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王族に生まれたので王様めざします  作者: 脇役C
第一章 幼少期

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第16話「王に会いました」

 王に謁見することになった。


 王が水源を掘り当てている者に会いたがっていると。

 王は父親で、水源を掘り当てているのは俺。

 つまり、俺は父親に会う。


 やあ父さん、調子はどうだい?

 やあジャン、絶好調だよ。今日は天気もいいし、散歩でもdo-dai?


 そんなふうにフランクにはいかないだろう。

 王は王としての立場があるだろうし、俺は言うなれば王族のお荷物だ。

 息子としての愛着があるかもしれないし、それとも嫌われているのかもしれない。

 

 緊張するな。


 今回は何も悪いことはしてないだろうし、むしろいいことをしたと思うから何も問題はないはず。

 でも許可を得たとはいえ、ほぼ勝手にやっていることだし何か文句を言われるのかもしれない。



 役人と無言の行進が続いている。

 馬に乗せてもらって、役人の前に座らされている。

 なんか世間話でもしたほうがいいのか。

 沈黙が続くのは苦手なんだよな。


 先生もモイも村に残って俺ひとりだ。

 先生は無理にしても、モイについてきてもらえば良かったな。

 なんとなく心細いな。

 いやいや、子どもか俺は。5歳児だけど。

 父親に会いに行くくらいで心細くなってどうする。

 

 父親か。

 前世の父親よりマシだとしても、今世の父親も好きになれない。

 ちょっとメンヘラっぽいけど一途な母親を、マジカを使えない俺を生んだことで別居。

 貧困にあえいでいる村があるのに、城内は豪華絢爛ごうかけんらん


 そんな父親を擁護する母親が理解できんな。

 惚れた弱みってやつなのかもしれない。

 先生の話によると、貧困の村をただほったらかしにしているわけでもないみたいだが。

 どちらにせよ、俺は父親のことをあまり知らない。

 知らない人のことを勝手に判断してはいけないな。



「ジャン=ジャック王子、水源を掘るアイディアは本当は誰のものだったのですか」

 役人の水級魔術師が聞いてくる。

 お、俺がやったって信じてないなこいつ。まあ気持ちは分かる。


「私です。信じてもらえませんか」

「にわかには信じられませんね。私も子どものつかいのつもりはありません。これでもし王子の嘘であるならば、それ相応の責任をとってもらいます」


 ガキの話を真に受けて、子どもの使いの何ものでもないと思うが。

 そのうえ、子どもに責任をとれと。

 どんな大人だよ。

「責任は私がとりますので安心してください」

 うさんくさそうな顔をしたが、また無言の行進となった。




 城がやがて近づいてきた。

 そういえば、正門から城内に入るのは初めてだ。

 いつも先生のマジカで侵入しているからな。


 正門の扉が開かれ、橋を渡る。

 城壁は高く、堀は深い。堀には水が張っていない。

 いつも見てるから珍しいものではない。

 入る場所が違うだけだってのに、なんだか初めて入るような心持ちになるな。


 謁見の間は、二階の奥らしい。

 やたら長い階段を上り、でかい肖像画を通り過ぎ、扉を何回か開け、扉を開けるごとに通路の装飾品と見張りの騎士が豪華になっていくようだ。

「ここです。ここを開けると王がおわします」

 扉は開かれた。


 父親は王座に鎮座していた。

 王室はほの暗く、父親の表情はうかがい知れない。

 王座は数段高くなっており、背もたれは高く、金色のワシが乗っており、ひじ掛けは金色の獅子、足かけは金色の亀、ヒョウ柄の絨毯じゅうたんが敷かれてあった。その玉座は動物園なのか。


 王がまとう衣服は赤を基調として、白やら赤やら黄色やら、クリスマスを思い出した。

 そんなに着込んでいるから見た目はでっぷりとしていて、ふくろうみたいだ。

 そんなに着込むことに意味はあるのか。寒いのか。威厳を出したいのか。

 

「ウィールよ」

 王は口を開いた。

 声量があって、重く響く声だった。

 実際のところは分からないが、声だけ聞いたら名君だと信じてしまいそうになるな。


「予は、水源を発掘している者を連れてくるようにいったはずだが?」

 王も信じてないようだ。

「はっ。おそれながら、ジャン=ジャック様が、その方でございました」

 ウィールと呼ばれたのは水級魔術師だった。

 ウィールは膝をつき、少し声を緊張させながら答えた。


「お前は冗談を言っているのか? それとも予を愚弄しようとしているのか?」

「いいえ、滅相もございません。村の者たちはジャン=ジャック王子と申しており、実際に王子を中心に村は動いているようでした」

 ウィールは頭を下げ、額に汗を浮かべながら弁解した。


「父様、その者が言っていることは本当です。僕の指示の元、水源を掘り当てるように村人に指示しました」

 俺がそう言うと、王はこちらを見た。

 薄暗いのに、鋭い眼光を感じられた。


「王と呼べ。立場をわきまえろ」

 怒られた。

 親子でも、王と呼ばないといけなかったのか。

 それとも親子の縁は切られてしまっているのか。


「ジャンよ、お前は別邸にいるはずではないか。なぜ城外にいた?」

 説明しづらい。

 先生の名前を出してはいろいろと面倒そうだ。

「見張りの目を盗んで外に出ました」


「なぜ、地下に水源があると分かった」

「地面を掘って遊んでいたら、たまたま水が出たのです」

「20ベンだ。子どもが掘れる深さではない。マジカが使えないお前ならなおさらだ」

 4ベン1メートルなので、5メートル。

 たしかに子どもが掘れる深さじゃないか。


「モイという男が掘ってくれました」

「計画的に水源の発掘工事がおこなわれていると聞いたが?」

「村が水に困っていると聞いたので、村のみんなに意見を聞きながら進めただけです」

「……」

 王は黙る。


 沈黙の時間が流れた。

 何を考えているのだろうか。

 暗くて分からないが、子どもの戯言だと思っているのかもしれない。

 まあ、そう思うよね。


「ジャン、お前の言葉を信じよう」

「え?」

 思わず声が漏れてしまった。

 意外とあっさり信じてくれたな。


「国としては、水源を発掘できるなら、それ以外のことは些細なことだ」

 それはその通りだ。

 父親は意外と話が分かる人のようだ。

 少し安心した。


「水源は、この国すべてにあるのか?」

「いえ、出る地域と出ない地域があるようです」

「なるほど」

 王は考える仕草を見せる。


「ジャンよ」

 王は重々しく口を開いた。

「全国の村に調査を行い、予に報告しろ。必要なものはすべてそろえる」




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