第32話「王になりました」
今回も大変遅くなりましたm(_ _)m
短いですが、更新させていただきました。
兄さんは、ゆっくりと俺に近づいてきた。
そして、いつものように微笑みかける。
「おめでとう」
兄さんは言った。
「お前が積年の願いが叶ったな。王になるという夢が」
「俺が? 王!?」
「何を驚いているんだ? そりゃそうだろ? お前の指導の下に政治を行うんだから、それは王の権威に他ならないだろ」
言われてみればそうだ。
今の政治を変えたい一心だけで、そこまで考えが及ばなかった。
現役ばりばりの父と、後継者として血のにじむような努力を重ねてきた嫡男を差し置いて、王へ即位。
王も兄さんも、いい気分はしないはずだ。
兄さんは気を悪くしたんだろうか?
「今の俺に、王たる資格があるとは思えません。父に引き続き、政治をつかさどっていただければ、それで満足です」
「満足? 神からの啓示を受けているのは現王じゃなく、お前なんだろ?」
「それは、俺が、神と王をつなぐパイプ役になれれば」
「それで王は言われたまま動く人形するってことか。影の指導者にでもなるつもりなのか? 国がゆがむぞ」
兄さんにしては強い口調に感じる。
「ジャン、お前がやるんだ。数々の事業を成功させ、マジカが使えないハンデを乗り越え、無傷で政権を奪取し、かつ、民から慕われているお前が」
兄さんはそう言って後ろを振り向く。
「王よ。そうは思いませんか?」
王は、議会の王座から、仁王立ちのまま、こちらを見下ろしている。
あいかわらず表情が読めない。
強面にしたモアイ像に似ている。
「すでに議決されたはずだ。ジャン=ジャック・ド・オーギュスト王子に政権を移行する、と。ジャンよ、覚悟を決めろ。これは国の決定だ」
ずしりと、肩に重みを感じたような気がした。
王。
たしかに、俺は母さんに誓った。
俺は王になると。
でもあのとき、本当にその意味を分かっていたんだろうか。
今も。
「お前に感謝しなくちゃな」
俺の胸中をよそに、兄さんはそう口を開いた。
「現王を引きずりおろし、俺を自由の身にした。俺の2つの望みを一気に叶えてくれた」
兄さんは、王の政治を良く思っていなかった。
それは知っている。
「自由の身?」
「そうだ。もう俺は王の後継者ではなくなったからな。これからは自由にさせてもらうさ」
「兄さんは、後継者でなくなっても王族であることには変わりありません。俺には兄さんが必要です。俺とともに、国を治めていただけませんか?」
「嬉しいね。でも、俺は俺で自分の理想を追ってみたいんだ。お前がやっているように、どんなにバカにされても、どんなに成果が出ないときがあっても、周りの人のために自分の信念を曲げずに突き進んでみたい」
「兄さんのやりたいことって?」
「政治」
だから、お前がいないところに行きたいんだ。お前のそばにいたら、きっとお前の夢が俺の夢になっちまうからな。
そう言って、兄さんは去って行った。
政権は俺にゆだねられた。
政権は奪取したが、それで問題は何ひとつ解決していない。
民は相変わらず極貧の中にあるし、隣国の脅威はこれから増すだろう。
時間はない。
でも、構想はある。
やってやる。
俺がこの国を救ってみせる!
タイトルがおかしくなってまして、申し訳ありませんでしたm(_ _;)m
修正致しました。




