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サラサ 高い骨の花  作者: トラヤラノ
2/5

Phase2 喧騒からおねだり

■飲み屋「気骨稜稜」夕方


 飲み屋「気骨稜稜」は騒然としていた。

 荒くれもの2人が、女性にちょっかいをかけるという状況。


 そこに止めに入ったは、黒髪でカラフルなポンチョをまとった女の子だった。


「あ?姉ちゃん、おめえも可愛いじゃねえか…だが…」


「すっこんでな!」


 と、小柄男はその太い腕を振り上げ、拳を繰り出してきた!


 グシャア!


 刹那、カラフルポンチョの女の子は、いきなり小柄の男の顔面に思いっきりジョッキをぶつける!


「ぬがっ!!」


 ドサッ。


 小柄の男は、顎から床に沈んで完全に気を失ってしまった。


 一瞬の出来事に、店内の客たちが茫然と息をのむ。女店主もアーモンドのように目見開き、その様子を見ている。


 女の子は長い黒髪とカラフルポンチョを翻して、ジョッキの麦酒を飲む。


「ごくごくごく」

「ふいー」


 ポンチョの女の子は麦酒をジョッキの1/3ほど飲み干すと、女2人に絡んでいた大柄の男を一瞥する。


「乾杯、する?」


「な…、なんだお前は―!!」


 いきなり殴りかかる大柄の男、拳を繰り出すも、ポンチョの女の子はジョッキを持ったままポンチョをなびかせ、軽やかにいなす。


 ブン、ブン、ブン、ひょいひょいひょいっと。


 大柄の男、連打を繰り出すが、すべて空を切っていた。

 ポンチョの女の子は身をかわすたびに、ひらりひらりと長い髪とポンチョをなびかせる。


「くそぉ!素早い女!」


 すっと動きを止める女の子。


「じゃ、かんぱーい!!」

 グシャ!!


「ぎゃっ!」


 ガラガラガラ…ガシャン!


 女の子は、持っていたジョッキであっという間に大柄の男も吹っ飛ばした。


 どすん…!


 壁に激突し、床に崩れ落ちる大柄の男。小柄の男とともに完全にノックアウトの状態だ。


「へへん、サラサちゃんに拳を当てようなんざ、甘いってえもんよ!ヒック」


 サラサちゃんと名乗ったその子はポーズを決め、残っていた麦酒を飲み干した。


「ぷはー」


 茫然とする店内。


 ゴトリと壁に掛けてあった、深緑の竜の描かれた額縁が落ちる。


「ママさん、おかわり!」



■竜骨の街・商店街 昼下がり


 …以上が昨日、飲み屋「気骨稜稜」で発生した出来事である。


 ここは再び、昼下がりの竜骨の街。商店街の路地裏だ。


「あー」


 カラフルポンチョを纏ったサラサちゃんは頭を掻く。

 その派手な衣装から、金髪の男の子と女の子のきょうだいに声をかけられ、昨日、悪漢を倒したことを尋ねられていた。


 サラサちゃんはなんともバツの悪い表情をして、きょうだい達に弁明をはじめる。


「あれはねえ。酔っぱらいが煩わしかっただけだよ、私が強いとかじゃなくてさ」


「ママがね、『あの子はただもんじゃない、骨のある子だね』って言ってたんだ」


「言ってた!」


 男の子に続いて女の子も食いついてきた。二人はぴょんぴょん飛び跳ねる。サラサちゃん、ちょっと照れくさくなり、


「そうか、あなたたちのお母さんは、あのお店の店主さんなんだね?」


「そうだよー!」


ふむ。と観念した様子で、サラサちゃんはカラフルポンチョを羽織りなおす。


「で、私に何か用なの?」


「あのね、お願いがあるの」


「あるの!」


「…お願い?私にできることかい?」


「骨の上!」


「上!あれ!」


「骨ェ?」


 サラサちゃんは、きょうだい達につられて顔を上げる。


 白い石壁の家のスキマからは真っ青のぞかせる。


 この街が異様なのは、白く巨大なあばら骨が空に広がっていることだ。その骨がこの路地裏からも見えた。


 竜骨の街の真上にはその名の通り、「竜の骨」といわれる、巨大な竜のものとされる背骨と肋骨が、町を守るように覆っていた。


「あそこには白い花が咲いているの。ここからじゃ見えないけど」


「その花を摘んできてほしいの」


「まじか、あの高いところに…花?」


 怪訝な表情のサラサちゃん。


「昨日の騒ぎで、ママのお気に入りの花を活けていたビンが割れちゃって」


「ああ…」


 サラサちゃんは天を仰いだ。彼女のせいではなかったが、昨日花瓶が割れていたのを彼女は目撃していた。


 「おねがい」

 「おねがい」


 2人に詰め寄られるサラサちゃん。

 

 彼女は困った人は放っておけない性分のようだ。はたして——―



つづく!

次回Phase3 は明日10/18(水)にUPします!

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