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よりがみマネー

作者: 波風

前作「よりがみハッピー」の女苑視点になります。

前作を未読の方は大きく話の繋がりはありませんが

今作の後でも先でも読んで頂ければ幸いです。



 ──世の中、金が全て。

 その通り。金さえあれば、世の中の殆どを買うことが出来る。物や食料やサービスは勿論、人の気持ちも世界も買える。金で買えないものは無いと、私は断言する。


 そんな考えで生きている私──「依神 女苑(よりがみ じょおん)」が何故そんななのかと問われれば、答えは簡単、私が他人に取り憑き財産を消費させる「疫病神」だからだ。取り憑いたものに、財産を貢がせ、私は稼いでいる。取り憑かれたものは、貢いでいることに、財産を消費していることに疑問を抱かない。故に絞りかすになるまで、気づきはしない。この力があれば、私は金に困らず、一生を幸せに暮らしていけるのは明らか。...の筈なのだが、私には1つ問題を抱えている。かなり大きな問題を。


 それは私の姉──「依神 紫苑(よりがみ しおん)」にある。姉さんは泣く子も貧する「貧乏神」なのだ。周りを不運にし、不幸にし、貧乏にする能力を持っているのだが、ポンコツな我が姉はその貧乏神としての能力を制御出来ない。だから、自分も不運にしている。

 それは私にも悪影響を及ぼしている。と、言っても私が貧乏になるわけではない。私が稼ぐ前に稼ぐ場所が姉さんのせいで廃れるのだ。...まあ、それは結果稼ぎが無くて貧乏とも言えるのだが。本当に困った姉だ。


 今日も1つ、村ごと人間達を不運にし潰している始末。収穫時期だった農作物は、天候に関係なく(私達が滞在した7時間は雲なんてない快晴だった。)枯れ果て、村人が持っている物は、急激に古び壊れていった。こんな村で生活なんて出来るかー!と、奥さん子供など家族を持つ村人はとなり村へと移動を...正直、残ってるやつなんか居るのかという状態だった。


「お願いだからさぁ...1日食う寝るくらいの分は稼がせてよね、全く。」

もう誰も住むものが居ないであろう家の屋根の上で、体育座りをして落ち込む姉さんの横に立つ。

「ごめんねぇ...何も考えないようにはして居るんだけれどねぇ...。」

...誰が無になれって言ったんだ。制御が効かないものに何を言っても何をしても無駄じゃないか。私が毎回吐く文句は、全てが姉さんに向けているわけではない...制御が出来ても力が強くないのでは意味が...。

「女苑...」

「ん?何、姉さん。」

「お腹空いちゃった...えへへ...」

マイペースだな、この姉は。もはやこの展開も、状態も、姉にも慣れてしまった私は「はいはい。」と呆れながら、屋根から飛び降りる。


「...オメェ達だな、オラ達の村に厄災さ墜としたのは!」

私が降りたと同じタイミングで、木や家の影から10数人の村人達が姿を現した。多分、妻も子もいない奴と正義感を変なとこに向けた馬鹿の集まりだろう。残念ながら、私は悪いとは思っていない。喰われるほうが悪く、騙されるほうが悪く、憑かれるほうが悪い。こういう輩は毎回現れる、それを毎回相手にしている暇はない。時は金なり、弱者の相手より次の稼ぎを求めないと。


「姉さん、私もお腹空いたしさっさと行くよ。」

「えーっと...あー、うん。わかった。」

ビビっているのか、それとも罪悪感を抱いているのか、姉さんはすっかり縮こまっていた。そんな私を見てか、私達を見てかは知らないが、飛び交っている罵詈雑言に熱が入る。

「オメェ達のせいで食うもんが!」

「オメェ達のせいで寝るところが!」

「オメェ達のせいで家族が!」

「オメェ達のせいで村が!」

と、様々。前述にもあるが、構ってる暇はない。縮こまって足の動かない姉の手を取り「こんな奴らにビビる必要はないし、こんな奴らに悪いと思う必要はない。私達は、私達が思うように生きてんだ。雑魚や馬鹿は気にするな。」と言い歩き出す。煽りは聞こえなきゃ意味がない。だから私は音量大きめで姉さんに言った。


「んだとぉ!この悪魔がぁ!」

叫びと共に村人達は石や、木や何かの破片を投げ出す。

「──女苑!」

その瞬間、姉さんは私を抱き投げられたモノから私を守った。...前にも何回かこういうことがあった気がする。何故、自分に自信がなく行動しようとしないダメ姉が、こういう時にすぐ動くのか...。たがしかし、残念ながらダメダメな姉さんに物理的に守られるほど私は弱くはない──!


