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聖血剣者伝  作者: 常陸橫
3/6

03.立入禁止施設の坊主

 夏河がその場で倒れる。

「xxx...xxxxxxxxx!!」

 大紀がエリルに向かって走り出す。しかし、エリルは躊躇なく引き金に指をかけた。

 再び銃声が響く。弾は額に命中し、大紀は勢い良く倒れ込んだ。

「夏河! 大紀!」

「安心しろ。殺してはいない」

 慌てふためくおれにエリルが言う。ふとあの爺さんの言葉を思い出した。


――催眠弾を撃ち込んだんでしょう。


 思い出して気を落ち着かせる。

「催眠弾か?」

「いや、言語弾だ」

 その返答に思わず吹き出しそうになった。『言語弾』て……。真顔でそんな変な単語を言うなよ。そんなことを思っていると、夏河の体を起こした。

「え? 何でわたし生きてるの?」

 喋っていることが分かるようになった。

「すげえ、言葉が通じる!」

 なるほど、だから『言語弾』。いやしかし、そのネーミングはないだろ……。

 一人で苦笑いしていると、夏河が変な目でこちらを見た。

「痛てて、頭打った」

 大紀も気が付く。『撃たれた』だろ? と言いたかったが、話がややこしくなりそうなのでやめた。

「これで分かったか? この世界はお前たちのいた世界とは全く違うのだと」

 これが現実だと認めたくないという思いもあるが、やはりおれたちの常識を超えている。認めるしかないだろう。

 それでも、いやそうであるから、おれはこの世界に居続けるなんてのはごめんだ。

「この世界がおれたちのいた所と違うなら、どうやって別の世界へ行ったんだ?」

 ダメもとで聞く。

「それに答えたら、お前たちは帰ろうとするだろう? それでは、連れてきた意味がないだろう……」

 やはりそうやすやすと教えてはくれないか。しかし、エリルの言葉は続いていた。

「……そうだな、お前が私の望みを叶えたなら、教えてやってもいいだろう」

 思わぬ返答だった。おれは半分諦めていたが、希望の光はまだ消えていなかった。おれはエリルに食いついた。

「その望みってなに――」

「喧しいぞ、貴様ら!」


――いつの間にか、エリルの後ろに筋骨隆々で坊主頭の男がいた。話に夢中で気が付かなかった。

 目を大きい目玉をギョロギョロとしておれたちの顔を見る。

 でかい、いや、強い……。

「ひぃっ、す、すみません」

 夏河は圧倒され、謝るとすぐに部屋の隅に逃げた。

「む? ガトロンか。こんな所で何やってる? ここは関係者以外立入禁止だぞ」

 エリルが言う。どうやら知り合いのようだ。ガトロンと呼ばれたその男は眉間にしわを寄せた。

「それはこっちの台詞だ、エリル。おれはここで護身術を教えているんだ」

「天下の武術家がこんな狭い所で護身術の教官とは…。落ちぶれたものだな」

 エリルはやれやれといった素振りを大袈裟にしてみせた。

「黙れ!」

 ガトロンは怒鳴りつけると、エリルを部屋の外へと閉め出してしまった。


 ガトロンはこっちに向きを変え、この部屋にいるおれたち6人を集め、睨みつけるように見た。そして、おれを見るとその『ギョロ目』をさらに大きくして、体全体を見た。

「貴様の服装、この世界のものだな」

「え?」 

 おれは自分の服を見る。

「確かに」

「変わった服」「言われてみれば」


 ガトロンはひょいとおれを部屋からつまみ出した。文字通り、首筋をつまんで。

「ここは関係者以外立入禁止だ。出て行け」

 そういえばそうだった……。おれは渋々とその施設の外へ出た。

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