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鋼鉄少女王 タイタンメイデン  作者: 鳳たかし
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鋼鉄少女王 タイタンメイデン 第一話 鋼鉄の女神 その1

 少年の名は只野タケシ。

歳は14歳の平凡な中学生。

これといった長所も無く、これといった短所も無い、

ごくありふれた平凡な少年。


そんなタケシが今日、早朝から学校に来ているのは学園祭の打ち合わせの為だった。

学園祭の委員に選ばれたとはいえ

タケシは優等生でもなければクラスメイト達からの信頼が厚いと言う訳でもない。

そんなタケシが選ばれた理由、

それは単純に面倒事を押し付けられたからであった。


二階にある教室で、机にカバンを置き、準備ノートを確認していると

そこへ、同じように学園祭実行委員の女生徒、鈴鹿キョーコもやってきた。

着崩したパーカを制服の上に羽織り、

丈の短いスカートを履き、小麦色に日焼けした肌をしたキョーコは明らかにタケシとは真逆なタイプの美少女であった。


タケシは少し緊張しながら挨拶する。


「お、おはよう」


「ん~、はよっす」


二人は他人行儀に軽い挨拶を交わすと

実行委員の仕事をこなそうと机を挟み、担当分けのためノートに目を通し相談を始める。


「で、仕事の分担なんだけど……で……だから」


「あ~……ふんふん……おう」


タケシが事務的に細かい説明をするのに対し

キョーコはガムをふくらませ、スマホをいじりながら、聞いているのかいないのか、生返事を返すばかり。



今は水と油のような二人だが、タケシとキョーコは幼馴染である。

幼少の頃はいつも一緒にいるほど仲が良かったが中学に入る頃からなんとなく疎遠になり

今では廊下ですれ違っても挨拶も交わすことはない。

タケシがいわゆるオタクになっていき、キョーコがいわゆるギャル風になっていくと

二人の間はますます疎遠になっていった。

少し気まずい空気を漂わせながら会話を続ける二人。


その時、外でサイレンの音が鳴り響いた。

それは校庭の放送用スピーカーからではなく、町内放送用のスピーカーから鳴り響いているようだ。


「なんだろう?」


キョーコが窓から身を乗り出し街の方を見やる。

タケシはキョーコを目で追うと、窓から体を乗り出す彼女の体勢が

こちらからは逆にお尻を突き出しているように見えた。

丈の短いスカートからは日焼けした太ももが覗き、時折白い下着がちらつく。

タケシは慌てて視線を外し、窓の方に歩いていくとキョーコと同じように空を見た。



何かが空に光るのを見つけたタケシが声を上げる。


「あ、あれ!なんだろう?」


勿論、既にキョーコもそこに大きな光の筋を確認していた。


「え?隕石?かな?」


そういえば、キョーコはこんな光景をニュースで見たことがあった。


「なあ、アレ……」


キョーコが呟く。

その映像はたしか、ロシアで大きな隕石が落下するのを一般人がスマートフォンで録画したものだった。

だが、今、目の前にある光の筋はそれよりもかなり大きく見える。


「アレ……」


映像とその光がなにより違うのは、光のすじが、まるで自分たちがいる方、

すなわちこの学校をめがけて落ちてきているように見えることだった。

いや、確かにこっちに向かって落ちてきている。

その証拠に光はどんどん大きくなり、それに伴い恐ろしい轟音が聞こえるではないか。


「こっちに落ちてくる!!」



物体が、あっという間に近づき地上に達しようとした時、

別の方向から高速で飛んできた光が物体に衝突し、落下速度を低下させ、その軌道を変えた。

光に叩き落とされた物体は凄まじい地響き音を立て校庭に突き刺さる。


「キャア!」


「おおう!」


悲鳴をあげる二人。

だがその声も熱風と轟音にかき消される。

幸い、部活動が休みの校庭に人影はなく、人的被害はないだろう。

