謁見の場では何が起こるかわからない
私をこの世界に召喚した王様や大臣が慌ただしく行動をしている。それは私がどんな勇者がやってくるのか楽しみにしていた時にだった。
聞いてみるとちょっとしたトラブルがあったらしいが、それは直ぐに終わったらしい。国の中に魔物が現れたということだったが、どこかの誰かが倒してくれていたことにより負傷者は誰もいなかったそうだ。その人物の特徴はマントを被った男で、手元には片刃の少し反った剣を所持していたという。私が持つ木刀に似ていたそうだが、私では無いと断言できるため必死に探しているらしい。
「まさかね」
一昨日のマントを深く被った男を思い出す。その男は武器こそ見えなかったにしろ、只の棒で殴っていたには扱い慣れていた。もしかしたら転生者か?なんて思ったが、日本人らしい考えのギルドを作った人は戦場で亡くなったためそれはありえない。その亡くなった人も刀を使っていたっぽいから、その人に憧れたという線もある。
「わからないけど、勇者の方が今は大事だよね」
私は用意された衣装に身を通し始める。待女が私の動きに合わせて着させてくれるため少し悪戯をしてみたくなるが、そんなことをして遊んでいては、この先待っている勇者と会うときの気持ちが作れなさそうだったため止めておいた。
「ありがと」
待女はいつも有り難うというとそれが私たちの使命ですからと、当たり前の様に言ってくれる。むしろ最初の頃に言ったときには、畏まれてしまいこちらが困ってしまうほどだった。
「さてと、そろそろ行きますか」
気合いを入れるために自身に向けてそう言う。それは気持ちを作る上では大事だったのだ。魔物と戦うのは平気であってもこんな人が集まる場所なんて緊張する。少しばかりの強がりからそんな言葉が出た。
謁見が始まると重苦しい扉が静かに開き始め、どんな人物がやってくるのかを知らせてくれる。そして私はその入ってきた人物を確認する。その人は綺麗な顔をしていた。事前に男だと知らなかったら女だと思っていたかもしれないが、それ以上驚くことに隙がなかった。これはスキルを手に入れて剣を思うがままに扱える私と同じくらいに強かった。
王様が有利に状況を進める様に思えたが、何だか聞いていると相手のペースに流されていることがよく分かる。こちらの方の宰相も頭が切れるのだが、相手の外交官も一筋縄では行けず、何故勝手に勇者召喚を行ったかについて問うている。
宰相はのらりくらりと躱すが、その核心を突かれるのは時間の問題だった。何故だろう、勇者のお披露目だったはずが勇者を召喚してしまった事への賠償金など、この場で話すような会話ではないことをしている。
そしてしまいには勇者である私を保護する内容などもあり、私はどうすればいいか悩んでいた。
王様はさすがに怒り始めた。顔を赤く染め上げて、言葉を選びつつも遠回りに嫌みのような言葉を言ってはいるが、外交官は強かった。逆に王が言い負かされる程で、最後には決闘をすることになってしまった。
「どうしてこうなった」
私は闘技場の待機室で頭を抱えて悩んでいた。私と同じくらい強いということに少し期待はしているが、出来るならば戦いたくないこと。それにあの勇者と仲良くしたいのだ。決して喧嘩などしたくない。
だが時間は残酷にも進んでいる。つまり平等に流れてると言うことだ。勇者と戦うことになってしまった。
「お互い大変ですね」
彼のその仕草や表情の出し方がタブル。姿形は違うというのに、人は死んでも馬鹿は治らないというのだからその生格さへもなおらないのだろう。
「そうですね・・・先輩」
声を小さめにして周りには聞こえないくらいの声で発する。聞こえる相手は今から試合をする目の前の勇者しかいない。勇者は頭を掻く仕草をした後に武器を手に持ち構え始める。
私もそれに合わせるように武器を構える。審判の声と同時にその試合が始まった。私の心は熱く燃え始めたのだった、目標が見つかったことに、探し人を見つけたことに。心がこの人だと言っているのだから違いない。私は彼に向かって走り出した。
ちょっと巻きでいきます。行事が色々入ってくるのでそのために巻きます。