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いつかの、多分、訪れたことが間違い無くあるこの景色に自分は、抑えていた感情をまだ抑えつけ、溢れてくる涙も堪え、流れてしまう涙の熱を許し際立つ岸壁の冬の荒れる海の前に、静かになるまでになるまで自分の心、抜かれぬよう抜かれぬようと忘我が襲う精神が過ぎてくれるのを待つ。自分が静かになるまでに、海鳥は粗めの風とのクロスを遊ぶともなく、岩肌の白い飛沫はあるに任せ、轟々と、行々とあるばかりであった。自分は、ポケットのタバコを取り出し、ようやっと落ち着いたと、岩肌に腰を下ろし、火を付け、深く吸い、鉛色の空に向け煙を吐いた、風と過ぎる煙と、自分の攫われた黒い感情の後の空虚と、吹き続ける風に、遠い遠い、深いくぐもりを割る陽で出来た空のあるがままを唯眺めていた。暫くし携帯が鳴った。まあ気持ちも片付けたし、ポケットから二つ折りの携帯を取り出し出た。

「お、今井、あかんことんなってもた、すまんけど、すぐ来てくれ、」

「伊間井郎、お前あほか?あかんて、ベビーシッターのなんかで、たいそうみたいな話し口すんな」

「ほやけども、わいなりに考えてみてぃ、赤ちゃん泣き止まんし、芝坂のオヤジ怖いし、赤ちゃん泣き止まんし、どうしたらい、実際んとこわいなりには赤ちゃん好きやきぃど、あんまり可愛いかし、触ることも出来ん、直ぐ来てお」

「お前、あかんぼも触れんと芝坂のオヤジのあかんぼ、引き受けたんか?」

「わいなり、考えてぃんきど、ミルクはお湯したらい、とかオムツとか、わいなりい、出来る思けきぃど、赤ちゃん泣き止まんから、怖いき、来てぃ、」

「お前、分かった、芝坂のオヤジの子やし、とりあえず行くけど、お前殴らせろ」

「なんでぃい、ずるいこてぃ言わんにし、来てぃお」

「泣き止まないままにあかんぼほったらかしたら、脱腸ていう不治の病なる、したら全部貴様のせいじゃ!」

「なりぃ、なりぃ、なら飛ばしてぃ直ぐに来てぃ、、ひぃ、」

伊間井郎からだった。赤ん坊もろくに触れないのにベビーシッターみたいな事を2日にしろ金の勢いに任せ引き受けただろう伊間井郎は阿保である。自分は荒れる冬の海を後ろに、伊間井郎の電話により更新仕切れない感情を感情にわなわなと塗りたくりながら、自分の軽自動車に乗り、自分らの街、帆ヶ殿に向かった。

伊間井郎の借家のドアを蹴りで叩いた。

「ほぅ、今井か、助かった、赤ちゃん、泣き止んだわ、小指で脇腹こそばかしたら、泣き止んだわ、暇泣きやてぃん、」

暇泣きなんて言葉は無く、伊間井郎の阿保な頭部がムカつき、腹にパンチを入れた。

「きぃき、んきぃ、すまんに、すまんに、おこらんない、おこらんないのお!」

「お前、芝坂のオヤジから幾ら貰った?」

「18万とわいの飯代でぃ5千円」

何故にいつもいつも、芝坂のオヤジは、ただひたすらにやってる自分には小遣い迄で、何故に、この伊間井郎にはバイトもしないで生計を立てれる位の金を捨てるようにやるのか、腹が立ち、

「お、金よこせ、な、お、」

「なんでぃい、何もおまえしてにぃやんきぃぃ、」

「どうでもいい、5万よこせ、な、来た代だ、」

「あかん、俺ぃの赤ちゃんとの2日の分、おまえにぃはかんきぃにぃんギィ‼︎」

いつものことでやはり伊間井郎はキレた、しかし、顔に蹴りを入れる迄でいつも終わる。

「おまえなんか、あっちの地獄いきぃギィィ‼︎‼︎」

あっちの地獄とは何処なのか、伊間井郎はいつも同じ捨て台詞みたいなことを言う。自分は土足で伊間井郎の家にあがり、数えてたんだろう、並べてあった18万の内の10万ほどをポケットにねじ込み、2日にしろ敏感で脆弱な赤ん坊である、伊間井郎だけでは無理と判断して、しかも芝坂のオヤジの60にしての初めての倅である、しかし伊間井郎に預けるとはやはり芝坂のオヤジは只者では無いと思った。

「きさん、おりぃの、おりぃの金ぞッ、キチガイきぃきぃギィー‼︎‼︎」

向かって来る伊間井郎の顔にパンチを入れた。

「お前だけでは無理や、赤ん坊がな、歯も生えて無い赤ん坊がなビスコ何か食うわけないやろうが、この阿保茄子、」

「ミルクだけやきぃと赤ちゃん、口さみしぃい、思てぃ、ごめん。」

という事で自分も結局、伊間井郎に一緒に赤ん坊を見てくれと頼まれ、この2日、芝坂のオヤジの子、沙扇君と芝坂のオヤジの北海道公演から帰るまで過すこととなった。

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