プロローグ
よろしくお願いします。
ある空のはるか上のほう。
雲の上。
小さな男の子が寝転がって下を覗き込んでいた。
下にはせわしなく生きている人間たちの姿があり、それを品定めしていた。
「ちょっと~!決まった~!?」
どこからともなく小さな女の子がふわりと降りてきた。
どうやらちょっとご立腹のようだ。
「ちょっと待って、まだあと1人が決まらないんだ。」
「そう言って何十年経つと思ってんのよ!早く早く!」
「そうやって君がイライラせわしないから、君が管理している地球の人間もせわしなく生きてるんじゃないかなあ?もっとゆったりしようよ?」
男の子がそう呑気に言うと、女の子は一層怒りだした。
「あんたがさっさと決めてくれたら私のイライラが減るのよ!ああ、ほら!さっさと決めなさい!!」
女の子は男の子の頭を掴むとグイッと雲の下に押し込んだ。
「はわわわ~!落ちちゃう落ちちゃう~!!」
「今すぐ決めないとホントに落とすわよ!!」
「ふえぇ~~!?」
男の子が涙目で下を見ると、ある青年に目が止まった。
日本のある町の繁華街を友人と歩く青年。
ふわふわの茶色の頭に茶色の目、常にニコニコ笑顔をたたえたその姿は善人その者であった。
「あ――――――!!いた!!あの子にする!!」
「え!?ホントいたの!?」
男の子の頭を引き剥がし、女の子が確認すると、女の子は途端に硬直した。
そして一気に冷や汗が吹き出て、顔を真っ青にした。
しかし女の子のそんな様子に気付かず喜んでいた。
「いや~!よかったよかった!これで全員揃った。」
「・・・あんた、マジであの子にするの・・・?」
「うん!だって僕がずっと探していた『善人そうな人』、そのままじゃない?きっと優しいだろうなあ。」
男の子はニコニコ笑顔でそう答えた。
「名前は・・・阿久来優人だって!ほら!名前からして優しそうな人じゃないか!いや~、ここまで粘ってよかったよ。」
テンションが高くなった男の子の様子に、女の子は呆れていた。
「ホント、あんたって見る目ないわ。今証明されたわ。」
「ん?何か言った?」
「ううん。あんたが選んだんだから、どうなっても知らないからね。」
「?」
ニコニコルンルンな男の子と、そんな男の子を哀れな目で見る女の子はしばらくして姿を消した。