空白
「おいおい……随分私たちは好かれてんなぁ」
「ですね〜どうしましょう」
麗が心を決めた頃、時雨と桜は途方に暮れていた。
緊急避難した先のビルの屋上に二人は休憩中のOLのように、道路を見下ろしていた。
「どう考えても出て行けなくなっちゃいましたね」
「ひでえ有様だぜ」
33番街区から44番街区への移動中二人は大規模な群れに遭遇していた。
遭遇した群れは瞬く間に二人を包囲。
そして二人はその場凌ぎの為に、篭城を決めた。
だがそれが正解だったかと聞かれたら怪しい所だろう。
このビルの周りを取り囲むのは、奴らの群れ。
四階にも奴らが侵入して来るのは時間の問題。
だが二人に焦りは無かった。それはこの状況が、この二人だからというのが大きい。
はっきり言ってこの状況、脱出は出来ないが、かろうじて生き残る事だけは出来る。
「じゃあそろそろ移動すっか」
「そうですね」
これで何度目の移動になるのか、二人は隣の屋上へ飛び移り、更に隣へ飛び移っていく。だが、奴らの移動のスピードが早い。
結局違うビルも四階部分まで、奴らが押し寄せ、脱出が出来ない。
「パパラッチだってここまで露骨じゃねえぞ!」
「本当に困りましたね、どうしましょうか……」
そうして二人は休憩中のOLの様にまた道路を見下ろす。
「また行けなくなっちゃいましたね」
「クソども!握手会は待機列を乱さないのがファンの常識だろうが!」
時雨はこの状況に心底辟易していた。
進展も無くかと言ってやられるわけでもない。永遠に繰り返される鬼ごっこだ。
「私が行ってやる!」
そう言って、そのビル内部へ続く扉を開こうとする。
「無理です!死んじゃいますって!やめて下さい〜よ〜」
「うるっせえ!腰にしがみつくな!」
「行ったら死んじゃいますよ!」
「上等じゃねえか!やれるもんならやってみろ!」
「そうならない為に逃げましょうよ!」
そんな話をしていると四階屋上に続く扉が内側から叩かれる。
移動の合図だ。
「っち!もう来やがったぞ!」
「ほら行きますよ!」
桜は時雨を連れて、何度目か分からない移動をまた始めようとした直後その異変は起きた。
「あれ?何か奴らの数少なくなってませんか?」
それは唐突に訪れた変化であり、次なる問題の訪れであったことを二人は知る由もない。