だが加速のついた物体はすぐに停止することなく、

置かれた学園祭の資材を蹴散らし、地面を削り、

もうもうたる砂埃を上げながら進み、二人のいる校舎へと迫る。


そして、ついに物体が校舎へと達する瞬間、

タケシが、恐怖で硬直するキョーコを身を呈して庇った。


「危ない!」


弾みでキョーコが教壇の後ろに倒れこむ。


轟音と共に、校舎の壁に激突する物体。

それがおこした激しい振動と煙が学校を覆い、

タケシの姿もその中に消えていった。



 どれぐらいの時間がたったのか、

暗い闇の中、なにも見えない暗闇の只中でタケシの意識はまどろんでいた。


「タケシ……タケシ……」


突然、自らを呼ぶ声にタケシの意識が目覚める。


「ここは……どこだ?僕は……いったい?」


意識がはっきりしても、体に力が入らず瞼を開く事さえ出来ない。

そんなタケシの脳裏に語りかける声。


「タケシ、君の体は今、私の体内にある」


「え!なに?誰?!」


脳裏に響く声に驚くタケシ。

すると、まぶたを開いていないのに目の前に光が広がり、

やがて人型のシルエットを形成していく。

よく見るとそれは巨大な女性のようなシルエットをしていた。

光の女性は語りかける。



「私はガミオン、君たちの感覚で言うところの宇宙生命体だ」


「宇宙生命体?」


「そうだ。私は乗っていた宇宙船で犯罪者と交戦した結果、宇宙船が大破しこの地球へと落下した」


「宇宙船?」


「そうだ。そして君の体は宇宙船の破片が地上に墜落した際に巻き込まれ、その80%が消失した。

 その為、君の生命活動を再開させる為の緊急処置として君を私の体内に収納したのだ」


「え?!え、は、八十%って、それって大丈夫なの?死なないの?!」


「生命活動は停止している」


「うぉい?!それもう死んでんじゃん!」


「いや、死んでない。我々の基準ではまだ死んでない」


「どーゆー基準?!」


「……申し訳ないことをした、タケシ、だが心配はいらない、君の体は修復可能だ」


「しゅ、修復?治る、ってゆーか生き返れるの?!」


「治る……だが私は今、機能不全を起こし、君の体の再生に多少の時間がかかる」


「時間?どれくらいかかるの?」


「地球時間で約9000時間」



「9000時間……って一年以上?!うぉい!」


「その間、君には私の分体を提供しよう」


「分体?」


「君たちの感覚で言うなら『アヴァター』がそれに近い」


「アヴァター?」


「そうだ、地球での活動に備え、体内で生成していた私のもうひとつの体、

 それを代わりに君に使ってもらいたい」


「かわりにったって、人間離れしたものだとかだったら困るよ?」


「心配いらない。

 分体は地球での活動を想定し、地球人型に合成したものだからその点は心配ない、

 ただ一つの問題点を除いて」


「ひとつの問題点?って、それは?」


「それは・・・・・・」


その答えを聞いたタケシの顔が大きな戸惑いに変わっていった。




やがて、巻き上がった破片や振動がおさまり、立ち上がった煙も薄れると

キョーコとタケシがいた教室の壁はえぐれて消え、

ポッカリと青い空が覗き、明るい日差しが差し込んでいた。

遠くからはサイレンの音が聞こえる。

意識を失っていたキョーコがハッと気を取り直し、上体を起こす。


「痛っ~……」


壁や天井の一部がなくなり、空が覗く教室の有様にキョーコの顔がこわばる。


「ちょ、ちょっとタケシ?!」


慌ててキョロキョロと周囲を確認するキョーコ。

だがそこにタケシの姿はなく、ただ片方の上履きがおちているだけ。


「タケシ!」


青ざめたキョーコがタケシの上履きを拾う。

さらに周囲に目を配ると、瓦礫の影に隠れるようにして人の手が出ているのが目に入った。

キョーコは急いで駆け寄り、床に伸びている手を取ると

腕からは暖かな体温が伝わってきた。


「タケシ!!」


ここにタケシが倒れている!

