鋼鉄少女王 タイタンメイデン 第一話 鋼鉄の女神 その3
その後は順調なものだった。
学校へキョーコとタケシの無事を連絡した後、
ガミオンの工作の助けもあり、少女タケシが鈴鹿家で居候する許可も得られたし、
日が傾く頃にはタケシの両親に連絡し、取り敢えずの無事も伝えられた。
少女タケシの学校転入に関しては、学校自体が校舎の半壊という事故に巻き込まれ
数日間の休校となってしまったので一時保留となった。
一番難航すると思われたタケシの学校の長期外出の件では
予想通り母親に泣かれはしたものの、父親の反応は意外なものだった。
家にも帰らずに電話で突然『しばらく自分探しの旅に出る』等というむちゃくちゃで無理がありすぎる説明をしてくるタケシに対し、
父はその言葉を真摯に受けとめ『何か本人にしか解らない理由があるんだろう』とあれこれと理由を詮索せずに静かにそれを認めてくれたのだ。
その代わりに『絶対に親を悲しませるような真似はしないこと』『毎日、自分の無事を報告すること』等を絶対条件にタケシの口座に当面の生活費を振込み『金の心配はするな』とさえ言ってくれた。
その時のやり取りで、タケシは父親の愛情と信頼、優しさと男気を感じ取り感動に涙さえしたのだった。
結果、慎重に事の成り行きを見守っていたキョーコも拍子抜けする程、順調に事が進み
大体の問題が片付いた頃には日も落ちて、タケシ達は改めて鈴鹿家で胸をなでおろすのであった。
激動の一日が終わる頃、疲れを落とそうとバスルームへと足を運んだタケシは脱衣所で戸惑っていた。
ジャージのファスナーに指をかけ、ただただ硬直する少女タケシ。
そう、昼間は慌てていたのであまり気にもとめなかったがタケシは本来中学生男子である。
異性の体には非常に興味があるお年頃、ある意味サカっていると言ってもいい。
そんなタケシがあらためて今の体を意識した時、何とも言えない気持ちが湧き上がり
服を脱ぐのが躊躇われてしまったのだった。
しかもこの体の胸は大きく、なだらかな腰つきをしているナイスなボディ、発音良く言うなら『ナイスバディ!』
直視しようものなら冷静ではいられなくなるかもしれない……
さらに体を洗う時には体のあちこちに触れなければならないのだ!
年頃の男子にはご褒美、いや、ある意味拷問、一瞬で昇天してしまうかもしれない!
そんなことを考えながら苦悩するタケシ。
「ええい、もう、なるようになれ!」
タケシは赤面しつつ一気に服を脱ぎ、目をつぶりながら風呂場のドアを開ける。
モワッとする蒸気が顔を撫で、床に叩きつけられる水音が響く。
「ん?シャワー出しっぱなしなのかな?」
疑問に思ったタケシが目を開く。
すると、そこには一糸まとわぬ全裸の少女がシャワーに打たれ、立っていた。
あれ?鏡?
とタケシは思ったが鏡ではない。
鏡なら正面が映るはずだが目の前の女体はタケシに背中を向けていたのだから。
瞬時に状況を把握したタケシが冷や汗を流し「ヤバイ!」と思い、
ゴクリとつばを飲み込むと、少女がくるりと振り向く。
振り向いた少女、それは鈴鹿キョーコ。
キョーコとタケシは一瞬見つめ合う。
「あ、あれ?鈴鹿さん、ご入浴中でしたか、コイツはウッカリだ……」
と少女タケシがひきつる笑顔で声を絞り出す。
が、次の瞬間、
「ワザとかー!!」
とキョーコは叫び、手にした石鹸を投げつける。
おでこに石鹸をくらいタケシが怯む。
「い、いや!誤解!大いなる誤解だ!って、うわっ?!」
たけしはその拍子に足を滑らせ脱衣場へ尻餅をつく。
「てい!」
大股開きでだらしなく倒れたタケシを足で押し出し、すぐさまドアを閉めるキョーコ。
「あたたたた……大いなる誤解だってぇのに」
したたかに打ち付けた尻をさする少女タケシ。
多少の間を置き、風呂場のドアが少し開くとキョーコが顔を出した。
「えっと、ゴメン、わざとな訳ないよね、大丈夫?頭とか打たなかった?」
「あ~、いやいや、大丈夫、尻を打っただけ」
「それならいいんだけど」
ハッとして顔をそらすキョーコ。
「これに懲りて、以後、風呂場に入るときは気をつけるように!」
キョーコはすました顔を装い、続けて言う。
「あ、あんたも今は女の子なんだから、いつまでも大股開いて転がってんじゃないわよ」
と吐き捨ててドアを閉める。
タケシは慌てて足を閉じ赤面して答えた。
「は~い、以後、気をつけま~す……」
そんなこんながありつつも夜はゆっくりと更けていくのだった。
その夜、タケシは夢を見た。
見知らぬ惑星、星星の海、壮大な銀河を駆け抜ける宇宙船の数々。
輝くプラズマのヴェールを抜け、重力の渦を超えていくタケシの視線が
本来、人には感知できない光をも受け止めたかと思うと、それらは万華鏡のように過ぎ去っていく。
全てが驚異と荘厳な美しさに満ちている世界。
ふと気づくと、周りにはガミオンと同じような機械生命体の少女『タイタン・メイデン』達が歩き回っている。
その中の一人がタケシに気づくと笑顔で近づいてきて何やら語りかけてくる。
タケシには聞き覚えのない言語であったが、その人物の名前は知っている。
彼女の名前はミロ。
タケシは、金色に輝き美しく勇敢な姿をした彼女の言葉を理解しようと懸命に努力する。
だが、その努力は叶わず、やがてそれらの景色が薄れて消え
気づいた時、タケシは簡易ベッドの上で目覚めていて、ぼうっと天井を見つめていた。




