精霊の記憶 その4
この話の前の話を先に読み直してください。
前回の話を一から書き直しました。
書き直した言い訳を活動記録に書いときますので読みたいと思う人は読んでください。
魔法陣から威圧を放ちながら這い出てくる者がいた。
その者は人の身をしていながら、人では出せない威圧を放っている。
威圧を受けた者は当てられただけで心を折られた。
だが、その中でも戦いを挑む者もいる。
威圧で心が折られた者には勇敢に見えたが、下手に心が折れないーーー強さの度合いが分かるーーー者には無謀としか思えなかった。
「面白そうな奴から召喚されたと思いきや、信じてた仲間に殺されたとか、最高に面白いじゃねえか!ま、今の俺にとっちゃ最悪だけどな」
彼はそう言うと残っていた兵を殺していく。
逃げ惑っても殺され。
戦いに挑んだ者も殺され。
悪魔に一撃を与えるかと希望を与えられてから殺され。
悪魔の隙を突いての攻撃に見せかけられて殺され。
全ての者は悪魔に殺された。
そんな中で悪魔はエルフにも手を掛けた。
「た、だずげでぐれ"」
一人のエルフの首を少しずつ力を込めながら絞めていく。
エルフは藻掻くが、悪魔の力の前では意味など無かった。
そんなエルフの姿を見ながら悪魔は嗤う。
「召喚主を殺したお前は殺さないとなあ」
「お"、お"れ"は、帝国の"一員じゃ、な"い"」
「帝国の仲間をしたじゃないか、俺の召喚主を殺したんだから、お前もその仲間だ」
悪魔は手に更に力を込めていく。
エルフは殺されまいと指をその手の間に入れていくが、爪で自分の首を傷付けるばかりで一向に離れない。
遂には彼の指の爪が剥がれるが、悪魔はそれすら嗤いながら言う。
「どんなに痛かったんだろうなあ、仲間に裏切られたのはどれくらい痛いんだろうなあ。仲間を助けようとしてその仲間に殺されるなんて滑稽な話だが、どれほど心が傷ついたんだろうな」
「や"、や"、め"、ろ"」
「分かった止めてやると、これをし終わったらな」
そう言って悪魔はエルフの首を折って終わらせる。
悪魔の手から離されたエルフだった物は、重力に従い地面へと落ちていく。
地面に落ちたその物を見て悪魔は言う。
「お前の魂を痛ぶりながら喰ってやるよ」
その声に物は反応しない。
悪魔は舌を使って目に見えない何かを掴み、口の中へと入れる。
ムシャムシャと噛んだり、石臼の様に擦り合わせたりしながらじっくりと食べていく。
その口の中で悲鳴が聞こえたような気がしたが、耳では聞こえなかった。
「ふう、帝国の場所は分かった、これから殺しに行くか」
悪魔は静かに歩み始める。
その目に映った生物は悪魔の睨みで殺される。
帝国の者など分からない気もするが、殺した者の魂を貪りその知識を得て殺し回った。
帝国の兵はそれに抗うが、抵抗する間もなく死んでいく。
王へと近づくにつれ、兵も強くなっていくが悪魔も魂を喰らうにつれ強くなっていた。
悪魔は城へと入った。
その行動が悪魔のこの世の生を終わらせる原因となるとは知らずに。
悪魔の目の前に一人の男が立つ。
その男は見ただけでは分からない強さがあった。
だが、悪魔はその強さが分かる。
自分の威圧で怯まずに挑んでいるのだからそれなりの強さが分かるが、悪魔の勘によってその強さの底が大まかだが分かったようだ。
「面白いじゃねえか、これだから人ってのは面しれえ」
「君は暴れすぎた。だから君には消えて貰う」
「やってみろよ」
「哀れな魂よ救済されたまえ、そして安らかに眠れ」
悪魔と男の戦いが始まる。
男の服装は教会の動きにくそうな白い服で細々とした魔法を放つ。
それに対して悪魔はズボンと長袖、そしてマントを羽織りながら戦う。
悪魔の方が有利に見える服装だが、男はその服自体が魔法の触媒となってるのか、少ない魔力で沢山の魔法を放って悪魔へ牽制している。
「おらおら、どうしたあ!」
だがそれでも、悪魔の一方的な戦いへと移り変わっていく。
悪魔の連撃により男は魔法の発動が少なくなっていく。
しかし、その戦いも終わりを告げることとなる。
辺りが目映い光で覆い尽くされる。
その光は安心感を与えるような温かい光だ。
悪魔にとっては不快でしかないようだ。
「聖結界かよ!!」
悪魔の動きはどんどん鈍くなっていく。
時間が経つにつれ息も上がって行っている。
それに連なるように、男の動きは速くなっていく。
それは魔法だけでなく、身体的な面でも。
「浄化されろ」
悪魔にそう男は言う。
そう言いながら行った攻撃が決め手となり悪魔は死ぬこととなった。
悪魔は最後に問う。
「帝国は何で戦争をふっかけた?」
「死ぬ間際の君に言っておいてもいいか。あのエルフの国にはね勇者の卵が居たんだ。そのエルフを使って魔国に戦争を仕掛けようとしたけど断られちゃってね、そんな勇者は要らないから殺そうとしたのが切っ掛けだよ」
悪魔はその言葉を聞くと塵となって消えていく。
男は悪魔が完全に塵になるのを確認するとスキルを発動させる。
「スキル『鎮魂歌』」
彼はそう言うとスキルが発動される。
男から発せられる声は安らぎを含んでおり、悪魔の塵から何かが飛んでいくのが見えた。
その何かは魂だというのが何となく分かる。
魂は天に昇って消えていく。
そこで記憶は終わった。
読んでくださり有り難うございます。