そう判断したキョーコが手を引っ張るが、同時に何か違和感を感じた。

さらに力をこめ、手を引き上げるキョーコ。



その途端、


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」


キョーコの感情が恐怖に包まれ叫びをあげる。

それも当然であろう、何故なら、

引き上げた手の先には、そこにあるべき体がなく

引きちぎられた傷口から真っ赤な血が滴り落ちていたのだから。

たまらず腕を投げ捨て尻餅をつくキョーコ。

投げ捨てられた腕が転がっていき壁にあたって止まる。


「ハァハァハァ……」


キョーコが怯えながら自分の手を見つめる。


 い、今の腕……あ……暖かかった……ま、まさか……


恐る恐る立ち上がったキョーコは、腕があったがれきの方へとゆっくり近づいていく。

その時、崩壊した教室の瓦礫の中に何かがいる事に気づいたキョーコが叫ぶ。


「タケシ?!」


だが、それはタケシではなかった。

影からキョーコを見つめていたモノ、それは金属の体を持った巨大な機械の獣の顔。

砕けた床から顔を覗かせていた機械の獣はキョーコを認識すると、赤い目を発光させ、

背中から瓦礫を振り落とし、ゆっくりと身を起こす。

立ち上がったその獣の身の丈は10数メートルはあるだろうか。


「う、うわぁぁぁぁぁ!!」



悲鳴を上げるキョーコ。

その悲鳴に反応したのか、獣はキョーコを一飲みにせんとばかりに咆哮をあげ、噛み付きかかってくる。

だが、獣の牙がキョーコにとどく寸前、白い人影がキョーコを抱え後ろに飛び退いた。


「え?」


キョーコを助けた人影、それは白い肌の美少女。

ただし、全裸の。



「ガミオン!」


キョーコを抱いた全裸美少女が叫びを上げた時、何かが光を遮り、教室が薄暗くなる。


「?」


異変を感じ、顔を上げたキョーコはそこに壁があることに気づく。

だが、なにか妙だ。

金属質の光沢を持つその壁は奇妙な凹凸をしている。

キョーコは視線さらに上へと向けると

それは壁ではなく、なにやら得体の知れぬ存在の体であることを認識する。

しいて例えるなら、それは人間の、少女の体。

見上げるほど巨大な機械の少女、それが光を遮り、教室に影を落としていたのだ。


「……へ?!」



我が目を疑うキョーコ。

巨大な少女の顔がキョーコに向けられる。


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ?!」


キョーコが叫びをあげるが

全裸少女はキョーコを抱えたまま走り出し、獣の鼻面を踏み台にし高く飛び上がった。

超人的な跳躍力をみせた全裸少女が巨人少女の肩に乗る。


「ガミオン、こいつが君の言っていた敵なのか?」


「そうだ、だが、コイツはただの従者、いわば『ドローン』に過ぎない

 単体なら取るに足らないものだ」


言いながら巨人少女は獣の体に掴みかかる。


獣は巨人少女に食らいつき、牙を立てるが巨人少女は構わずにそのまま腕をひねり獣を打ち倒す。

さらに、とどめとばかりに拳を叩き込むと

巨人少女の体に流れる光のラインに、さらに強い光が流れ獣の体に流れ込み獣の体を粉砕した。

弾き上げられた獣の半身からバラバラと機械の部品のようなものがこぼれ落ち、

獣の体はあっという間にスクラップと化し、地面に倒れ伏した。



現実離れした光景にキョーコが驚愕していると、

全裸少女はキョーコを抱いたまま巨人少女ガミオンの肩から飛び降りる。


「うわっ?」


驚き、思わず全裸少女に強く抱きつくキョーコ。

二人が着地した場所、そこは金属的光沢を放つ巨人少女ガミオンの手のひらの上。


「!!」


金属の巨人少女ガミオンは驚愕するキョーコと全裸少女を優しく地面におろす。


「ありがとう、ガミオン」


キョーコを下ろし地面にたたせる全裸少女。

上から覗き込む巨大な顔にキョーコは息を呑み、ただ脅えて震えるばかり。

ガミオンはキョーコが無事だったことに安心したかのような表情を浮かべた後

ゆっくりと立ち上がる。



「な、なに?これ?なんなの?」


「鈴鹿、怪我はないようだね」


「え?なんで私の名前を知ってるの?」


全裸少女に名前を呼ばれたキョーコは当然の疑問を口にする。

後ずさりするキョーコに少女が言う。


「昔から知ってるよ」


「?」


全裸少女の言葉にますます混乱するキョーコ。


「……そうだ!タケシ!タケシを探さないと!」


突然の出来事に気を取られてしまっていたが、

キョーコはタケシのことを思い出し、その安否が気にかかる。

そんなキョーコに声をかける全裸少女。


「僕ならここにいる」


「へっ?」


「僕がタケシだ」



全裸少女は巨人少女を指差し説明する。


「そして彼女はガミオン、彼女のおかげで僕は助かり、彼女のせいで僕はこの姿になった」


「はぁ?ちょっと、何言ってるかわかんない」


その時、遠くから様々なサイレンの音が近づいてきた。

そのサイレンの音に反応したように

ガミオンはキョロキョロと周りを見回した後

その姿が光のモザイクに包まれ、煙のように消え去っていった。


「場所を変えて話そう、人が来るとややこしくなる」


タケシと名乗った少女が提案する。

キョーコは、呆然と消えた巨人少女がいた場所とタケシと名乗る全裸少女の顔を何度も見返す。


「?」


暫しの沈黙の後、キョーコが応えた。


「その格好のまま行くの?」


「え?」


全裸少女は自分が全裸なことに気づき慌てて体を隠しながら言った。


「あの、よろしければ服を貸してもらえると助かるんだけど……」











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