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1話 酒を飲んだら海に呑まれた

 夜空から降り注ぐ光によって海の中は照らされている。その照らされている海の中ではたった一人の男が漂っている。

 男は薄れゆく意識の中、直前までの出来事を思い出していた。

 それはいつもの日常と変わらなかった。誰かを救うために車に轢かれるわけでもなく。神様の手違いで死んだわけでもなく。殺人鬼に腹を刺され死んだのでもなかった。それは日常的に起こっても可笑しくない出来事だった。それはーーー




・・・




 パソコンのキーボードがカタカタと音を鳴らす中、時計を見た誰かが口を開き呟く。

「あと少し」

 他に会社野中に社員が居る中で小さく呟かれた。だが、その声は他の社員にも届いたようで少しだけニヤリと笑う者までいた。そしてその言葉がきっかけとなった。その様は自転車競技でゴールの手前まで来てラストスパートを掛けるように早くなる。その速さはこれから先にある楽しみを今か、今かと待ち遠しいのを現すように奏でていた。

 そんな中、纏め役である人物が喜びの声とともに声を出した。先ほどまでとは違い、誰の耳にまで届くように向けられていた。その声には喜色が混じっていた。


「終わった!」


 その声が元気よく響いていた。声を聞いた他の社員も一様に一斉に身体を伸ばし始めた。椅子にもたれ掛かりながら行っている者もいるため、古くなったのか摩耗してなのかギチギチと音を出している。いつもなら煩い!の一言で止めさせられるようなことも今の彼等にとっては気にする問題ではなかった。


「う~」

「終わったよ、はは」

「あ~疲れた」


 口々に話し出す。中には首が凝ったのか同僚に肩を揉ませたり揉ませ反したりなどしている者もいる。他には首を鳴らしたりなどそれぞれ異なったことを行っている。

 彼等の中に渦巻く喜びはとある人物の一言によって爆発する。


「飲み会だ!飲み会を始めるぞ!」


 皆が喜び始める。中には喜びのあまり踊ってしまったりする者がいたり、抱きしめ合い喜びを分かち合っていたりしていた。だが、最高潮に達していた者は、さらにその上をいった者がいた。それは皆の気持ちを爆発させた声の主によって。


「皆には迷惑を掛けた!だから、俺の奢りだ!」


 発狂しているんじゃないかと思うほどに皆がおかしくなっていく。どこかの悪役のキャラの台詞を言ってみたり。気分の高揚に便乗して気になっていたあの子に告白をしている者までいた。その気分を遺したまま飲み会へと移る。会社の一室には失恋したショックから動けずに、一人だけポツンと取り残されていた。




==<飲み会の席>==




 時刻は11時を過ぎた辺りだろう。

 とある居酒屋の一室。その飲み会は居酒屋の一番大きい団体部屋で行われていた。


「「「かんぱーい!」」」


 ”カンッ”というガラスでできたジョッキが打ち付けられ音が響いている。

 料理や愚痴をつまみにそれぞれが飲み始める。


「いや~地獄でしたね~」

「もう、あの部長の言葉は信じない!」

「それ、いつもいってんじゃんw」


 不定期に開かれる飲み会。誰もが会社での不満をまき散らしていた。その飲み会に遅れてやってきた人物が居た。

 それは、先程告白し逆砕したばかりの社員だった。


「お、失恋魔がやってきたw」

「何回やるんだかねw」

「清花ちゃんもそろそろOKだしたら?」

「嫌ですよ!もう、私の好きな人は他に居ますし!」


 会話のネタとされ、その社員はその中で聞いた言葉により再度落ち込んでいた。

 飲んでは叫んでを繰り返して、幾つもの店を渡り歩いていた。

 その途中で誰かが酔っぱらいになりながら思いついたことを言葉にする。


「お~っし、海に行くか~!」


 それは真夏のクーラーがそこまで効いていない会社の一室。そこで一日汗を掻きながら必死に働いていたた事からか、誰もそれを断るなどしなかった。むしろ、皆が皆賛成しているほどであった。




==<近場の海>==




「いや~冷たいね~」


 海に足を突っ込みながら誰かが言い始める。それに続くように靴下や靴を急いで脱ぎ、スーツの上も浜辺に乱雑に置いて誰もが入っていく。ワイシャツが濡れようがスーツが濡れるようが気にしている者は誰もなかった。大仕事が終わったため、久しぶりの休暇で誰もが浮かれていたからだ。その浮かれている中にも俺はいた。


「きゃ~冷たい~」

「お~どれどれ」

「ホントだすずし~」


 水を掛け合ったり、鯨のように潜ってから浮き上がったりとそれぞれ異なった動きをしている。

 それにつられるように俺は海に入った。

 瞬間。そう言い表すしか無かった。心臓が締め付けられるように痛くなり、その場で倒れ込んでしまう。誰も気にはしない。遊びの一環だと思っているのか助けに行かない。

 一分、二分と時間が過ぎていく。

 五分が過ぎた辺りで皆が気付く。

 ”遅すぎないか?”と。

 それに気付くと急いでその人を探し始める。

海の中を照らす僅かな月の光を頼りに・・・




==<海の中>==




 身体に力が入らない。

 頭がぼーっとしてきた。

 目が最初痛かったがその痛みはもう無い。

 海面を前に流されている。

 口や鼻から空気が抜けていき、肺や胃に海水が流れ込んでくる。

 酸素が身体の中を巡らないためなのか目の前が真っ白になっていく。


 そこでここまでの道のりを思い出していた。


(あー、これが走馬燈か)


 思考が希薄になっていく中でそれを見ていた。

 感じている時間は、今流れている時間よりも早いのか遅いのかがよく分からない。その御陰なのかせいなのか今現在も生きている。

 不意に頭の上に影が出来る。それは魚が頭の上を泳いだために出来たのだと気付かされる。

 目に付くと不意に思いついたことがあった。


(魚みたいに海に適した身体だったら死なないで生きていられるのにな)


 その願いはどこかの誰かの元に届いたようだった。


『その願い聞き届けました。スキル<最適化>を構築・・・刻印しました』


 なんだ・・・?

 さい・・て・・・・き・・・・・か・・・・・・・・・?


 意識は海の中に呑まれていく。彼の耳に、仲間の探す声など届かなかった。届いていれば・・・変わっていたかもしれないが、それは儚い夢なのだろうか。

 だがしかし、その機械的なその声が彼の行く道に新しい選択肢を与える。それと同時に新たなる人生の幕開けとなるとも知らずにーーー

 大幅な修正中。内容は変わらないのですが情景描写、三人称視点の追加をしています。

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