魔法素質!
「ウィルが!ウィルが元の姿に戻ったの!」
「ま、まじか!」
「ほら見てみて!エルフみたいな耳じゃなくて仏の耳に戻ってる!」
「ああ、でも髪の色は戻ってないが・・・」
「大丈夫よ!髪の色が白くても!」
「魔法の素質とか変わったりしてないのか?」
「わかんないわ!お婆ちゃんに聞けば分かるじゃない!」
え、またお婆ちゃんの所に行くの?
やだ、これ以上お婆ちゃんの残念な部分を見たくない。
前なんか身体の奥底まで見られる感覚があったもん。
魔法の素質を確認するなんてやられたら、どんなことが起きちゃうんだよ!
「ああ、取り敢えず今日も行ってみるか」
「そうね!それでこそ私の夫よ!」
逃げ道など無い。
嫌だと拒否をしても子供の身体。
逃げることなど出来ずに連れてかれた。
・・・
「どうした?」
お婆ちゃん。
ああ、お婆ちゃん。
真面目な顔して、なにいってんの?
どうせ心の中では孫だあああって叫んでんでしょ?
僕には分かっちゃうんだからね!
という現実逃避をしながらお婆ちゃんの家の中に入れられた。
「なに?ウィルの魔法素質が知りたい?」
「そうなのよ!ウィルが人間に戻ったけど髪の色までは戻らなかったからね!」
「確かにな。髪の色は魔力の色を現すって言うからな」
「そこでお婆ちゃんにお願いなのよ!ウィルの魔法素質が変わってないのか調べて欲しいの!」
「わかった、調べてみる。ちょっとウィルを貸せ」
「さっすがお婆ちゃん!大好きだよ!」
あ~お母さん離さないで~。
お婆ちゃんがお母さんの目の見えない位置に行ったら駄目な人になっちゃう。
やめて、離さないで!
「もう、ウィルったら。おばちゃんの所に行って」
あ~、お婆ちゃんの手に移ってしまう。
無理だ。
もう逃げられない。
「じゃあ調べてくる、待っててくれ」
「おっ願いね~!」
止めて、扉を閉めないで。
扉が閉まったら最後、もうお婆ちゃんの残念が湧き出ちゃうから!
ああ。
”バタンッ"
そう音が鳴って扉はしまったのだった。
・・・
「ふふふ~ん」
鼻歌を歌い始めちゃったよ!
これからどんどん残念な部分が出てくるんだろ!
分かってよ!
自分の事なんだから気付いてよ!
残念美人だって!
お願いだから!
「さ~て、魔法水晶はどこかな~?魔法素質が分かる水晶はどこかな~?」
止めて!
お母さんが隣の部屋にいるんだよ!
聞こえたらどうするんだよ!
ここまで知られないように守った残念美人知られちゃうよ!
気付かれちゃうんだよ!
もう止めて、僕のライフはゼロだよ!
「あった~!」
水晶が見つかったみたいだ。
透明な唯の水晶にしか見えない。
占い師とかがよく使ってるあのガラス玉!
投げてよし!
投げてよし!の水晶玉だ!
「ちょ~っとウィル~この水晶に手を触れてみて~」
ああ!
手を引っ張られたら自分の意思なんて関係ないじゃん!
強制じゃん!
手が触れると水晶は輝き出す。
それと同時に身体から魔力が抜けていく感触があったが・・・
ともかく水晶は輝く。
輝く光は色を変え赤、オレンジ、黄色といった感じに色が変わり七色に光る。
最後の最後でしろになるまで続いた。
白?
なんで最後に白になるの?そこは黒じゃないの?
疑問が浮かぶ。
だが、お婆ちゃんは脳天気な表情をしている僕とは違って、真剣な顔をしていた。
残念美人の欠片も漂わせなかった。
「全色に加え白とは・・・この子は勇者にでもなったのか?」
勇者!
今、お婆ちゃん勇者って言わなかった!
服を引っ張るとお婆ちゃんは意識を戻し、さっきと同じような残念美人に戻った。
「大丈夫~。怖い顔しちゃってごめんね~」
大丈夫!
僕が勇者って聞けたから全然大丈夫!
「教会が動き出すわ」
ボソッと何かを言われた気がしたが、勇者というフレーズに夢中でしっかりと聞くことが出来なかった。
・・・
「魔法素質が分かった」
「そ、それでウィルは!」
「少し二人だけで話そう」
「どうしたの!まさか・・・ウィルの素質はーーー」
「大丈夫だ。少し話がしたいだけだ」
「わ、わかった」
お婆ちゃんとお母さんが隣の部屋に行く。
お父さんと僕でこの部屋で待たないといけないのか。
お父さん、そんな困った顔しないで、なんたって僕は勇者なんだから!
なんでも出来るさ!
ゲームみたいにね!
僕はそう思いながらお父さんの手をつかむ。
お父さんはなんだかほっとした顔に戻っていた。