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プラナリア  作者: りんごちゃん
鬼華の残影
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フレグラ2

八城は紬を連れ、午後一番から訓練生三人と共に実地訓練に入った。

その訓練から一時間。

その場所に八城の姿は無く、次いで言うのであれば桃の姿も無かった。

「美月、もう少し踏み込むべき、中途半端は一番危険」

紬は浅く斬り込んだ美月のフォローにすかさず入り、奴らのうなじと後頭部の境目に小太刀を突き刺し押し込んだ。

奴らの体液が小太刀を伝い、手に触れる直前に紬は勢い良く引き抜くと同時にその身体を蹴り飛ばし、次の一体に向けて構えを取る。

蹴り飛ばした一体は美月の脇を転がりながら、体液を地面に撒き散らし、そのまま二度と動く事は無い。

「美月、次を見る」

一瞬、紬の技術に見蕩れていた美月は離れていた意識を自らの元にたぐり寄せた。

「りょっ、了解です!」

その強さを誇る事は無い。

迅速かつ確実に動きを止める事だけを念頭においた紬の技術は、今この場において何よりも心強い。

「紬さんは、やっぱり強いですね」

「この位は生き残ればすぐなる。雛、次」

戦闘中の紬はいつのもまして表情が乏しく口数も少ない。

雛は紬に呼ばれるままに刀を取る。

やれる、私はやれる、大丈夫あの時みたいにならない。

雛は自分の中で鎌首をもたげる恐怖心に蓋をして刀を振るう。

大丈夫、訓練通り、半円を描いて腰から体重を前にだす、腕力だけで振らない。

一つ一つの動作を自分に言い聞かせる雛の一刀は目の前の一体の首を跳ね飛ばした。

「……まだ痛む?」

紬は雛の動きにぎこちなさを見つけ気遣うように尋ねた。

服の上からでは見えないが、戦い方で分かっている。雛は腹部の傷を抑えながら、時折その走る痛みに顔を歪ませる。

「……すみま……せん」

雛は痛みと共に以前を思いだす。

奴らの群れに巻かれ隊員の殆どを壊滅された時の事。

雛は隊長の言う事をよく聞いていた。

だが、その指示で、その殆どが食われてしまった。

生き残ったのは雛と隊長だけ。

どちらもボロボロの状態で111番街区へと帰還した。

隊長に至っては重傷を負って、別の番街区へ移送されてしまった。

「いい、雛戦えないなら下がって」

「だっ……だいじょ……ぶです」

「ならいい、雛次に行く」

迫る一体を紬は小太刀を一線、呼吸をする様に倒し、美月や雛が戦い易い形に誘導する。

「雛ちゃん!そっちお願い!」

「うん……」

美月が雛に声を掛けるがいつもの様な動きではない。

もたつく二人の背中を見ながら、紬はレッグホルスターに手を伸ばす。

正直この場面で銃火機を使うつもりはなかった。

だが如何せん数が多い。

「八城君は何してる」

紬はこの状況を作り出した人物の名前を口に出し、最悪の場合はこの二人は111番街区へ戻す事を心に決めて更に前に出た

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