鋼鉄少女王 タイタンメイデン 第一話 鋼鉄の女神 その4
翌朝、目覚めたタケシがリビングへ降りていくと
キッチンからは朝食の良い香りが漂い、ヤカンのお湯が湧き激しく音を立てている。
タケシはヤカンの火を止めると、リビングを覗き込む。
そこでは大型のTVの前でキョーコとキョーコの母親が神妙な面持ちで画面を凝視していた。
「おはようございま~す」
恐る恐る声をかけるタケシ。
キョーコの母親が振り返る。
「あ、乙女ちゃん、おはよう~、昨日はよく眠れた?」
乙女とはキョーコがつけた少女タケシの仮の名だ。
「へ、あ、はい、おかげさまでぐっすりと眠れました」
「そう、良かったわ~、あ、ごめんなさいね、すぐに朝食の用意するから」
キョーコの母親はTVの映像を気にしつつキッチンへ向かっていった。
タケシは、なおも神妙な面持ちで画面を食い入るように見つめるキョーコに声をかける。
「どうしたの?」
キョーコが無言でTVを指差すと
その画面には都市部での火災の様子が映し出され、画面の隅にライブ映像とのテロップがあった。
「ニュース?」
「うん、静岡の方で何かあったみたい」
『ヤツらだ』
「え?」
タケシの頭に響くガミオンの声
その時、TVからアナウンサーの慌ただしい声が流れてきた。
「あ!今映像で捉えました!あれが現在破壊活動をしている物体のようです!」
画面の中では黒煙を上げ燃え上がるビルを押し崩しながら
銀色の巨大な物体が這いずり進む様子が映し出されている。
「ご覧いただけてますでしょうか?
本日未明、静岡市に突如として現れた物体は進路方向にある建物などを押しつぶしながら
市内を北上し……」
「お父さんが行ってる」
「え?」
「あそこ……今、お父さんが出張で行ってるとこの近く……」
「・・・・・・」
キョーコは握り締めた電話の子機を下ろす。
「電話も繋がらない……」
「あ!今、現場で動きがありました!
え~、怪物体の他に複数の機械の獣のようなものが現れ、光線のようなものを発射、
自衛隊の偵察機を撃ち落とした模様です!」
「!」
キョーコが座り込み呟く
「大丈夫だよね、お父さん……大丈夫だよね」
いつの間にかリビングに戻ってきていたキョーコの母親が
キョーコの肩を抱きソファーに座らせる。
無言でそれを見ていたタケシが脳内でガミオンに語りかけた。
『あれが、君の言っていた敵なのか?』
『そうだ、規模から言って恐らくは戦士クラスの何者かだろう』
『戦士?あの丸っこいのが?』
『アレはコクーン形態、自動修復機能では修復不能なダメージを負った体を修復させる為に取る形態だ。
簡易移動機能と自衛機能がある』
『何故、周囲を破壊しているんだ?ジッとしてりゃいいじゃないか』
『攻撃を受けての防衛反応か、もしくは修復速度を上げるため、周囲の物質を取り込んでいるのだろう』
『にしてもやり方が無茶苦茶すぎる!止める方法はないの?』
『人類の装備では不可能だろう』
『……君なら止められる?』
『おそらく』
『なら、アレを停めてくれ!』
『いいだろうタケシ、君が許可してくれるのなら。だが君は本当に覚悟は出来ているのか?』
『覚悟……』
『そうだ。
私はアレに勝てる自信はある。だが、それでも完璧と言い切ることは出来ない。
敵がコクーン内で修復をほぼ完了していたとしたら、機能不全状態の私では勝てない場合もある
その場合、逆に私が破壊されるだろう』
グッと息を呑むタケシ。
『その結果、タケシ、君の体も私と共に生命活動を停止することになる。
すなわちタケシ、君は命を賭ける覚悟があるのか、ということだ』
タケシはキョーコたちの方を見た。
不安に曇っている彼女らの表情。
TVには被害が拡大するさまが映し出され、アナウンサーの上ずった声が流れて続けている。
「…………」
タケシは二人に気付かれなうようにそっと部屋を出ると
そのまま玄関をくぐり道路へと歩き出す。
見上げるとそこには光学迷彩をといたガミオンが静かに立っていた。
「ガミオン、僕も一緒に連れっててくれ、この体なら何かの役に立てるはずだ」
「いいんだな?タケシ……」
ガミオンの言葉に強く頷くタケシ。
「行こう!ガミオン!二人でアレを止めるんだ!」
うなづくガミオンの手のひらにタケシが飛び乗るとガミオンは軽やかに走り出す。
軽い地響き音を立てて走り続けるガミオン。
徐々に足音が小さくなり、やがて消えていく。
だが、ガミオンは走るのをやめたわけではない。
タケシが下を見下ろすとガミオンの脚は何もない宙を蹴り走り続けていた。
「重力制御だ。今は移動ぐらいにしか使えないが、万全の状態なら多少の攻撃を防ぐことにも使える」
ガミオンはひときわ大きく宙を蹴り、高空へ飛び上がる。
「タケシ、君は私の中に入れ」
言うとガミオンの下腹部がスライドし始める。
顕になったタケシの本体を収容したカプセルがさらに奥へと引っ込むと、
そこに人一人が入れるぐらいのスペースが空いた。
「人間一人ぐらいは収納できる、さあ!」
タケシがそのスペースに飛び乗ると、タケシの体を挟み込むように機械部品がまとわり着き、
ガミオンの開いた下腹部が閉じていく。
「す、すごい」
何の違和感も、衝撃も感じず、むしろ心地よい感触にタケシが感嘆の声をあげた。
「では、急ぐぞ、タケシ」
するとガミオンの体が複雑に蠢くと、
みるみる形を変え、二つの機首を持つ航空機のような姿に変わっていき
速度を上げ一気に飛び立っていった。




