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事実は小説よりも

作者: 儘野 玲

 明日はいいことがあるかもしれない。


 そんな風に考えながら漠然と時を過ごし、気がつけば二十年以上の時間が過ぎていた。


 振り返ってみれば何もない。そんな空虚な人生だった。


 いつか何かのきっかけで、自分の人生に劇的な何かが訪れるものだと信じてやまなかった。けれど現実はそう甘くない。


 事実は小説よりも奇なり。なんて言葉もあるが、言わせてもらえばそんなものは真っ赤な嘘だ。


 運命だと思えるような出会いだったり、自分しか味わったことのない感動だったり、そう言ったことがなかったわけではない。


 だが、それもその場だけのことだった。数日経って思えば、そのどれもが陳腐で味気のないことだと思えてくる。


 いつからだろうか。物語を読んだり見たりすると、気分が落ち込むようになった。


 例えば、小説を読むとする。その最中は、山あり谷ありのストーリーに引き込まれ存分に楽しめる。しかし、問題は読み終えた後だ。


 波乱万丈なそのストーリーと、山なし谷なしの自分の人生を比べ、どうしようもなく虚無感に襲われるのだ。


 言わば、創作物に嫉妬しているようなものだ。


 そしてそれが悔しくて、自分も何かを為さねば。そんなふうに考える。けれど、そんな漠然とした何かを成し得ることなどなく、数日すればそんな考えも霧消して、またしても、明日はいいことがあるかもしれないなどと都合の良いことを考え始めるのだ。


 これを書き出す一時間ほど前、とても素晴らしい映画を見た。そして何かを為さねばと筆を取り、今この駄文を書き連ねている。


 もしかしたらこれを為すことで、何か変化があるかもしれないと思ってのことだ。


 しかし、きっとこのことも数日経てば陳腐なことに成り下がるのだろう。


 だからその時はまた言うのだ。


 振り返ってみれば何もない。空虚な人生だった。と……

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