「黙れ!」

私の一喝で村人達は黙る。こんな少女のような姿をした奴にすら、一喝で黙ってしまうのか...。

「お前達が廃れたのは、お前達に力が無かったからだ。盗られても平気な、貢いでも平気な、不運になっても平気な財力(チカラ)を持っていない、弱いお前達が悪い!そして、お前達は固まってないと女2人に文句も言えない。物を遠くから投げないと戦えない。心も体も、財力も弱い自分達を悔いて──死ね!!」

私はこう見えて、接近戦が得意なのだ。農作業如きで、建築如きで鍛えた村人達なんかは目じゃない。1分程度で片が付いてしまった。


 完膚なきまでにボコボコにされた村人達は、足や腕を引きずりながら逃げて行く。ついでに残りカスも巻き上げた。これで、2日くらいは生活出来るだろう。...私の力がもっと強ければ。

「...女苑?」

「──ん?あー、無駄にシリアス入れちゃったわ。行きましょう姉さん。」

「はーい。お肉食べたいー」

弱い弱い、姉さんも私も。





 稼いだり、損したりを繰り返し生きて数日数ヶ月が経ったある日、私はまたカモを探し大きな人里を歩いていた。姉さんはお留守番。こんな大きなとこまで、すぐ潰されたらたまらない。そんな時、風で新聞が私の顔に飛んできた。

「──なによ!?...ん?これは...これだ!」

これを利用すれば私達は今度こそ幸せ(おかね)を手に入れることが出来る。今度こそ──...『幻想郷』で!!


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『幻想郷』

──...そこは人間、妖怪、霊、そして神が住まう世界。

──...そこは今『都市伝説異変』によって噂が具現化する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『完全憑依』

 他者が相手の身体を乗っ取ることが出来る『都市伝説』

そう...私と姉さんが『都市伝説異変』を利用して具現化さ博麗 霊夢(はくれい れいむ)せたもの。

『幻想郷』で行われるライブを観ている無防備な客たちに、強制的に『完全憑依』をして巻き上げる。そして、邪魔するやつには姉さんが取り憑いて勝運を含む全ての運を不運に変換し、敗北にへ導く完璧な作戦。富を巻き上げ、人々を不運にする「最凶最悪の姉妹」に敵はない──!!


と、思っていた。これまで何度も何組も、私達の邪魔をしてきた奴らに姉さんの力で不運にし、敗北にし来たのに、今...何故か姉さんが私達の邪魔をしに来た妖怪賢者──八雲 紫(やくもゆかり)に取り憑かれている...!?姉さんが本体(マスター)で紫が憑依側(スレイブ)...!?そして、私はというと、幻想郷の巫女──博麗 霊夢(はくれい れいむ)のスレイブに!?


「なんで...!?なんで、こんな事が!?」

「はいはい。勝手に入れ替わらない。あんたの姉に取り憑いている奴は、境界を操る事が出来るのよ。それで、マスターとスレイブの境界を逆にしたってことよ。」

なんだそれ...そんなのありなのか...?

「さて、弱そうな貧乏神はさっさと倒して帰るわよ。」

「貧乏神に取り憑いているなんて、いい気はしないから早くね霊夢。」

「あー...お終いだ。姉さん1人で勝てるわけがない。根暗で貧乏で、鈍臭くてなにも出来ない姉さんに...勝てるわけがない...。」

姉さんは、私が居ないと──...「女苑、お前達……。みんな馬鹿にしやがって。そんなに言う事ないじゃない!」


 あの姉さんが叫んだ。根暗でひ弱な姉さんが、怒りで声を上げた。溢れ出たのは、声だけではなく、姉さんの中に溜まりに溜まった「負」が溢れに溢れていた。

「な、なによこの凄まじまい負のオーラ!?」

「私が本気を出すと、自分も含めて全ての者が不幸になるからだ!もういい、勝ち負けなんて興味は無い。私が本気になった以上、ここにいる全員を負けさせてやる。巫女も私も、女苑、お前もだ!みんなまとめて貧しさに怯えて死ね!」

本気を出した姉さんは、私よりも弱くて私よりも強かった。もう失敗したんだ、なら、姉さんの力に飲まれて不幸(シアワセ)になりましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日談。

 私達は負けた。私達だけが負けた。ただ、またあっちへこっちへ行ったりして稼ぐことは当分無くなった。姉さんは、既に貧乏で能力の影響を受けにくい博麗神社、霊夢のもとへ置かれることに。私は迷惑なことに、能力が制御出来る点から更生の余地あり、と判断され命蓮寺とかいう場所へ。今もその更生の一環として、朝早くから掃除をさせられていた。

「何で私が金にもならないことを...。」

「あら、お金にならなくても寺が綺麗になるのは良いことよ。」

と、仰るこの住職──聖 白蓮(ひじり びゃくれん)は監視として、私の側にいた。サボれないじゃないか。

「ねぇ。お金で買えない物って何かあると思う?」

「突然な質問ね。あ、手は休めないように。...たくさんあるじゃない。」

「...沢山もないでしょう。例えば?」

「側に好きな人が居てくれることは幸せにはならないかしら?貴女のお姉さんとか、ね。」

あー...確かに買えない。あんなポンコツで根暗で出来損ないで、文句ばかりで、一緒に居て嫌じゃない姉は。側に居なくなって気付くんだよなー、大切なものって、お金も一緒。大金を払って失った時に大切さに気付く。時は金なり。姉は金なり。

「いや、でも姉さんは金を出せばホイホイついて行くわよ...」

「あらあら...」

あらあら、じゃないわよ。苦笑いしてんじゃないわよ。



「はぁ...お金が欲しい。」




ここまで読んで頂きありがとうございます。

前作「よりがみハッピー」が中々楽しく書けたので、女苑視点も調子に乗って描きました。


書いたは良いが、キャラちゃんと書けてるか心配っす。


次は明るい話書きたい。


感想は悪評好評どちらでも喜びます。


では、改めてありがとうございます。


@tohoproject0816

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