ツインズ 序
一年前
「お父さん!すっごく綺麗だね!」
快活なその声が俺を呼ぶ。
子供の歳の頃は十歳を過ぎた頃だ。
紅と黄金に色づいた葉が、風が吹く度にハラハラと交互に舞い落ちてくる。
大災害から三度目の秋。
住む世界も日常も様変わりしたのだが、どうも季節だけは、決まって四つで、一年が過ぎる。
「お父さん!聞いてる?」
「ああ、聞いてるよ。しっかし、俺の子供のくせに紅葉が好きだなんて洒落てるなぁ」
こいつは決まって足下で戯れ付いてくる。
それが本当に愛おしくて仕方が無い。
足下にくっ付いては慣れない一人娘。
壊れてしまいそうな程細い腕のどこに、これだけの力があるのか?
頬ずりしてくる頭を優しく撫でれば、うっとりとするように笑いかけてくるその無邪気さが何より俺を救ってくれる。
「あなた、そんなに無理して傷は大丈夫なの?」
妻は先日の怪我の事を心配そうにしている。
「な〜に!心配ないさ」
俺は二人を抱え込む様に抱きしめる。
温かい人のぬくもりが、何より俺に今の幸せを感じさせる。
夢のような時間だ。
この時間がずっと、ずっと続けば良い。
決められた檻の中。
そしてその檻の中でさえ、安全とは言いがたい世界だ。
そんな世界でも、俺はこの二人を心の底から愛している。
「もう!苦しいよ!」
「え〜もっとスキンシップを取ろうぜ〜」
腕の中で黙って居る女房と、抗議の声を上げる我が子。
「ねえあなた?」
それは、囁くように耳元で交わされた小さな約束。
「もう一度この季節を、三人で見ましょうね」
見透かされているようなその声に、俺は返事をする代わりにもう一度、二人を強く抱きしめる。
秋の風はやがて寒さを携え、全ての葉を落とし。
もうすぐ冬を運んでくる。




