Phase2 喧騒からおねだり
■飲み屋「気骨稜稜」夕方
飲み屋「気骨稜稜」は騒然としていた。
荒くれもの2人が、女性にちょっかいをかけるという状況。
そこに止めに入ったは、黒髪でカラフルなポンチョをまとった女の子だった。
「あ?姉ちゃん、おめえも可愛いじゃねえか…だが…」
「すっこんでな!」
と、小柄男はその太い腕を振り上げ、拳を繰り出してきた!
グシャア!
刹那、カラフルポンチョの女の子は、いきなり小柄の男の顔面に思いっきりジョッキをぶつける!
「ぬがっ!!」
ドサッ。
小柄の男は、顎から床に沈んで完全に気を失ってしまった。
一瞬の出来事に、店内の客たちが茫然と息をのむ。女店主もアーモンドのように目見開き、その様子を見ている。
女の子は長い黒髪とカラフルポンチョを翻して、ジョッキの麦酒を飲む。
「ごくごくごく」
「ふいー」
ポンチョの女の子は麦酒をジョッキの1/3ほど飲み干すと、女2人に絡んでいた大柄の男を一瞥する。
「乾杯、する?」
「な…、なんだお前は―!!」
いきなり殴りかかる大柄の男、拳を繰り出すも、ポンチョの女の子はジョッキを持ったままポンチョをなびかせ、軽やかにいなす。
ブン、ブン、ブン、ひょいひょいひょいっと。
大柄の男、連打を繰り出すが、すべて空を切っていた。
ポンチョの女の子は身をかわすたびに、ひらりひらりと長い髪とポンチョをなびかせる。
「くそぉ!素早い女!」
すっと動きを止める女の子。
「じゃ、かんぱーい!!」
グシャ!!
「ぎゃっ!」
ガラガラガラ…ガシャン!
女の子は、持っていたジョッキであっという間に大柄の男も吹っ飛ばした。
どすん…!
壁に激突し、床に崩れ落ちる大柄の男。小柄の男とともに完全にノックアウトの状態だ。
「へへん、サラサちゃんに拳を当てようなんざ、甘いってえもんよ!ヒック」
サラサちゃんと名乗ったその子はポーズを決め、残っていた麦酒を飲み干した。
「ぷはー」
茫然とする店内。
ゴトリと壁に掛けてあった、深緑の竜の描かれた額縁が落ちる。
「ママさん、おかわり!」
■竜骨の街・商店街 昼下がり
…以上が昨日、飲み屋「気骨稜稜」で発生した出来事である。
ここは再び、昼下がりの竜骨の街。商店街の路地裏だ。
「あー」
カラフルポンチョを纏ったサラサちゃんは頭を掻く。
その派手な衣装から、金髪の男の子と女の子のきょうだいに声をかけられ、昨日、悪漢を倒したことを尋ねられていた。
サラサちゃんはなんともバツの悪い表情をして、きょうだい達に弁明をはじめる。
「あれはねえ。酔っぱらいが煩わしかっただけだよ、私が強いとかじゃなくてさ」
「ママがね、『あの子はただもんじゃない、骨のある子だね』って言ってたんだ」
「言ってた!」
男の子に続いて女の子も食いついてきた。二人はぴょんぴょん飛び跳ねる。サラサちゃん、ちょっと照れくさくなり、
「そうか、あなたたちのお母さんは、あのお店の店主さんなんだね?」
「そうだよー!」
ふむ。と観念した様子で、サラサちゃんはカラフルポンチョを羽織りなおす。
「で、私に何か用なの?」
「あのね、お願いがあるの」
「あるの!」
「…お願い?私にできることかい?」
「骨の上!」
「上!あれ!」
「骨ェ?」
サラサちゃんは、きょうだい達につられて顔を上げる。
白い石壁の家のスキマからは真っ青のぞかせる。
この街が異様なのは、白く巨大なあばら骨が空に広がっていることだ。その骨がこの路地裏からも見えた。
竜骨の街の真上にはその名の通り、「竜の骨」といわれる、巨大な竜のものとされる背骨と肋骨が、町を守るように覆っていた。
「あそこには白い花が咲いているの。ここからじゃ見えないけど」
「その花を摘んできてほしいの」
「まじか、あの高いところに…花?」
怪訝な表情のサラサちゃん。
「昨日の騒ぎで、ママのお気に入りの花を活けていたビンが割れちゃって」
「ああ…」
サラサちゃんは天を仰いだ。彼女のせいではなかったが、昨日花瓶が割れていたのを彼女は目撃していた。
「おねがい」
「おねがい」
2人に詰め寄られるサラサちゃん。
彼女は困った人は放っておけない性分のようだ。はたして——―
つづく!
次回Phase3 は明日10/18(水)にUPします!




