11話 残念美人
引っ張るな。
引っ張るな髪を!
狸寝入りをしていると誰かが髪を引っ張ってきた。
言葉を出すわけにも行かず。心の中でそう念じる。
体がエルフになっちゃうし、狸寝入りしていると髪とか肌を引っ張ってくるし、なんだよこの状況!
誰か説明してくれ!
って、母さん!
俺を置いていかないで!
安心したような顔で置いてかないで!
まだ俺はここにいるよ!
このエルフの家に置いてかないで!
そんな事を願うが、安心した顔のままこの家の扉から出て行くのだった。
部屋には扉を閉じた音が悲しいくらい響いている。
どうしよう?
もしかして俺って売られちゃったの?
エルフに変わるような俺は珍しいからって売ったって事?
って、さっきから俺をつついてくるこいつ等は何だ!
いい加減にしろ!
と、エルフの人が近寄ってきた。
怖い。
俺は何をされるんだ。
「帰ったな。よし」
にやっと笑ってる。
俺に何をする気なんだ。
冷静というか、落ち着いている雰囲気のせいで何を考えているか分からない。
コレは本格的にヤバいのかもしれない。
「おばあちゃんですよ~♪」
先ほどまでの落ち着いていた雰囲気とは違い、デレデレとしている。
いつもは厳しいおじいちゃんが孫の前ではデレデレしてる奴と一緒だ!
え?
今、このエルフの人自分のことをおばあちゃんって言ったよな?
俺のおばあちゃん?
「ウィルの体がエルフになって驚いちゃった。でも・・・あれ?ウィルが起きてる!」
やべ!
驚いて目を開けちまった!
それに何だ?
俺がエルフになったとか?
気絶してる間に何があったんだよ。
「あれ、泣かないな?話通りに本当に手の掛からないんだね」
おばあちゃん、さっきまでの出来る人って感じのオーラは何だったんだ。
体がエルフになったことよりもそっちの方が気になって仕方が無い。
どうしよう、俺に自我があるって知ったらどんな反応するんだろ。
不意にそんな考えが浮かぶが、今は関係が無い、そう思って消し去るのだった。
「このこの~、柔らかいほっぺしやがって」
つつくな。
あ!
いつの間にか引っ張ってる奴がいなくなってる。
まさか、おばあちゃんが仕向けてたとか?
いや無いな。
する必要が無い。
やるなら自分でやるって感じだし。
「くりくりとした目つきで私を見てきて・・・萌え死にさせたいのか!」
冷静?
コレは違うな。
残念な人だ。
仕事はすごく真面目にやるのに、日常生活がだらしない感じの人だ。
多分。
この人あっての、俺の母親か。
小さい頃にされた思い出からなのかな?
多分それから来てるんだと思う。
だって、行動と越していることが殆ど同じなんだもん。
おばあちゃんに弄られることに疲れ、俺はそのうち眠ってしまうのだった。
その時思ったことがあった。
家の家系、残念美人過ぎる、そう思うのだった。
メモ帳のアプリから、小説を書く専用のアプリに変えてみた。道具とか登場人物とかの細かい設定が出来て楽しかった。
体調は殆ど直りました。更新は前よりも遅くなりますが、一週間に一度は更新する感じになると思います。