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6 秋吉吉成:秘めたる想い

サブタイトルが、思いつきません。

「絶対にお前には負けないからな」

「勝負だ!」



 ことあるごとにそう言って向かってくる岩井哲。


 正直言って驚いた。


 そしてちょっと感動した。


 きっと、哲は僕の上辺だけを見て僕を「いい人」なんて誤解している人達とは違うから。


 きっと、違うから僕のことをあんな怒ったような目で見てくるんだろうって思ったから。


 頼子はそんな僕に、「吉成ちゃんらしい」と言って笑った。



 だけど彼女は知らない。


 本当の僕を知ったら、僕から離れて行ってしまうのだろうか。



 そして彼も、本当の僕を知らない。


 僕に勝ちたいと言う哲。


 それなら、彼は僕に勝ってしまったら、彼の中の僕の価値は容易に変わってしまうのだろうか。



 誰も知らない。



 いつも僕がこんなに怖がっているということを。




 きっと、知らない。






 委員会が終わった後、教室に戻ってきた僕は飛び出してきた哲とぶつかりそうになった。


 哲は僕のことに気がつかなかったようで、そのまま走って行ってしまった。


(もうすぐ授業が始まるのに……) 


 哲が行った方を気にしながらも教室に入ると、やけに楽しそうな頼子が目に入った。


 僕はこれでぴんときた。


 何を言ったのかと尋ねた僕に、頼子は「たいしたことじゃないよ?」と答えた。


 頼子にとって「たいしたことじゃない」は、全然「たいしたことじゃないこと」もざらにある。


 結局僕は、頼子に後を頼むと哲を追いかけることにした。




 頼子の言に従い屋上へ来ると、そこに哲はいた。


(やっぱりすごいな頼子は)


 両手両足を大の字に広げて寝っ転がっている哲に、僕は声をかけた。


 慌てて身を起こした哲の横に僕は腰を下ろした。


 それから僕は、それまでには考えられないほど普通に、哲と会話をしていたのだけど、剣道の話になった途端哲の様子が変わり始めた。



「勝負だ!」


 と、例のごとく言われたので頷く。


 哲はよくそう言ってくるから、きっと勝負事が好きなんだろう。


 だけど、今回は少し事情が違った。


 哲はこともあろうに、頼子を賭けて勝負をしようと言ってきたからだ。


 最初は、なんで頼子の名前が出てきたのかわからなかった。





 教室に一人戻った後も、授業中先生の話も聞かないで考えて、ようやく僕はある重大な事実に気がついた。


(よくよく考えてみたら簡単なことじゃないか)


 哲は、きっと頼子のことが好きなんだろう。


 そうだ。だってよく考えてみたら、しっくりくる。


 むしろ、今まで気がつかなかった方がおかしい。


 哲は入学したと同時に、僕と勝負しようと言ってきたんだから。


 それも、きっと哲は頼子に一目惚れしたんだ。

 

 でも、頼子の隣にはずっと僕がいて……。


 僕と頼子が付き合ってると勘違いしてたのなら……。


(うん、全部納得がいく!)




「吉成ちゃん、帰ろう? 私、何だかさっきから寒気がするの」


「え、大丈夫? 風邪かな」


「うーん、なんか違うような。ぞわぞわするような、嫌な感じ」


 腕を組んで首を傾げる頼子に、僕は席を立った。


 いつの間にか放課後になっていたようだ。


「風邪のひきはじめだったら大変だよ。早く帰ろう」

 

 僕は自分と頼子の鞄を持った。




「ところで吉成ちゃん、岩井哲はどうしたの? 結局あのまま戻ってこなかったけど」


 帰り道、そう尋ねてきた頼子に、僕は動揺を押し隠すように笑みを浮かべた。


「今日はもう帰るって。どうしてかはわからなけど、ごめん」


 これは本当だ。



 だけど、どうしよう。


 頼子に話した方がいいのかな。


 黙って頼子を賭けの対象にするなんて。


 でも、人の想いを勝手に話すなんて、してはいけないと思うし。




 それに……。




 つんつんと袖を引っ張られ、頼子を見た僕に、彼女は優しい笑みを浮かべた。


「吉成ちゃん、無理はしないでね。一人で大変だったら、私にも話してね?」


「……うん、ありがとう。頼子」



 僕は頼子に、「吉成ちゃん」と呼ばれるのが好きだ。


 頼子は優しい。


 誰にでも優しくない頼子に優しくされると、僕は本当に幸せな気持ちになる。


 やっぱり、頼子には話さないでおこう。


 哲との勝負が決着したら、よく話し合ってみよう。


 

 そう、僕は決心した。


きっと哲も、寒気が走っていたことでしょう。

吉成は〇然なんです。

わかりませんか? では書き換えて。

吉成は天〇なんです。

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