鋼鉄少女王 タイタンメイデン 第一話 鋼鉄の女神 その6
ガミオンの動きが先程までとはうって変わり、
非情の決意を決めたその猛攻が再生ブラブーバを追い詰める。
繰り出す拳の一撃が強固な装甲を打ち叩き、ほとばしる光の波動がそれを砕く。
さらにそこから手刀を突き刺し、内部の機械を握り込むと、一気に引き抜いた。
「グワァァァァァ!!」
内蔵を引きちぎられた再生ブラブーバが、叫びをあげ片膝をつく。
「ウオオオオオ!!」
体制を立て直すスキも与えずにガミオンが再生ブラブーバに止めを刺そうとした時、
突如、背後からの一撃がガミオンの胸を貫いた。
攻撃に全パワーを集中していたガミオンの隙をついて、生き残っていたドローンが襲いかかったのだ。
自らの胸から突き出すドローンの爪を砕き折ったガミオンは
振り向きざまに廻し蹴りを食らわすと、
光の波動が弾け、ドローンは一瞬でバラバラに弾け飛んだ。
「ガミオン!」
叫ぶタケシ。
だがダメージは深く、ガミオンは膝をつく。
火花を散らし、体液が流れる傷口を押さえ立ち上がろうとするも、
反撃の機を得た再生ブラブーバは容赦無くガミオンの顔面に渾身の蹴りをみまう。
もんどり打って倒れるガミオン。
再生ブラブーバは、巨大な手のひらでガミオンの顔面ごと頭を掴み、
振り回すようにして何度も地面に叩きつける。
形成が逆転し、再生ブラブーバが次々に繰り出す攻撃が、ついにガミオンの側頭部装甲を破壊した。
砕けた装甲が大地に降り注ぐ。
「ッく!!」
ガミオンは踏みとどまり、低くした姿勢から全身の力を込めて必死の一撃を再生ブラブーバに叩き込む。
装甲にめり込むガミオンの拳。
しかし、渾身の一撃も虚しく、再生ブラブーバは涼しい顔をしてガミオンの拳を払い除けた。
ガミオンは続けざまに連打を見舞うが、エネルギー供給不全の拳では、
二度、三度と当たった攻撃もまったく効き目がないのだった。
「あと一撃、破壊エネルギーを奴のコアに叩き込みさえすれば……」
ガミオンは朦朧とする意識の中、
タケシだけでも生存の可能性が上がるようにと、体から生成機ごと生命維持装置を切り離そうとするが
機能不全の影響で、これもうまくいかなかった。
万事休す。
絶体絶命のガミオンにタケシが語りかける。
「ガミオン!僕のことはいい!生命維持装置のエネルギーを切り、全てのエネルギーを攻撃に回すんだ!」
「し、しかし、タケシ、そんなことをしたら生体維持ができなくなり、君の生命は停止してしまう!」
「構わない!今はガミオン、ブラブーバを倒し、君が助かることが重要なんだ!」
「タケシ……」
「ガミオン、君と一緒にいた期間、ホントに短かったけど割と楽しかったよ」
タケシの言葉にガミオンの親友ミロの姿が重なる。
「タケシ、君は自らの命を他者のために投げ出すというのか!」
ガミオンの心に熱い思いが溢れ出す。
「タケシ!君の心は……なんて……なんて!美しいんだ!!」
その時、ガミオンの心にタケシの意識が流れ込み、ガミオンのボディが虹色に光り輝いた。
驚愕する再生ブラブーバ。
「ナン、ダ?!」
腕を振るい振り下ろされた拳を弾き飛ばすガミオン。
警戒する再生ブラブーバの前で、ガミオンの姿が見る見ると変わっていく。
体の表面に光のラインが幾重にも走り、装甲表皮が開き、伸び、折りたたまれ
小柄な少女体型であった体が成熟した成人女性の形状へと変形する。
その姿はまるで機械の女神のようであった。
体にみちる新たな力に震えるガミオンとタケシ。
「こ、これは!こんな機能は私にはない!一体何が起きたんだ?!」
ガミオンの身体に起こった驚異の変化。
これが、後に『ナイス・バディ効果』と呼ばれる現象が発現した最初の事例となることを
今の彼らは知る由もない。
「心が……つながる……力が……あふれる!!」
ガミオンが、タケシが、二人が叫ぶ。
「タケシ!」
「ガミオン!」
「「タケシ!!」」
「「ガミオン!!」」
二人の声が重なりガミオンの胸の装甲が開き、膨らむ。
膨らんだ胸は小刻みに振動しだすと、凄まじい音を立て光を発する。
すると再生ブラブーバの体も振動し始め、ついにはその体が崩れ始めた。
「ギャオオオオオオオオオオオオ!!」
振動は激しさを増し、再生ブラブーバの体がボロボロと崩れ行き、断末魔の叫びを上げる。
最後にガミオンの胸がひときわ大きく輝くと
再生ブラブーバの体は塵となって吹き飛んだ。
共に崩れていくミロが何かをつぶやくがその声も塵となって消えていった。
戦いが終わり、訪れるひと時の静寂。
吹き荒ぶ風が再生ブラブーバの残骸を巻き上げキラキラと輝く。
その中に立つガミオンの美しい姿がゆっくりと元の少女の姿へと戻っていく。
やがて、瓦礫の中から立ち上がった少女タケシが、ガミオンを見上げ語りかける。
「さあ、帰ろう、ガミオン」
「ああ、タケシ……帰ろう」
タケシを受け止め、ふわりと宙に浮かぶガミオン。
そして速度を上げ始めると、一気に彼方へと飛び去っていく。
「メガミオン……」
飛び去るガミオンを見上げて自衛官が呟いた声に応えるかのように
ガミオンの体が夕日を反射し煌めいた。
鈴鹿家へと帰ってきたタケシはそっとリビングを覗く。
そこではキョーコとキョーコの母親が電話機を片手に明るい顔で何かを話している。
父親の無事が確認できたのだろう。
嬉しそうにはしゃぐキョーコを見て自分も安心したタケシは
静かに自分の部屋に戻るとベッドに倒れこみ、すぐに寝息を立て始める。
満足気なその表情を窓からのぞき見たガミオンが今まで見せたことがないような優しい顔で微笑んだあと
背を伸ばし空を仰ぎ見る。
そして一言つぶやくが、それは人間には理解出来ない響きで、深く空に吸い込まれていった。




