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クローズド クロス  作者: 柊 祈
一章 カースティア王国の冒険者
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子鬼の盛り場

 ギルドを出ると日もすっかりと暮れ、遠くに見える山頂に紅の残照が残るばかりだった。

他に必要な道具も皮袋の中に揃っている為、街門まで歩いて、そこに立つ門番にギルド証をかざして見せる。

「道中気ぃつけてな」

「あいよ」

 顔常連になった門番のゴヘイさん(五十一歳)と軽く挨拶を交わして、門を出る。

あの人いっつも煙草燻らせてるんだよなぁ。安い嗜好品でもないのに。


 どうでもいいことを考えながら踏み出したのはカースティア十五番街道。王都に繋がる主街道から分岐伸張された街道で十五番目だからだ。番号の振ってある街道は、乗合馬車が整備されているという目安にもなる。

 路面は土魔法によって整地され、旅人や馬車が行き来する事でさらに確りと踏み固められ、薄暗い夜天の下で薄っすらと光を放っていた。

 原因は、街道に一定距離を置いて填められている『旅程の神ヘクトーシャの加護石』である。

この石は一定以下までの魔物を街道から祓うと共に、昼間集めた陽光を路面に開放し、こうやって光らせる効果がある。おかげで明かりが無くても夜道をそれなりに歩ける。

 主街道は公共事業として国が順次施しており、定期的に守護石の交換期限もある為、どの国でも旅程神の神殿はそれなりに遇されているらしい。

 尤も、せいぜいが道を見失わない程度の輝度だし、主街道以外では普通に手持ちの光源が必要となるのだが。

あとデメリットとして、山賊やらには獲物を見つけやすく重宝されるとか。そりゃそうだろうね、目立つもの。


 数歩進んでから視線を街道傍の地面に向け、意識を集中、イメージを構築し、そこに己の魔力を注ぎ込む。


偶像創生クリエイトゴーレム


 駆け出しの頃から愛用していた魔法は、今や詠唱なしでも扱えるようになっていた。

昔はぶつぶつと小声で呪文詠唱したもんだが、俺も成長したもんだ、うん。

何で小声かって? 

だってなんか恥ずかしいだろ、他人に長文朗読聞かれるとか。

 この魔法は基本は土偶像クレイゴーレムを作るのから始まり、熟練して行けば石、金属、宝石とかは無論、水とか火とか流体固形問わず扱えるようになる。

一流の使い手は擬似人格まで宿せるというから驚きだ。その辺になると別系統の魔法も組み合わせた複合術になるらしいけど。

 俺はまぁ…せいぜい二流どまりだから。


 ぼこりと盛り上がり、もこもこと動き出した土塊は速やかに送り込まれたイメージにそって組み上がり、瞬く間に四足の獣の形を模る。

詰まりあれだ、馬型ゴーレムを作ったわけだ。

造詣はそれなりに見れる形といっておこう。粘土細工とかは結構得意なんだよ。絵は下手だけど。

 こうして足を手に入れた俺は、ひらりとその背に飛び乗って街道を一路西へと歩かせる。

 自分で歩かなくていいって楽でいいよな。跨がってると服が汚れるのが若干難点だが。


 そうして進むこと暫し。

 道中何事も無く、街道を外れて荒地へと到着した。町からそんな離れてないからね、治安はそれなりにいいさ。

寧ろこんな近場に盗賊とか出たら、退治の依頼が俺たちに来るか、領主の私兵が山狩りでもやってるだろう。


 ひょいとゴーレムから飛び降り、目前の大岩の下に続く石段を目にする。

あ、周りは暗闇だけど途中からゴーレムの頭に火をつけた松明突っ込んでるから問題は無い。あれだ、一角獣みたいに。優美さは破片もないが。

「さて」

 再び【偶像創生】を使う。

今度は、若干太めで腰くらいの高さで、腕が地面につく手長の石偶像ストーンゴーレムを二体。

 俺は普段単独ソロで活動し、こいつらが仲間代わりである。細かい融通は聞かないが、こと戦闘に置いては十分な性能を持っているので問題ない。

後は依頼に応じて組んだり誘われたりといった感じで稼いでいる。

 …昔、報酬とかお宝とかの分配で揉めたりして、あんまり編成パーティ活動とか好きじゃないんだよ。人付き合いが嫌いってわけじゃないんだが。


 ゴーレムに念じて命令し、二体が先行して入り口の石段を降りて行く。

足音がごつごつ響いて、実に騒々しい。隠密性とか破片もないが、ここなら見敵必殺の方針で行って問題ないので、音に釣られて寄ってきてくれるなら望む所でもある。


『子鬼の盛り場』。

ギルドに置いて初級上位の難易度に分類されている、古い遺跡から変じたダンジョン。

ダンジョンと言うのは発生過程で幾つもの分類があるらしいのだが、ここの場合は周辺に生息する魔物を誘きよせて飼いならす仕様だ。

 ダンジョン内部から発生する魔力とゴブリンの相性がいいらしく、よくゴブリンが巣くっているので定期的に町の冒険者が通っている。

更に言えば、ここは駆け出し冒険者のふるい落としの場でもあった。


 魔物とはいえ、最高で成人男子の半分くらいの身長をした人形で、同種間で言葉を交わし、襤褸や毛皮、何処かで拾ったらしい武具を身に付け、時に複数で襲ってくる。

 知能が低いため連携などつたないが、そこには確かに生きる者としての意思が感じられる。

他の獣型の魔物を殺す時と違い、これを殺すのにはそれなりの覚悟と意志の強さが求められるからだ。

覚悟の足りなかった駆け出しがここで消えて行く。

死ぬか、逃げ帰るかの違いはあれど。


 それとは別に、ここは女性冒険者にとっての鬼門でもある。

ゴブリンは異種交配の可能な魔物種であり、妖精や人間を好んで繁殖の母体にする。そして、その繁殖力もかなり旺盛ですぐ増える。

 ここは滅多居にないが、山野に巣を形成する野生のゴブリンに囚われた末路は…アレは悲惨と言うのも生緩い状態だったからな……。

 うん、まあ、昔救助依頼でちょっと。


「グギャギャッ」

「ゲギャッ! ルグゥ!」

 広めの通路を先行していたゴーレムがどうやらゴブリンと遭遇したらしい。

棍棒らしきもので殴りかかられて、反応迎撃に従って戦闘が始まっている場所を目指して駆け出す。

腰に佩いていた片手曲剣サーベルを抜き放ち、そこに飛び込んで一閃した。

冒険者に職種制限の無い世界。

学べば出来る事が出来る様になり、出来無い事は努力しても碌に身に付かない、そんな世界。


タタリ「但しチートはあんまり無い。国の英雄は居ても、飛びぬけた勇者は今の所居ないって感じだ。チートの代表格は竜族な」

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