はあっという間に顔色を悪くしながらじいさんの後ろに隠れてしまって、カルディルは震えて動けないようだ。

ティーガはそういった感覚が死者なので機能していないのか、何でもない顔をしている。


そしてじいさんは、ものすごい威圧を浴びているに関わらず震えることもなくニコニコ笑っている。

さすがじいさん、この威圧を浴びて笑顔だなんて、改めて化け物じみてる・・・。


「ふはははっ!どうだオーランド!このドラゴンが使役できたのだよ!これならば、侵略など簡単にできるぞ。どこの国にドラゴンを倒せる戦力があろうか!?」

「し、侵略などやめてください!」

「やめてほしくばこのドラゴンを倒すんだな。そんなことができる人間がいるか?いくら英雄と称されるマリルクロウとて、無理だろうな。」

グラエム王はニヤニヤ笑いながらそう言ってきた。


じいさんは30代の時に、ドラゴンを退治している。

だがそのドラゴンはドラゴンの中でも下位と言われているグリーンドラゴンだ。

だがこのブラックドラゴンは上位と言われていて、しかも数が少ない稀少種とも言われている。

しかもじいさんは30代ほどの体力がないと本人が言うくらいで、化け物じみた強さも全盛期の20~30代と比べると落ちてきているそうだ。


じいさん、大丈夫なんだろうか?

俺の心配をよそに、じいさんは呑気に笑っていた。


『・・・こんな矮小な人間どもを殺すために我を呼ぶとは、恥知らずが。』

!?ドラゴンが喋った!?

ドラゴンはギロリとグラエム王を睨んでいる。

使役されているのに文句言えるのか?

「うるさいぞ。余に使役されているのだから余の命令を聞け。」

『使役魔法がなかったらお前など我が食いちぎってやるものを・・・。』

どうやら高レベルだと意識は使役できないのか?

「ふん!できるものならやってみろ!できないだろう?くくくっ!できないなら余の命令に従え。・・・さあ、さっさとこいつらを殺せ。」

『・・・・・・チッ』


ドラゴンは舌打ちするとこちらに顔を向けた。

『矮小な人間どもよ。お前たちになんの恨みもないが、せめて我に殺される名誉を与えてやる。』

「・・・ほうほう、残念じゃがわしらは死ぬつもりはない。」

じいさんはニコニコ笑ってそう返事した。

「逆に、おぬしの言う矮小な人間に倒される名誉をわしが与えてやろうかのう。」

それを聞いてドラゴンは大きく笑いだした。

『ガハハハハッ!!面白いことをいう人間だ。我が人間などに負けるわけがないだろう?・・・まあ、お前は我の威圧が効いていないし、底知れぬ力を感じるが、所詮は人間。その小さな器でなにができる!?』

「器が小さかろうが大きかろうが力は力。おぬしを倒す力くらいならあろう。」

そう言ってじいさんは威圧を全開にした。


肌にビリビリくる感覚は我がじいさんながら恐ろしく感じる。

俺は幾度となくじいさんの威圧を浴びてきたからだいぶマシだが、オーランド王子を始めカルディル・アシュア・レフィは顔色を悪くしてアシュアは泣きそうになっている。

因みにティーガはやはり何食わぬ顔で立っている。


『・・・ほう、人間。お前は面白そうだ。』

ドラゴンはじいさんの威圧を感じてニヤアと大きな口元を緩めた。





「・・・父上!これはどういうことです!?」




と、後方からそんな声が響いた。


その声につられて後ろを振り返ると、謁見の間の入り口に1人の男が立っていた。


30歳くらいの長くのびた赤い髪に赤目で、目付きからなにからグラエム王にそっくりだ。

少し汚れているがとても豪華な服を着ていて、左手にはリザードマンによく似た魔物の首を持っている。

男はキッと殺人鬼のような鋭い目付きで俺たちを見ていた。


「・・・おお、ユースギル。戻ったか。」

グラエム王は何でもない顔で男に話しかけた。

ユースギル?

