鋼鉄少女王タイタンメイデン 第四話 猛烈!ニュートゥ立つ! その6
「良し、終わったぞ」
言いながらニュートゥは手にした球形ドローンの蓋を閉めると軽く放り投げた。
落下したドローンが床に触れた瞬間、接地面の外郭が微妙に凹み、衝撃と音を吸収し静かに着地する。
「良し。ではさっそくだが汎用球形ドローン3825よ、
人類のネット等の情報網から『タケシ』及び『メガミオン』に対する情報収集を行ってくれ」
球形のサッカーボール状のドローンはクルクルとニュートゥとタオの分体が腰掛けるベッドの周りを転がると、
流ちょうな人間の声で言葉を発した。
「了解ナリー!」
「情報の真偽問わず、まずは虱潰しに収集しろ。取捨選択はこちらで判断する」
「アイアーイ!ですがニュートゥ氏、その前に……」
ニュートゥはドローンがすぐに指示に従わなかったことに怪訝そうな顔をしたが、ドローンは構わず話し続ける。
「それがし、自分自身の名前がほしいでござるよ」
二人は無言のままドローンを目で追い、答えることはしなかった。
「……」
「……」
「いかがしたでござるか?両氏?」
ドローンは沈黙を続ける二人の前に来ると体から二本の足を延ばし、立ち上がって首をかしげるようなそぶりを見せる。
タオはドローンに顔を近づけ、怪訝そうな表情で言った。
「なぁ、ニュートゥよ」
「なんだ?」
「人間ってこんなしゃべり方してたっけか?」
「ふむ、少し参照データが偏っていたかもしれんな……だが、とりあえずは大きく間違ってはいないだろう」
タオの指摘に、ニュートゥは腕を組みながら自らに言い聞かせるように答える。
「要はネット等で人の行動パターンを演じさせればいいのだからな。
こちらの癖を消し、敵に気取られねばそれでよい。
人間と直接会話させるわけでもなし、ひとまずはこれで運用してみよう」
「お前がいいってんならそれでいいけどさ」
「細かい調整は追々やっていけばいいだろう」
「う~ん、あとは名前、ねぇ……そんなの、もともとの汎用球形ドローン3825でいいんじゃねーの?」
あっさりと言ったタオの提案に抗議するドローン。
「番号なんかで呼ばれたくないでござる!拙者、自由な人間であるがゆえに!」
「人間って……あ~も~めんどくせ~な~」
明らかに投げやりなタオに代わってニュートゥが言う。
「ラブホテルで仕込んだヤツだからな『ラブホ君』でいいだろう」
「え!?」
タオに代わってニュートゥがさらり言うと、ドローンは思わず声を上げた。
タオは間髪を入れずに念を押す。
「と、いう訳だ。よろしくな、ラブホ君」
もはや決定、と言いたげなタオの態度にドローンが慌てる。
「ええ~!それはちょっと手抜きと申しますか、正直あんまりな名前でござるし……」
「っんだよ、も~……ほんっとめんどくせ~なぁ。んじゃあ、逆から読んで『ホブラ』だ、ホブラ」
ますます投げやりなタオの言葉に対し、ドローンが不満げに意見する。
「ホブラ……ま、まぁ、ラブホよりましなれども……もっとこう、ひねってですね……
あ!一文字変えて『ホムラ』ってのはどうでしょ?かっこよくね?」
「お前がそうしたいのならば、そうすればいい」
ニュートゥのお墨付きに、ドローンはテンション高めに名乗りを上げる。
「決まりなり~!ではではそれがし『汎用球形ドローン3825』改めまして『ホムラ』
よろしくお願い申し上げるで候!」
「……なんか無駄に人間臭すぎるような気がするんだが……大丈夫かなぁ、コレ」
妙なノリのホムラに、タオは一抹の不安を感じながら呟くのだった。
夜の街の裏路地の、さらに死角になる闇の中を乙女は行く。
民家の屋根を音もなく蹴り、ビルの壁面を駆け上り、月を背に宙に舞うその影はまさに現代の忍者。
分体の超常的な身体機能の扱いにも慣れ始めた乙女が目的の場所、朝日台中学校へと向かいながら言った。
「助かったよ、ガミオン。君が盗聴していたおかげで
僕の手首がまだ学校から移動されていないことが分かった」
「うむ、人間の手首が発見された、という事で瓦礫の撤去作業を中断し、
警察の現場検証チームが到着するまで現状を維持する、という事らしい。
ゆえに手首も発見時のままだそうだ」
「それを聞いていなかったら危うく警察署のほうへ向かっていたところだった……」
乙女が呟きながら朝日台中学校の校庭に隣接する三階建てのビルの屋上に着地すると、
素早く物陰に身を潜める。
ゆっくりと慎重に顔を出した乙女が目を凝らすまでもなく、
そのビルからは作業用のライトに照らし出された校庭がはっきりと確認できるのだった。
大型の発電機が発する作動音、張られたテントから鑑みるに、まだ数人の作業員が残っているのだろう。
「あれは……自衛隊?」
テントに記された文字から自衛隊の存在に気付いた乙女は一瞬怪訝そうな表情を浮かべてつぶやく。
「そうか、ガミオンが破壊したドローンの残骸等を調べる為に回収するつもりなんだな」
そしてさらに目を凝らしながら学校敷地内を見回した。
「僕の教室があった校舎付近に重機や人が集中してる……まぁ、当たり前か」
「ふむ、出入り口に二人、周囲に四人、校庭に九人、校舎周辺に六人、重機付近に四人、校舎崩壊部分に三人、半壊した教室内に二人ほど確認できるな」
「う~ん、やっぱり手首を密かに処分するのは無理そうだね、こりゃぁ」
「そろそろ千堂刑事や警察の現場検証チームも到着する。タケシよ、あまり時間はないぞ」
「だね……よし!ガミオン!やっぱりさっき相談していたあの方法でいこう!」
「うむ、少々強引な方法ではあるが、やむを得ないだろう……
こちらの準備はすでに出来ている。タケシよ、君のタイミングで始めてくれ」
「うん!じゃあ早速だけど、いくよ!ガミオン!」
「応!」
ガミオンの答えと共に乙女の体は物陰から素早く躍り出て、次の行動に移るのだった。




