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王族に生まれたので王様めざします  作者: 脇役C
第二章 少年期

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第16話「打ち合わせしました」

またもや遅くなりました(T_T)

「その不信任案とやらははいつ出せばいい?」

 パトリックはそう言った。

 そう言ってくれた。


 パトリックの部屋に月明かりがこうこうと射し、パトリックの横顔が照らされる。

 瞳に光が見えるのは、月明かりのせいだけではないだろう。

 以前より、俺をまっすぐ見据えているように感じる。 


「時が来たときに、お知らせします。まだ準備が足りません。今提出したとして、一笑に付されて終わるだけでしょうから」

 そう伝えると、

「準備、か。何か手伝えることがあるか?」

と、聞いてくれた。

 おお、なんだかものすごく好意的。

 素晴らしい手のひら返し。


「どうした?」

 顔に出てしまっていたらしい。

「いえ、あまりに協力的なので驚いてしまいました」

 そう言うと、パトリックは顔をしかめた。

「勘違いするな。父のことも、お前のことも、すべてを信じたわけではない。お前に俺の意に反することがあれば、即刻手を引かせてもらう」

 変に警戒させてしまったか。

 まあ、自分の社会的な立場、いや命を賭けて、この話に乗ってくれたんだ。

 慎重になるのは当然だろう。

 むしろ、それくらいの注意力があったほうがいい。


「ひとつ、今の段階でパトリックさんにお願いしたいことがあります」

「なんだ?」

「パトリックさんのお知り合いで、この国に、この政治に、不満を持つものに声をかけてください。それが、バラン侯爵に対するものだったら、なおいい」

「仲間に引き入れるのか?」

「いえ、話を聞くだけでいいです。話を聞いて頷いてください。お前の言うことはよく分かると」

「話を聞くだけ? それに何の意味がある?」

「布石です」

「布石?」

 うなずく。

「不信任案を提議したとき、きっと貴族たちは驚くはずです。“あのバラン侯爵の懐刀、パトリックが、反逆の意を示した”と」

「そうだろうな」

 パトリックはうなずく。

 あいかわらず自己評価高いな。


「そのときに3つの反応があるはずです。1つは、パトリック氏に付こうとする者、もう1つはパトリックさんに反発、弾圧しようとする者、もう1つは、どちらについたほうが得か、様子をうかがうもの」

 俺がそう言うと、パトリックは顔をしかめた。

「俺が反逆したからといって、バラン侯爵の地位はゆるがない。俺に付こうとする者がいるとは思えない」

 自己評価は高くても、そこらへんは冷静に考えられるらしい。


「バラン侯爵のふところ刀が、今の体制に不満を持っている。その話が、一人歩きしてくれれば成功です」

「何が成功なのか良くわからないが?」

 パトリックは、よくわからないというような顔をした。


「仲間になってくれるなら、それが一番いいです。しかし、仲間にならない者を引き込もうとして、そのことがバラン侯爵に伝わるのは非常にマズいのです。貴方はバラン侯爵勢力のナンバーワンの実力者です。ですが、仲間を集めようとしたり、武器の調達など、“行動”に動いたものに対しては、それなりの態度で臨まないといけません。それがパトリックさん、貴方であっても」


「それなら、何もせずに普段通りに過ごしていたほうがいいということか?」


「いえ、そうではありません。“パトリックさんが裏切るかもしれない”と、周囲に思わせることは大切なことです。不信任案を提議したときの反応は、大きくしたほうがいい。バラン侯爵にもパトリックさんが裏切るかもしれないと思わせてしまうことになりますが、話やウワサだけではパトリックさんをどうにかしようとまでは思わないでしょう。それだけパトリックさんには価値がありますから」

「窮屈だな」

 パトリックさんはそう言った。

 領主の息子とはいえ、今まで兵士として生きてきて、こういった駆け引きの経験はないのだろう。


「けれど、やってもらわないといけません」

 ここまで来たんだ。

 窮屈だからやらないとは言わせない。

「わかっている。乗りかかった船だ。与えられた命令は遂行しよう」

 兵士が言う命令の意味は重い。

 その人が遂行すると言った。

 心強い。


「Xデーはそんなに遠いわけではありません。このミッション、やり遂げましょう」 

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