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プラナリア  作者: りんごちゃん
背水の牙城
385/386

信頼2

「今分かった事実はただ一つ、桜は変わっちまった。それは誰もが感じるところで、私は今の桜が気に食わねえつうそれだけだ。それから今のままの八番隊のままなら私は八番隊から降りる、くだらねえ奴のせいで死にたかねえからな」

誰もがいつも通りの時雨の性格難で聴き逃しそうになるが、八城は聞き逃さなかった。

「おいおい!まてまて八番隊をやめて何処に行くつもりなんだ?」

「そんとんきゃ大将のところで世話になるから、よろしく頼むぜ大将、元同じ部隊のよしみでよう」

八城としては気心の知れた時雨であれば大歓迎だが、八番隊を纏めるマリアとしたら今の時雨の脱退など悪夢でしかない。

それに、よくよく考えてみれば時雨などが来たらアイドルゴリラを御しきれるほど研究明けの八城も元気ではないのだ。

「お断りだ、勘弁してくれ。ようやく俺の言う事を聞く奴らが揃ったのにお前が来たら、ウチの隊員が変な影響を受けかねないからな、それに今の隊長はマリアだ、あんまり虐めてやるなよ」

「私だって虐めたかねえよ、だけどなぁ私だって無駄に死にたかねえんだ。私は大将に救われた身だが、それでもあの時みてえな、一生に一度のラッキーなんて早々来るもんじゃねえ、折角拾った命を粗末にしちまう生き方はしたかねえんだよ。それとも大将はコッチがヤバくなったらまた助けてくれんのか?」

「大将って、もうお前の大将は俺じゃないだろ、今の大将を大切にてやれ」

「馬鹿言っちゃいけねえ、金髪は隊長だ。私の大将はあの時からアンタ一人だ。アンタ以外にいやしねえよ」

はっきりと言いきる時雨の言葉にどのような違いがあるのか八城にはイマイチ分からないが『大将』という言葉には時雨なりのこだわりがあるのだろう。

太々しく笑い飛ばす時雨のおかげで、場の空気は大分和らいだがそれでも抱えた問題の大きさは変わらない。

「それで、八城くんはどうする?」

改めて尋ねる紬に、八城は答えを求めるように辺りを見渡したが、八城が頭を悩ませるまでもない。

「これは……俺がどうにか出来る問題なのか?」

八城が考えたところで、桜の変化に心当たりなどない。

周囲の落胆している表情などわざわざ見るまでもなく分かりきっている。

結局全員が頭を悩ませて出た結論と言えば、桜の変わってしまった原因は誰も分からないというただそれだけだ。

「だけどよう、現実問題明後日には威力偵察の第二陣が行われんだろ?どうすんだ?今の桜を連れて行くつもりなのか?」

時雨はマリアへと問う。

その問いは突き詰めれば、隊全体を危険に巻き込む選択を隊長であるマリアが取るのか否かの問いだ。

しかしどう悩もうが誰も桜の心理が分からない。

「私は無駄死にだけは死んでも御免だ、だが今の隊長はだれでもねえ金髪、アンタだ。だから桜を連れて行くのか行かないのかアンタが決めろ」

第一次威力偵察に味方として参戦していた野火止一華を犠牲にした彼女が、次は八番隊を犠牲にしないとも限らない。

更に言うのであれば、一番隊の代わりにこれから共闘する一〇一番隊の面々に対し野火止一華に対して同じ事をする可能性すらある。

今回は最前線と、目撃者がマリアと時雨だけという幸運だからこそ、大事になる事もなかったが、隊員の前で同じ事が起こればだれも桜を庇う事ができない。

マリアは理解している。

最善ではない。

最善ではないが決断を下さなければいけない。

だからこそマリアの決断は決まっている。

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