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1 秋吉吉成:僕の幼馴染

初めての投稿です。少しでもお楽しみ頂けたら幸いです。

「おはよう」

 にこり。

「四組の鈴木さん」


「おはよっ、秋吉君」

 にこり。

「一組の黒崎さん」


「おっす、秋吉」

 にこり。

「同じクラスの崎」


「おはよー、吉成くーん」

「今日も朝から麗しーわぁ」

 にこ。にこ。

「二年の沖先輩と後藤先輩」

 



 はっきりいって、この登下校の時間は僕にとって地獄に近い。


 何故だか、僕は知らない人からよく声をかけられる。

 

 いや、正確にはちょっと違う。

 僕が知らないだけで、相手にとって僕は知り合いなのだ。


 でも、自分のクラスメイトですらまともに覚えられない僕にとって、それは本当に苦痛だ。


 お願いだから、本当はいちいち僕に声なんかかけてほしくない。 

 

 実のところ僕は、人の顔と名前を覚えるのがものすごく苦手なんだ。


 目が悪いわけじゃないし、特に物覚えが悪いわけでもないはずなのに、何故だかまったく覚えられない。


 横で、頼子が小声で誰だったのかを教えてくれなければ、僕の神経は疲労で擦り切れてしまうことだろう。

 

 

 声をかけられる。

 とりあえず僕は笑みを返す。

 頼子がその人が誰か教えてくれる。



 ずっとそれの繰り返しで今までやってこられた。

 

 頼子がその相手を答えられなかったことなんて今まで一度もない。


 逆に、なんで頼子はそんなに覚えてられるのかと聞いたことがある。

 

 そうしたら頼子は、「覚えるのと興味をもつのは別」と答えた。

 


 本当に頼子はすごいと思う。

 


 一方的な知り合いを増やしたくなければ、やたらと笑わなければいいじゃないかと思われるかもしれない。


 でも、そうしなければ、僕のまわりからは頼子以外の人間は誰もいなくなってしまうだろう。

 

 実際、幼稚園のころはそれが原因でいじめられていたのだ。

 


 僕は頼子さえいてくれればそれでもかまわなかったけれど。


 

 そのころだったと思う。

 

 頼子が言ったのだ。

 

 

 『笑って』、と。

 


 ただ、笑っていればいい。

 そうすれば、自分がフォローするから。



 そして、それは今に続いている。



 頼子には、感謝してもしきれない。




 僕の名前は、秋吉吉成。

 

 高校の一年だ。

  

 いつも隣りにいるのが、実際に家も隣りの江川頼子。



 いわゆる幼馴染という間柄である。



 頼子はとても小柄で、腰まである長い髪がサラサラしてて、とても可愛い。

 背が低すぎるのがもったいないとよく人に言われるけど、そんなことはない。



 そんなことで、頼子の魅力は損なわれない。



 ただ、頼子は興味のないものに、まったく関心を示さない。

 そんな頼子から、幼馴染というだけで特別視されてる僕は、本当に幸運だったと思う。

 


「頼子は可愛い」

「頼子はすごい」



 たびたびそう言う僕に、



「私も、そんな吉成ちゃんが大好きよ」


 

 そう言って頼子は返してくれる。



 頼子がそんなふうに言ってくれるのは、僕くらいのものだし。


 頼子がそう言ってくれるだけで、ほんのり心があたたかい気持ちになる。


 

 

 頼子は僕の、本当に大切な幼馴染なんだ。  

 

 

次は頼子視点になります。

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