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クローズド クロス  作者: 柊 祈
一章 カースティア王国の冒険者
2/15

世界の大雑把な成り立ち(私見入り)

 屋台を素見しながら、通りを西にぶらりと歩いていく。

 すると街門と中央広場の丁度中間にある教会の前で、そこの神官殿が夕刻の説法を集まった信者たちに施しておられた。

 ちなみに俺は神を信じてない。存在を疑っているのではない、単に縋ってはいないという事だ。利用はするが信仰は捧げない、お礼はお布施で。と言う感じである。

 何とはなしに、その内容に耳を傾け、大雑把な世界の成り立ちを思い出してみる。

 ガキの頃に故郷の教会で聞いた程度だから正確さは当てにしないでくれ。


 始祖の神が誕生し、世界が創造され。

 幾柱の神が現れた。その時代は『神代』と呼ばれている。


 やがて新たに創造された天界へ神々が昇り、現世から姿を消す。

 別に神々の戦争があったとか、そういう壮大な話はない。

 神なき大地に、最初に現れたのは魔族だったと伝えられている。

 特に邪悪な種族だったと云う訳でなく、現代の史学上に置いて魔族と呼称されているだけだ。


 彼らは強大な魔力と、神に近い不老不死じみた肉体を持ち、他者に干渉しない・されない究極の個としての生き方を追い求めたとされる。

 俺達みたいな弱小種には理解し難いのだが、そのお陰で大きな戦争も起きず、あるのは個人間の口論くらいだったと言うから、どっちがより良い世界のあり方なのかは討論する余地もあるかもしれない。

 尤も、俺はそんな物はどうでもいいので、学者さん達にでも任せとこう。


 だが、彼らは歴史に登場してから実に約六万四千年後、突如としてこの世界からその痕跡を途絶えさせる。

 天災か、人災(魔族に対してこの言葉は微妙だが)か、はたまた異世界へ大移住したとか与太話は数知れない。

 しかし、唯一つだけこの世界の全ての者達が信ずる説がある。



 次に現れたのは、竜族。

 竜とは勿論、あの馬鹿でかくて頭が良くて人間にはどうする事もできない、トカゲの親玉だ。

 竜言語と言う独自の言語を用い、高度な魔術を駆使し、他種族の言葉や文化を理解し、それらとの共存を可能とする親和性を持っていた。

 彼らは生活するに不便な巨体を、魔術で人の様な姿に変化させて、家族を成し、社会を成し、やがて自然と一つの統一国家へと推移したと言う。

 長く平和な時代が築かれたと、今日でも生き延びている竜族は語る。


 そんな彼らも、滅びの道を辿った。

 全滅していないのは、彼らの王であった竜王ステラントが、禁術とされていた時空間転移の術を行使して、僅かな血族を未来に送り届けたからだった。

 竜王のその後の消息は、伝わっていない。


 未来世界に於いて、竜族亡き後に繁栄したのは妖精族。その頃の治世は、既に十万年を数えていたと伝えられている。

 そんな彼らに、時を越えて来た竜族から、嘗ての滅びの原因が伝えられた。


 『揺り篭の迷宮』

 入り口には神代語で馬鹿丁寧に名が記されていたと言う。


 それは突如として、辺境の里の近くに現れたのだと竜族は語った。

 どう見ても自然の造りではない、人工的なダンジョン。

 無論その出現は中央へ伝えられ、迅速に調査隊が派遣され…そこで彼らは遭遇したのだ。

 遥かな過去に滅びたとされる魔族に。


 その後の幾度かの調査隊により、それらが嘗て世界に存在した魔族とは別種ではないか、と言う報告が齎された。

 まず伝承に在るような不死じみた肉体ではなかった。

 言葉も知性も原始的で、魔力も本来なら竜族など歯牙にもかけないと伝えられていたが、実際には竜族の兵士達でもどうにか倒せる程度だったと言う。

 中央は更なる調査を決定し、迷宮奥深くまで竜族屈指の戦士、魔術士達が降りていった。

 次々と地下深くへの階層が発見され、突破すると更なる階層が現れる。


 迷宮出現から四百年目を迎えた日、世界は唐突に地獄へと変わる。

 何の前兆もなく空間を越えて現れる化け物共が、世界各所で跳梁跋扈し始めたのだ。それは調査の折、彼の迷宮で確認された魔族もどきと魔物達であった。


 竜族は例え幼子であっても竜である。

 その戦闘能力は現代の俺達の比ではなかった筈だ。だが倒しても倒しても倒しても、無尽蔵に溢れ出る化け物達。

 竜王の大号令による種を上げての総力戦も、数の力を前に徐々にその勢いを失い。

 最後の日、竜王都エンネンヘルグを取り囲まれ、最早絶望的な戦いへ望むしかなかったその時。

 竜王は一つの決断を下した。

 乱用されれば因果を狂わすとされ、禁術として厳重に封印されていた時空間転移。

 この災厄を後世に伝える為、まだ若く戦う力を残した竜種の血族を、それを以って未来へと送り届けると。


 竜族は妖精族の連合国家へと迎え入れられ、持って産まれた絶大な能力を活かし世界へと溶け込んでいった。

 彼らがもし未来での覇権を望めば、不可能ではなかったかもしれないと歴史研究家達は語る。

 だが彼らはそうはしなかった。

 竜王最後の命である、『未来において同様の災厄が訪れた時、そこに生きる種の助けとなるべし』。

 それを守り続ける事を、旨としたからである。


 これは、竜王が当時の災厄を突発的かつ偶発的な物ではないと、予見していたからだと云われている。


 そしてその予見通り、再び世界に『揺り篭の迷宮』は現れた。

 過去よりの使者に警告を受けていた四大妖精族、森の精霊に愛されしエルフ族、地の精霊に愛されしドワーフ族、火の精霊に愛されしサラマンドラ族、水と生命の精霊に愛されしウンディス族、未来において数を増やしつつあった竜族との大連合軍を組織し、多大な犠牲を伴いながらも迷宮を踏破、やがて最下層へと到り―――。


