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クローズド クロス  作者: 柊 祈
一章 カースティア王国の冒険者
4/15

冒険者ギルド

 正面玄関から中に入ってみれば、むさい男たちの巣窟―――、かと一般人には思われがちだが、このギルドだと見かける顔は若い。大半が十代から二十代と言った所か。女も少ないがそれなりに見かける。

俺みたいなおっさんも一部を占めては居るが。

 実際、土地土地によってギルドの様相は各々異なる。中には一般の想像通りに男むささ満載のギルドだってあるからな。


 ここはカースティア王国、その東端に位置するクランブス男爵領ノクトルクの町だ。

名前の由来は、ここを拓いた開拓団の団長がノクト・ルクさんだったから、と言う安直な物らしい。大体百年ちょっと前の譚だと。

 王都から乗合馬車で街二つ村四つを経由してやっと辿り着く、辺境と言うほどではないが田舎に属する。

だがこの町は、手前にある村よりも遥かに発展している。それは何故か?


 理由は、この町の近くにダンジョンが点在していた為だ。

世界におけるダンジョンと言うのは、ある意味で鉱山みたいなもので。

住み着いた魔物の素材や、場所によってはむき出しになった鉱脈から貴重な鉱物が取れたりもする。

 しかし当然ながら、荒事に縁の無い一般人ではどうにも出来ない。

故にダンジョンが見つかると、国が近くの村町を支援してある程度発展させると言う仕組みが出来上がり、その手の仕事を飯の種にする輩が必要とされるわけ。


「これはタタリさん。今日はどういった用件で?」

 顔見知りに適当に手を振りながら受付窓口を覗いてみれば、丁度常連の職員が声をかけてくる。

「よう、カイゼンさん。この間のは嫁さん、許してくれたのか?」

「ははは…、ええ、まあ何とか」

 からかいに苦笑と共に席に付くのは、眼鏡を掛けた真面目そうな青年だった。

この町の出身で、十代の頃から勤めているというカイゼン・トーワ、二十六歳。既婚者であり愛妻家として冒険者の間では知れ渡っている兄ちゃんだ。

 結婚記念日に運悪く残業が重なって、嫁さんにへそを曲げられたと酒場で項垂れていた姿が記憶に新しい。


「宥め賺して、改めて記念日やり直して、後は夜に目一杯優しくしてあげたら機嫌を直してくれましたよ」

「そーかそーか。よしテメエ今度酒場でたかってやる」

「ふっふ、嫌です」

 ニヤリと笑うカイゼンに軽く拳を振るってやれば、慣れた風に受け止めて居住まいを正す。

「では改めて。今日はどうされました?」

「ああ、最近は懐もあったかいんでな。のんびり『遊ぼう』かと」

「なる程」

 冒険者の間には色々と隠語がある。『遊ぶ』と言うのもその一つだ。

簡単に言うと、自身の実力なら片手間で散策出来る低難易度のダンジョン或いは狩場で、暇をつぶすといった意味合いである。

 この町だと、こう云う時は近場のダンジョンと相場が決まっていた。


「それでは、こちらに記入を」

「あいよ」

 手渡されたのは質の荒い樹皮紙。これはダンジョンや狩場に行く冒険者が、どこのにいつまでの予定で行くか、と言う届出だ。

基本的に、何時誰であろうと入りたい奴は入ればいい、但し自己責任でと言うのが共通の認識である。

ただ、これを出しておくと、予定通りに戻らない場合に捜索隊を出してもらえたり、緊急性の高い依頼がでた時に、腕利きの所在を掴み易くなる。

 そんな具合で、出来たら提出して欲しいとギルドに所属する時に誰もが説明を受けている。


 まあ、未発見のダンジョンとかを見つけて、お宝目当てにはいって戻らなくなる…みたいな事もしょっちゅうあるらしいが。

あと、狩場で修行中に魔物に返り討ちにされたりとかも、割と起こる。

文字通り、過信は命取りな業界なんだよなぁ…。


 差し出した用紙を受け取り、カイゼンさんが項目をチェックして行く。

「場所は『子鬼の盛り場』、時間は『夜鷹が羽を下ろすまで』、ですか」

 花街の灯が消える頃、と言う意味である。後半は。

「…どした、なんかあるのか?」

 若干考え込むような間を空けた青年に、気になって問いかける。

「いえ…出所の不確かな噂程度の物ですし…一応、お伝えしておきますが」

 それからいくらかの言葉を交わし、俺はギルドを後にする。


 目的地は、西街門を出て半刻ほど主街道を進んでから外れた荒地の一角。

考古学者の話では、魔族が繁栄した時代の物だという古い遺跡。ぶっちゃけ、物置か何かの趾らしく、いまや何にも残っていないのだが。


 名を『子鬼の盛り場』。

小さな人型種の魔物、俺たちにとっては常連の『ゴブリン』が住処にする、地下五階層までのダンジョンだ。

その後、彼の姿を見かけた者はいない……


タタリ「不吉なこと言うんじゃねぇよ」


次回『タタリ死す!』をお楽しみに!(´・ω・)b


タタリ「いや、死なねえよっ?!」

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