猜疑3
何をやっているのかと麗は苛立ち混じりにベッドに寝転んだ。
当然だ、八城に助けられた時はあんなにも余裕があった筈なのに。
時間が経った今はこんなにも余裕が無い。
だから訳も分からず八城に詰め寄ってしまった。もう溢れた激情を止める事が出来なかった。
秘密にされて居る事が、嫌だった。
自分が蚊帳の外なのが嫌だった。
そして蚊帳の外で何も知らぬまま死んで行った自分の隊員達を思えば自然と八城を掴み上げていた。
切掛けはなんだったか?
分かっている。
紬、友人らしい友人。4番街区に居たその友人が悲しい顔をしていた。
何も知らない私は、どうする事も出来なかった。仕舞いには徽章を見せられて何も言えなくなった。
「格好悪いな……私」
自分が格好良いなど思った事は無い。
だがそれでも恥じ入る事はしていないと過信していた。
強気に振る舞っていても結局はここが限界だ。
「なに……泣いてるんだろ……馬鹿みたい……」
自然と情けない自分に涙が溢れる。
隊員にこんな姿は見せる事は出来ない。だから自分の部屋に閉じ籠り声を殺して泣く。
それが隊長に許された悲しみ方だと麗は思っている。
守れなかった隊員達の顔がありありと浮んでは消える。
今立ち止まる訳にいかない。
いや麗は隊長になったその時からもう立ち止まる事は許されない。
自分が死ぬか、この世界が元に戻るまで、立ち止まる事など許されよう筈が無い。
そう思いながら窓から見える月を眺めていると内線に連絡が入る。
それは柏木議長からの内線だ。
「君の提案受けようと思う。詳しい話は明日の会議の時にでも話そうか」
「ありがとう御座います」
麗がそう返事をすると内線は一方的に切られてしまった。
もう麗は止まらない。
もう、止まれないのだ。
背中に背負うための隊長という肩書きが麗に止まる事を良しとしない。
例えそれが、世界と共に歪んでいる答えだと知っていても
麗は前に進んで行く。




