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鋼鉄少女王 タイタンメイデン  作者: 鳳たかし
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鋼鉄少女王タイタンメイデン 第五話 無限の形 その1

 田中サチエは心底後悔していた。


「こんなことになるのなら家でじっとしていた方が良かった」


そう思ったサチエの脳裏に一瞬のうちに様々な思いが沸き上がる。


父の事。

「お父さん凄く怒るだろうな……」

母の事。

「お母さんも、今回ばかりは許してくれないかもしれない……」

家で飼ってる猫の事。

「私がいなくなったら寂しがるかな……」

親友の鈴鹿キョーコの事。

「キョーコが只野君と教室で二人きりになるよう仕組んだけれど、二人は仲直りできたのだろうか……」


次々に浮かぶ思いにサチエはふと気づく。

自分が死ぬこと前提で思いをはせていることに。


「死。死ぬんだ。私はここで死ぬんだ!」


死を意識した途端、サチエの思考が現実へと引き戻される。


「ハァ、ハァ、ハァ……っく!」


サチエは呼吸を荒げながら、何とかニュートゥの手から逃れようと藻掻くが、

死に蓑狂いで力を振り絞るともニュートゥの手が緩むことはない。

どうしようもない状況にサチエが何かに縋りつきたい一心で首を左右に振った時、

その目に校門に殺到するマスコミの姿が飛び込んで来た。

皆一様にカメラを構え、嬉々として撮影するマスコミ達。

声高に状況を説明するリポーター達の騒めきも聞こえてくる。

遠く離れたサチエから見えるはずもないが、その時、サチエの目はハッキリと観た。

人の死を今か今かと待ち構えるマスコミのどす黒くゆがんだ顔を。

そのおぞましさに気づいた時、サチエの小さな喉から想像もできない程の絶叫が絞り出された。


「嫌ーーーーー!やだぁーーーーー!ごめんなさいお母さん!もうこんなことしないからぁーーーー!!

 誰かぁ!誰か助けてぇーーーーー!」


泣き叫ぶサチエを見たニュートゥが困惑する。


「なんだ?コイツ。まさか……メガミオンではなく、本当にただの人間なのか?」


そう思ったニュートゥが力を緩めて徐々に手を開いていくと、一瞬、体が軽くなったサチエの声が止まる。


「!?」


開ききったニュートゥの手のひらの上でサチエは呆然と巨大な顔を見つめた。


「無駄だ!メガミオン!どんなに完璧に人間に擬態しようとも騙されぬぞ!」


『声』を送った次の瞬間、答えを待たずにニュートゥは左手を伸ばすと、サチエの左足首を摘み上げた。


「ヒィィィ!!」


空中にぶら下げられ短い悲鳴を上げるサチエ。

ミニスカートがめくれ上がり、可愛らしい猫をシンボライズしたマークが小さなドット状にプリントされている下着が露になる。


「無駄だと言っただろう!いつまで恍けている!」


しかし、ニュートゥが何度『声』を送ろうとも生身の人間であるサチエから答えが返ってくることはない。

ぶら下げたサチエをまじまじと見つめながら、ニュートゥは考えをめぐらす。


各種センサーで調べた結果、確かにこの女はただの人間だ。

だが、それだけで『この女がメガミオンの分体ではない』とは言い切れない。

何故なら、メガミオンが密かに我らを見張るために『隠密活動に特化した分体』を生成したのだとしたら

我らの目さえ欺く特殊な能力を持たせている可能性があるからだ。

加えて頭部神経系にダメージの残る自分のセンサーでは容易く答えを出すのも迂闊だろう。

だが、この女の、この反応……本当にただの演技なのか?


「やはり、もっと詳しく調べる必要があるか」


ニュートゥが口を開けると中から太く長い舌が覗く。

舌はうねりながら口から吐き出されるとサチエの下に迫ってくる。

二度三度と周囲を旋回した後、舌先はサチエの体に近づくと、その先端に光が走り、幾重にも分裂する。


その時である。


「この人食いの化け物め!!」


一人の自衛官が叫び声と共にニュートゥの背中に向けて発砲した。

それは、ニュートゥが舌を伸ばしたことを捕食行為と誤解したための行動であったが

それを合図にほかの自衛官らも発砲し始める。

皆が一様にニュートゥの背後に回り込み発砲しているのは

流れ弾や跳弾が万が一にもサチエに当たらないようにする為であろう。

だが勿論銃弾が通用するはずもなく、ニュートゥは意にも介さない。


涙を流し、しゃくりあげるサチエに向かって、大量のミミズのように蠢く触手の先端が迫る。


「ヒィィィ!?」


恐怖におののき藻掻きまくるサチエ。

じたばたと暴れるたびに揺れるサチエの体を抑える為、ニュートゥは右手を伸ばし、サチエの右足をつまんだ。


「イビャァァァァァ!?やべてぇぇぇぇぇ!!ゆるじでぇぇぇぇぇ!!」


絶叫を上げるサチエの声は、もう言葉になっていなかった。

裂けんばかりに開かれたサチエの股間を覆っている可愛らしい柄がプリントされた下着に

じんわりとシミが広がっていく。

だがニュートゥはそれを気にするそぶりもみせず、さらにサチエの両足を左右に引っ張りはじめた。


「ぃぎぃぃぃぃぃぃぃ!!」


限界まで開かれた足の痛みにサチエが悲鳴を上げたとき、

『ゴリッ』という嫌な音と共に、股関節が外れる。


「いぎゃぁぁぁぁぁぁ!!いだい!いだいぃぃぃぃ!」


その激痛に悲鳴を上げるサチエ。

叫び続けて喉がかすれてもサチエは唯々泣き叫ぶ。

その悲痛な悲鳴に一人の勇敢な自衛官が撤去作業用の斧を振り上げてニュートゥの足元に駆け寄った。


「この野郎!!」


自衛官『古山』の怒鳴り声と共に振り下ろされる斧。

だが、斧の刃が激しい音と火花を上げ砕けようともニュートゥの足に傷ひとつつけることは出来なかった。


「うおお!?」


衝撃の反動でもんどりうって倒れた古山自衛官に仲間の自衛官が駆け寄る。

古山自衛官は自分を助け起こしに来たであろう自衛官に目を向けた。

だが、駆け寄ってきた自衛官は古山自衛官を助け起こすことをせずに、その横を走り抜けていった。


擦れ違う一瞬、自衛官の顔を見た古山は目を見開き驚愕する。

何故なら、自分とすれ違い走っていった自衛官は、まさに自分『古山サトル』自身であったのだから。










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