第九百七話 インセジェンス王国との全面戦争前の特訓
「あの、またわたしに特訓つけてください!あまり時間ないですけど、李梨花さんみたいになりたいんです!」
祐子は元気よく頼み込む。憧れのヒーローに会えたのだ。これくらいやらなければ意味がない。
「いいわよ。また鍛えてあげる」
李梨花はクールに微笑んだ。
演習場にて二人の特訓を見守る司とレッタの前に隆が現れた。
「お前ら、こんなとこにいたのかよ。しばらくしたら遠征だけど大丈夫なのか?」
その顔は眉を潜めるほどだ。
「どうなの?」
レッタも唸ってから眉を潜めて司に尋ねた。
「うーん、李梨花さんなら大丈夫じゃない?」
司の返事も曖昧だ。
「まあ、あの人なら経験長いらしいし加減とかするけど。……………って、祐子の心配をしろよ!あっちは加減すんのかよ!」
だがそんな曖昧な返事では隆の心配は止まらない。激昂して問うた。
「やっば。バテて、ないか?あれ、息切れてる?!ねえ、テッペキ!大丈夫なの?!魔法界行く前にバテてないよね?!」
レッタは不安になり管制室から目を凝らすとテッペキの状態に声を上げる。これから全面戦争に参加するというのにウォーミングアップ以上のことをしたら大変だ。
「はぁ!?大丈夫よ!あたし、まだ………やれるんだから!」
テッペキは呼吸を整えながら叫ぶ。だが背中からは汗が出始めている、疲労の始まりだ。
「いえ、これくらいにしましょう。魔法界に行くのだから本気でやっては駄目よ」
「はーい」
李梨花に言われあっさり特訓はお開きになった。
「んだよ、自分の言うことは聞かないのにあの人の言うことは聞くんだよ。ケチー、みたいな感じか?」
隆はレッタの顔を見るとニヤニヤしながら言った。
「思ってないよ!そんなこと別に思ってないからね?!」
「おお?図星か?意外と可愛いとこあんだなお前、このこのー」
レッタの慌てように隆はさらにニヤけて肘でつつく。
「うるさいよもうっ!」
レッタはますます不機嫌になっていく。




