人間離れ
目が覚めるとそこはいつもの日常へ戻っていた。
魔素は人を苦しめるほど濃くはなく、植物の成長を促進させるほどでしかない。
「生きてる」
手を握ったり開いたりして確認し、心臓の鼓動がはっきりと行っているのかもを確認する。
自然と涙が溢れてくるが、直ぐに止まる。
「守らないと、僕が家族を守らないと」
自分に決意の為の誓いを立てるように口にする。
「新しい力を貰ったんだ、そのために使わないと」
自分のスキルを発動させて確認する。
そこには強欲というスキルが目に入るため、ボタンを押すように触れる。
「『最適化』」
唱えると身体が半悪魔へと変わり、それと同時に力の使い方も分かるようになる。
「強欲か。見ただけで魔法の解析と、コモンスキルの入手。悪魔の身体なら魔法の魔素を吸収できる」
強欲という名を冠しているだけにその力は強い。
だが、そのスキルは貸し与えられているだけだが、これでも劣化板。本物はどれほどまでに強いのだろうか。
「欲しい」
強欲の悪魔と、スキルをその身に宿したためなのか、欲求が高まる。
だが、一歩後ろから眺めているかのように、頭が回りそういったことをすることはない。
「解除」
身体の周りを覆う魔力は無くなる。
空気中に魔力が漏れるが、漏れた魔力さえスキルの御陰で直ぐに自分の元へと戻る。
「人からどんどん離れて行ってる。でも守る為ならこれくらい」
自己犠牲の様な気持ちのまま、訓練をする。
幸い、悪魔を吸収し、精霊を吸収したため、魔法にも戦闘にもどう動かせば分かる。しかし、知識だけでは身体は動かないため、擦り合わせるように動かす。
「『最適化』」
身体を武器を扱う為に最適化する。
魔力が身体を包み、視点は少しずつ高くなるが幼稚園児から小学校高学年程までしか大きくならない。
「戦いに適したからだには、元の身体は幼すぎたのか」
理解したことを口にする。
それともう一つ分かった事がある。
「半精神生命体、悪魔と精霊を取り込んだ影響が身体を成長させたのか。戦うイメージを意識しなければもっと背を高くできるし、太らせることも出来るか」
人間離れが進む身体に少し寂しい思いをしながら、スキルを解除する。
「変身するときに身体が疲れにくくなったとかも、その影響か」
前は一度変身すれば倒れそうなほど疲労していたのも、今では何回でも行える感覚さえある。
他にも変わったことがあり、精霊と悪魔の思考領域を掌握しているため、多重人格のようにも行える。
分かった事は多いが、分かった事が多い分人間離れが分かる。
「人間離れか、俺はもう考え方も変わってきている。これは元に戻さないと怪しまれるな」
精神の変質が起こっている。精神耐性や、精神汚染耐性を手に入れた方がいいかもしれない。
いや、最適者を使えば。
「最適者、俺だけの精神を最適化しろ」
精神の最適化、つまり考えさえも変わるかもしれないのに、その考えに至らなかった。
合理的な考えしかできない者へと変わろうとしていた。
「ノー」
最適者は初めて俺に言葉で返した。そのことに驚きつつ、何故だと聞く。
「マスターはマスター。適した考えを、行動をするのは私だけ」
「自我があるのか?」
「自我あるスキル、参考に私も」
「そうか」
私の仕事を邪魔をするなって感じなのか。
なら、聞いてみるのもいいか。
「最適者、俺の精神を元に戻すのはどうすればいい?」
「マスター、解除すればいい。全てを」
「分かった、解除する」
思考が元へと戻る。それと同時に倒れる。
広がっていた思考領域を元へと戻した反動が来たと、後から最適者から起きたときに教えて貰った。
書き方がおかしいのは同一化の影響からでした。書き方を間違えたわけではありませんのでご安心を。