第八百七十二話 ウィザードマテリアル本部技術部にてアリエルと
「そそ。で、こっちが幼馴染の相川祐子でこっちが橋本隆。隆は魔導システムを作れるんだ」
「彼が?瀬川さんが作ってるんじゃないんですか?」
アリエルはレッタの紹介に眉を下げる。
「ふっふっふ、そう思うだろ?なにせ魔導システム作りはレッタより俺のが上手いからな。んなことよりさ、これなんだよ」
「あ、それは………」
アリエルの声も聞かず隆は自己紹介も早々に作業台に置かれた箱の一つを触る。大量にあるそれは失敗作の数々を思わせた。のぞき込むと人形の頭が見える。
「ん、うわぁっ!」
ビヨーンとバネが飛びピエロが飛び出して隆は腰を抜かしてしまう。
「びっくり箱です。罠にちょうどいいと思って作ってるんですけど中々上手くいかなくて………」
「え、よく出来てるじゃない」
自信のないアリエルだが祐子はなぜかを分からない。
「普通のびっくり箱じゃだめなんですよ。魔法使いが運用しても意味があるようにしないと」
「魔法使いがって魔力に反応するって意味?」
「ええ、数が増えたり巨大化するようにしないと。こんなの普通のびっくり箱の再現に過ぎませんから」
アリエルは自分の仕事の難しさを語る。
「よく分かんないけど頑張るのね」
「やだ、先輩のためですよー」
祐子の称賛にアリエルは頬に手を当て身体を回す。
「先輩?アマツカって人のこと?」
「はい、昔から一緒で何度か離れたこともありますけど心はずっと一緒のつもりでした」
レッタの問いにアリエルはうっとりした。
「あんた、その人のこと好きなの?」
「好きなんてとんでもない、いつまでもお慕いしています」
その想いは軽い言葉では片付けられない。
「よく分かんないけどあたし、あんたのこと応援するわ」
祐子はどことなく彼女にシンパシーを感じた。
「ありがとうございます!祐子さん、あなたいい人ですね!」
「そ、そう。それは良かったわ」
感激するアリエルに祐子は戸惑う。しかし彼女は何歳だろうと祐子と思った。一見大人のように見えるがこうして顔を近づけられると女子高生に見えなくもない、不思議な人だ。




