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101、悪魔は館に侵入する

夜。



俺たちは宿屋を出て、「奥の館」に向かった。

クロ助は、カルディルと部下たちには危険かもしれないので部屋に置いてきたと説明して、俺の影の中にダイブさせている。

「奥の館」はアウルサの町を出て10分の「山の館」とは違って、アウルサの町を出て2時間かかってやっとたどり着いた。

石畳みが続いていたが両脇の生け垣は鬱蒼と茂っていて外灯すらなかったので、光魔法のライトで辺りを照らして進んだ。

「!?・・・ここだ。ここが「奥の館」だ。」

地図を見ながら進んでいたカルディルは門から少し手前のところで立ち止まって門番の様子を見ている。

門番は兵士のようで兵士服を着て槍をそれぞれ持っていて門の左右に2人いるが、だるそうにしゃべっていた。

まあ、こんな夜に誰か来るとは思ってもいない様子だな。


「「奥の館」は王族の別宅だから多くの騎士兵士が警備にあたっているはず。見つかって捕まるだけならまだいいが、王子派とバレると情報隠蔽のために殺される可能性もある。それぞれの行動に気を付けて侵入するぞ。」

皆、静かに頷いた。

因みに隠蔽魔法で存在を隠蔽したら楽なんだが、カルディルらに隠蔽魔法を内緒にしているのでこうして侵入することになったのだ。


「あの門番は私に任せて。」

カルディルの部下マドリーンはそう言うと、弓を構えて矢を2本同時に門番に向けて放った。

「ぐはっ」「ぎゃっ」

門番2人は喉に矢が刺さって小さく悲鳴のような声をあげて倒れた。

「おお、すごいな。2人とも喉に当たるなんて。」

「ありがとう。冒険者やってて鍛えられたから。」

マスティフが褒めると、ふふっとマドリーンは照れて微笑んだ。


門に近づいてライトを消して、慎重に開けるが今のところ館を警備している騎士兵士は誰も来ていないのを見ると、今のところバレてはいないか。

門から玄関までのスロープに何人か兵士がいたが、みんな岩に座ってしゃべったりなんか飲んでいたりしている。

もしかして酒か?

まあ、こんな山奥に侵入者なんているわけないかと気が緩む気持ちもわかるな。

「マドリーンに先を越されたけど、今度は俺たちに任せてくれ。」

部下ノースはそう言うとニコリルと武器を構えてスロープから左右にそれた。

ノースはしゃべっている兵士の背後に回り込んで剣で背中に切りかかり、ニコリルは酒を飲んでいる兵士の背後から槍で首を突いた。

「ぎゃあっ!?」「ぐわっ」

「な、なんだ!?」

突然のことに驚いて動けない兵士たちを、2人は次々切ったり突いたりした。

そしてほとんど声を出されることなく倒してしまった。


「すごく動きに無駄がなくて早くて、あっという間ですね。」

「へへっ、これでもランクCだからな。」

俺が褒めると胸を張ってノースが答えた。

え!?俺と同じC!?

俺はあんな動きできないぞ。


玄関前は誰もいなかったが鍵がかかっていたので壁に沿って建物の裏側に行きながら開いている窓がないか見ていくと、鍵がかかっていない窓があったのでそこから中に入った。

部屋は倉庫のようで、色々な物が乱雑に置かれていてそれらを慎重に避けながらドアを少し開けて廊下の様子をカルディルは見た。

「ふむ、廊下には誰も見当たらないか・・・。だが、地下への階段を早いところ見つけないと見つかっちまうかもな。」


サーチによると、ここから近くの部屋に地下への隠し階段があるんだがなあ。

ここでサーチの説明するのも面倒くさいし、さりげなく誘導するか。


「とりあえず無人の部屋に移動しながら階段を探す感じでどうですか?」

「まあ、ここでずっといるよりはいいか。」

廊下に恐る恐る出ると、俺はサーチで誰もいないのがわかっている右の部屋のドアに耳をつけて「この部屋、誰もいませんよ。」と声をかけてドアを開けて中に移動した。

そして部屋を見て回って、また廊下に出て隣の部屋のドアに耳をつけてを繰り返し、3回目くらいで目的の部屋に移動した。


応接室のような部屋で、壁に立つ大きな棚が1つあり、その棚の向こう側に階段があるのがサーチでわかったのだが、棚をさりげなく動かそうとしたが重くて動かない。

行けるようにするにはどうやらスイッチかなにかで棚を動かさないといけないのか?

