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UNITED  作者: maria
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 リュウジたちがスタジオでのリハを終え、これからどこのラーメン屋に行くかを話し合っていた所、リュウジの携帯が鳴った。画面を見ると知らぬ番号である。リュウジは一体誰であろうかと訝りつつ、なかなか執拗に鳴り続ける受話器マークに触れた。

 「もしもし?」

 「ああ、リュウジ? 俺、リョウ。今度メタルギター会の会合があんだけどさあ、お前も来ない?」

 「はあ?」

 「だーかーら、メタルギター会の会合があっから、お前も顔見せに来てくれっつってんだよ。お前に会いてえってつってる奴が結構いてさあ。もしリハとか入ってなきゃあ。」

 「え、どなたですか?」

 「だーかーら、リョウだって! お前と喋りてえって奴がいてさ。な、頼むよ来てくれねえ?」

 「リョウって、……どこのリョウさんすか?」

 「何度も何度もうるせえな! メタルギター会の名誉顧問だよ!」

 「メタルギター会? 聞いたことないな。……誰かとお間違いじゃないですか?」

 「お間違いなモンあるかよ! 何だお前は!」

 リュウジはその勢いに思わず携帯を耳から離す。

 「どした? 誰?」アレンが訝し気に尋ねる。

 「……間違い電話だと思うんだけど、……どうも腑に落ちなくって。メタルだのギターだの言ってんだ。」

 「それ、間違い電話じゃなくねえ?」ヨシも不審げに尋ねる。

 「相手、名乗ってねえの?」キョウヘイも眉根を寄せて尋ねる。

 「それが、リョウだって言うんだけど、リョウってどこのリョウ? 俺知らねえんだけど……。」

 「お前! 馬鹿か!」アレンが慌ててリュウジの携帯を引っ手繰った。

 「リョウさんすか! 俺、Day of Salvationのアレンす! ボーカルの! その節はわざわざライブ来てくれてありがとうございまっしたあ!」

 「ああ!」ようやくリュウジは合点して、手で勢いよく腿を打っ叩いた。

 「ああ? 来週末っすか。空いてます空いてます。ええ、聞かねえでもわかります空いてます。ええ、もちろん行かせます行かせます。はい、メタルギター会の書記でも会計でも、その他雑用庶務なんでもやらせて下さい。あ、そういうのはないんですか。ええ、わかりました……。」

 リュウジはじっとアレンを見守る。

 「あ、でも、こいつまだ未成年すよ。酒とかはまだダメなんで、そこはすんません。え、大丈夫。何、ランチ会っすか? メタルギター会って、そんなお洒落なことやってんすか!」

 「ランチ会……。」リュウジはぼそりと口中で繰り返す。

 「ああ、肉。いいっすね、肉。わかりました。それならいつでもいくらでも。あっはははは! どうぞこれからもこのリュウジをよろしくお願いします。」

 アレンは深々と頭を下げ、ついでに隣にいたリュウジの頭も無理やり押し下げ、電話を切った。頭を上げるなり、リュウジを睨んで、「お前、Last Rebellionのリョウさんじゃねえか! 何でわかんねえんだよ! 馬鹿か!」

 「いや、だって、俺携帯の電話番号教えている人なんかお前らにおやっさん、女将さんに、それから、まあ数える程しかいねえし……。知らねえ番号だったもんだから。」

 「にしたってわかるだろう。ったく。……そうだ、お前来週末昼焼肉な。」

 「それは聞いてたからわかってるよ。」

 「しっかり顔売ってくりゃあ、その内対バンで呼んで貰えるかもしんねえから、しっかり営業頑張ってこいよ。」

 「俺そういうの苦手なんだよなあ。」リュウジは溜め息を吐いた。

 「ダメだなあ。愛想よくして、元気よくして、そうだな、CDバラまいてこい。」

 「肉食うだけじゃだめなのか?」

 「ダメに決まってんだろう。せっかくのメタルギタリストが集結する会合によう。しかもリョウさんだぜ。リョウさんにしっかり媚び売ってくりゃあ、幸先いいぞ。多分今、あのお人は一番日本のメタルバンドで力持ってそうだしな。ちなみに俺はそういうの、超絶得意!」

 だろうな、とリュウジは素直に思う。

 「じゃあさ、アレンも一緒に来てよ。」

 「ダメだろ、俺はボーカルだもん。」

 「ボーカルはそういうの、ないの?」

 「聞いたことねえな。あってもまだペーペーだから呼ばれねえのかもしれねえ。」

 「俺だってペーペーだよ。」

 「まあ、ペーペーだってメタル界においては言い訳んなんねえしな。実力の世界だよ。」

 リュウジは早くその実力とやらを身につけたいと、切に思う。

 先日上京してきたリュウイチは、早速よし屋でバイトをするべく店主から仕事を習いつつ、それ以外は入学式もまだだと言うのに勉強をしている。大学が始まってから遅れを取ってはいけないから、というのがその理由だが、このままいけばあと六年後、彼は確実に立派な医師となるに相違ない。

 その時自分は何をしているだろう。今と変わらぬ状況ではいけないと思う。もっと大舞台でライブができるようになり、CDの売り上げも出るようにしなくては……。

 「お前がこれからもいい曲バンバン書いてさ、コンスタントにCD出してライブやってって、続けていけばそれが大きな力になると思うよ。だからお前とバンドやってんだ。」アレンがすがすがしく夜空に向かってそう言い放つのを、リュウジは安堵の思いで聞いていた。

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