確か・・・第一王子がそんな名前だったな!

ということは、グラエム王とそっくりのこいつがオーランド王子の兄のユースギル王子か!?


ユースギル王子はキュベレを攻めていたんじゃないのか!?


「キュベレは攻め落とすことができ、急ぎアバドンで帰ってきました。キュベレを任されていたと思われる敵将も討ち取ってきました。」

そう言ってユースギルは持っていたリザードマンのような魔物の首を投げた。

首はゴロンと転がってオーランド王子の足にぶつかった。

敵将がこのリザードマン?

なにを言ってるんだ?

キュベレは確かヘンリスがいたはずだが・・・。


オーランド王子はその首を見てとても驚いていた。

なんだ?なんでそんなに驚いているんだ?


「ユースギル、ご苦労だった。ついでだ、こいつらを始末するのを手伝ってくれぬか?」

「急いで帰ってきたので疲れているんですが・・・んまあ、ついでだし構いませんよ。出てこい、アバドン。」

そう言うと、ユースギル王子の足元から大量のイナゴが飛び出してきて、それが空中で塊になって奇っ怪な魔物の姿へと変わった。

体長3メートルほどで獅子の頭に全身鱗、ドラゴンの翼を持ち熊の足に体から火と煙が出ている姿・・・。

噂に聞くイナゴの王アバドンの姿だ。


アバドンも姿を現しただけで、ドラゴンほどではないが強い威圧を放っている。

先にドラゴンとじいさんの強烈な威圧を感じていたおかげか、そんなに苦しくない。

背中に虫が這い回るようなゾワリとした感覚はあるが、耐えられないほどではない。


「・・・わしはドラゴンを相手せねばならんからのう。マスティフ・レフィ、アバドンの相手はおぬしたちがするんじゃ。」

じいさんがとんでもないことを言ってきた。

「はあ!?じいさん正気か!?じいさん1人で大丈夫かよ!?つうか、俺たちがアバドンの相手なんて・・・!?」

「わしが鍛えたおぬしたちならアバドンを倒せるはずじゃ。わしもなんとかドラゴンぐらいは倒せるじゃろう。力は衰えたかもしれんが、経験や技でなんとかなるもんじゃ。」

ええっ、大丈夫かよ!?

じいさんはニコニコしながらも目は真剣だ。

マジなのかよ!?


レフィをチラッと見ると、突然の指名に驚いているようだったがそれで威圧が吹っ飛んだみたいで無表情ながら真剣な目付きになって、アバドンに向いてナイフを構えた。

レフィがヤル気なら、男の俺がヤル気にならなくてどうする!

よし!俺もいっちょやってみようじゃねえか。

戦えるのかどうかわからないが、じいさんが言うならやってやるぜ!

俺はアバドンに向いて大剣を抜いて構えた。


「申し訳ないがアバドン、ドラゴンとじいさんが戦いがあるから邪魔すんなよ。」

俺はアバドンに向けて大剣を大きく振るい、そう声をかけた。

『ふん、また人間の相手か。本当に、くだらないことで呼ぶものだ。』

アバドンは獅子の顔は歪めてユースギル王子を睨んだ。

なんだ?どうやらアバドンも意識は使役できていないのか。

「さっさと殺れクソ虫。」

『・・・。』

アバドンはユースギル王子を睨みながらもこちらを向いた。


『俺はイナゴの王アバドンなり。誠に不本意だが人間どもの相手をしてやる。』

俺はアバドンの宣言を聞きながら、オーランド王子とカルディルとアシュアとティーガを謁見の間の端に移動するようにジェスチャーした。

4人はその場にいては戦いの邪魔になるのがすぐわかったようで、頷くとサササッと謁見の間の出入り口の端に避けた。



こうしてブラックドラゴン・マリルクロウ戦と、アバドン・マスティフレフィ戦が始まった。




はい、ということで、キュベレ戦の結果はユースデル王子の勝利となりました。

いくら成功体とはいえ、ランクS寄りのAには勝てなかったということです。

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