『敵は神だった』


 当時連合軍に所属した小隊長であり、現代に生き残るエルフ族最長老、メノンディースは伝える。

 対峙した瞬間、連合軍全ての者の頭に、一つの神名が浮かんだという。


 滅びを司るもの『グエンデア』


 神話にそう記されている神。

 この世界の神々は、例外である一柱を除いて善なる神らしい。

 死を司る冥神ノエトスさえ、魂に安息を齎す地母神として崇められている。

 だがグエンデアだけは何処も、誰も崇め奉ったりはしない。

 「滅ぼす者」。不滅の存在としてある筈の神々すら、彼の前では滅ぼされたという神代伝承。

 何かを滅ぼす時、彼の神は唐突に、何の脈絡もなく滅びを齎したとされる。

 或いはそれは神ではなくシステムなのかもしれない、と唱える学者も居た。


 だが、敵が神であったとしても、それが災厄の元凶であるならば除かなくてはならない。

 妖精・竜族連合軍は、畏怖に打たれながらも武器をとり、魔術を用い果敢に神へ挑み―――敗れた。

 生き残った少数が事態を伝える為に迷宮を脱した時、地上は既に魔物達の襲撃が始まっていた。

 主力は迷宮最下層にて壊滅し、妖精族も先の竜族と同様に滅びの道を辿るかと思われた時、連合各国に配されていた竜族の長老達が延命の秘策を以って妖精族を糾合した。


 彼らは遥かな過去に失われた時空間転移術の理論を応用し、時は超えず世界の位相をずらす位相転換術を、もしもの時の為に開発していた。

 各地でまだ生き残っていた民衆を率い、現世と僅かに位相のずれた世界へと導き、そこに隠れ里を形成した。

 全体人口は最早全盛期と比べるべくもなかったが、これにより妖精族、竜族は滅亡を免れる。


 それから百余年。

 『揺り篭の迷宮』がいつの間に消え失せ、世界に平穏が戻ったが、妖精族は隠れ里から出てくる事はなかった。

 元々が長命で出産率が低かった彼らは、若い世代が少なくなり、再び世界を統治する勢いを失っていたからだ。

 そこに台頭してきたのが俺達、人間だった。


 厳密に言えば、人間は人族と獣人族に岐れ、妖精族を祖とした。

 妖精族は当時、純血主義を尊んでいたが、異種族間での交流もなかった訳ではない。

 その中で育まれた種を超えた想いが、混血の子らを産み落としていた。

 彼らは正当な血族からは追放されたが、連合国家は辺境の地に混血種の自治都市を設け、そこに彼らを住まわせていたらしい。


 年月を経る中で混血は更に進み、地水火風全ての血を引く、妖精とはかけ離れた種へと分化していった。その内、神の眷属たる数多の精霊の加護の影響から、獣の特性を出現させる獣人が現れ始めたと言う。

 そして災厄の日、彼らもまた竜族に保護され、隠れ里へ身を潜めて生き延びる。

 人間族において尤も顕著だった特徴が、その繁殖力と環境適応能力にある。

 自由恋愛を是とし、多くの子を成した。

 祖より受け継いだ四大の属性は、あらゆる場所で、ある程度の生存力を獲得するに至っていた。

 結果、隠れ里に収まりきらぬほどになった人々は、より広い大地を求めて荒廃した世界へと版図を広げていく。


 人間族は妖精の長命性を失い短命だったが、幾代も世代を重ねながら土地を開拓し、村を拓き、町へと発展させ、都市国家を幾つも興した。

 しかしある程度発展すると、やがて土地の所有権を巡って争う様になり、とうとう同種での殺し合い――世界で最初の同種族間戦争を引き起こすという、不名誉な歴史を刻む事になる。

 混血が進みすぎ、種族としての枠がなくなった人間には、本来妖精族が本能として備えていた同胞観念や自然との親和性が失われていたのが根本にあったといわれている。


 戦乱の時代は、それから千余年に渡って続いた。

 幾つもの都市国家が興亡し、勝者が敗者を飲み込み、より強大となっていった。

 やがて複数の政治形態が生まれ、現代の世界図に近い形で国家が定まったのは、ほんの二百年前。


 今居るアトルコア大陸に置いては、

 帝政の軍事大国、バルターデン帝国。

 民主共和制を標榜し、民選議会が治めるメルタナス連合共和国。

 名を記されぬ始祖の神を最高神に頂き、信仰を持って法王が国を治めるノルア聖法国(ノルアは初代法王の名らしい)。

 王制を敷きながらも議会制を取り入れた、カースティア王国。

 自然回帰を謳い、南方の未開拓地方に集った人々が興した精霊信仰の国、ファナリタ。

 他にも小規模な国家が散在するが、主にこの五つのどれかに属している。

 その形態に同盟か属国かという違いはあったが。

久方ぶりに投稿。

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