魔力を多めにサーチにのせてみるか。


・・・うーん・・・!?あった!?


棚の上にスイッチがあるのがわかった。

みんな他のところを見ている隙に、棚の上を触ってでっぱりを見つけ、それを押すと・・・。

ゴゴゴという音がして、棚がひとりでに横に移動して、階段が現れた。


「あ、ありましたよ。」

みんな棚が動いた時点で見てきていて、まさかの階段があったので驚いていた。

「ユ、ユウジン!?見つけたのか!?」

「あ、はい。棚をなんとなく押したら勝手に動きました。」

「よくやった!ユウジン!よし、行こうぜ!」

カルディルと部下は喜んで階段を降りだした。


「・・・もしかして、探索魔法か?」

マスティフが小声で話しかけてきた。

「ええ、この部屋に誘導するのも疲れますね。」

「え!?あ、そうか。ユウジンは門に入る前から館のどこに階段があるかわかるもんな。それでさりげなくここに誘導したのか。」

「そうです。因みにすべての警備兵士の位置やメイド、執事の位置もわかってますよ。」

「うわぁっ、すげえなあ。んじゃあ、この先どうなってるかもわかってるのか?」

「・・・まあ、だいたいは。実際に目にしないとわからないこともありますけど・・・ちょっと、心の準備は必要と思いますよ。」

「・・・え?」


マスティフは察して少し顔色を悪くした。




階段はしばらく下へ続いていて、ライトで照らしながら降りてすぐのところに鍵のかかったドアがあった。

もちろん鍵など持ってなかったので、話し合った結果どうせ破壊を命じられているんだからと木造だったのでドアをぶち破ることになった。

「ここは俺に任せろ。」

カルディルは愛用のバトルアックスを構えるとドアに力まかせに叩きつけるように振るってドアはものすごい音を立てて破壊された。

この音で誰かにバレそうだが・・・。


ドアの向こうは少し広めな空間となっていて、左・正面・右の3方向にほら穴が開いていた。

どのほら穴も先が真っ暗で見えない。

「どうする?どの穴に行ってみる?」

マスティフはさりげなく皆に聞くフリをして俺に聞いてきた。


サーチでは、左はベッドやテーブルのあるちょっとした休憩所、正面はなにかの薬品が並んでいる部屋で、右は実験場に続いているようだ。

俺はカルディルらに見えないようにマスティフに向けて小さく右を指した。


「とりあえず右から行ってみるか?」

「違ってたら戻ってきたらいいんですし、右でいいんじゃないですか?」

「そうだな。そうするか。」

マスティフのさりげない誘導に俺も乗って、カルディルは気付かず右にいくことにした。


ライトで照らしながら右に進んだが、ほら穴は少し狭く1人ずつ並んで進んだ。

結構な距離があって、10分ほど歩きちょっと下り坂になったりしたほら穴を進むうちになにかの声が聞こえてきた。

「?・・・この声は・・・魔物か?」

唸り声のような吠えた声のようなものが聞こえてきて、ほら穴の先が見えてきた。

「ここは・・・?」


大きめの部屋の両脇に檻がびっしり並んでいて、中に1匹ずつ様々な魔物が入っていた。

死んだ魔物の檻もあったりしたが、ほとんどの魔物はこちらを見て威嚇してきていた。

「も、もしかして、実験する前の魔物を入れとく部屋かしら?」

「こんなに魔物がたくさんいたら、檻があっても怖いな・・・。」

戸惑ったマドリーンが呟き、ノースがそれに答えた。

奥にも魔物の檻が続いていて、檻に近づかないように気を付けながら俺たちは奥に進んだ。


奥にもずっと檻が続いていたが、中は空だった。

・・・恐らくここに実験前の人間が入っていたのだろう。



俺たちはさらに奥にほら穴があったので、奥に進んだ。



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