第八百九十四話 ハーメイ対刀葉②
「負けた、のか?」
あまりの攻撃の速さにハーメイは自分の状態を自覚するのに時間がかかってしまう。
チャキっと刃が起き上がったハーメイの眼前に向けられる。
「えっと、わたしの勝ちですね」
躊躇いながら刀葉が言った。
「ふざけるなっ!こんな敗北認められるか!もう一度だ、もう一度やるぞ!」
ハーメイは刀葉に掴みかかり激昂する。
「え、あ……………はい」
その有無を言われぬような迫力に刀葉は頷くしかない。
「すまない、わたしとしたことが取り乱したようだ。本気を出す前に刃を突きたてられてしまったからな」
ハーメイはそこで冷静になると自分の激昂ぶりに驚いた。
「いえ、わたしもここまでやれると思ってませんでしたから」
「次は手加減しない。やれるか?」
「もちろんです!」
ハーメイの宣言に刀葉は力強く頷く。
距離を取り特訓を再開すると再びハーメイは結界を張った。吸血鬼が従えるがごとき無数のコウモリを暗闇から放ち刀葉を翻弄する。
それに紛れハーメイ本人が爪をつきたてる。
「はっ!」
「きゃっ!」
刀の迎撃を上体を逸らすことで回避しそのまま両手を地面へ、身体を反転させ足で刀葉を狙った。
トリッキーさも手数も先ほどより増し一切の隙を与えず刀葉を追い詰める。
「はあ、はあ……………」
「ふ、やはりわたしはこうでなくてはな」
相手の息が切れてきたところで翼を広げ魔力を集中させる。
「これで終いだ!」
翼から赤黒い霧が照射された。
「はっ!」
刀葉は虚ろな目で無数の刀を飛ばし持っている刀で一気に魔力を振るった。
「なんだと!がはぁっ!があっ!」
刀は魔霧を裂き魔力の刃はハーメイ本体を狙った。




