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聖血剣者伝  作者: 常陸橫
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02.言語の壁

 ここはおれがいた世界とは異なる世界、異世界だという。

 この爺さんはこの国の王であり、少女はその孫娘。

 国は魔獣や賊に度々襲われ、荒廃している。そのため、国に害をもたらすものどもを討伐するために、おれがこの世界に連れて来られたんだと……。


「信じられるかよ!? 第一、おれの最後の記憶では定食屋で銃撃されてるんだぞ!」

 突飛すぎる。まず、記憶と全く噛み合ってない。

「ええ、それは催眠弾を撃ち込んだんでしょう。時空を超える時は、意識がない方が何かと便利ですので」

「つまり、あれもお前らの差し金ってことか」

 無理矢理感が半端じゃないんだが。新手の宗教か何かに拉致されてしまったのか? とうとう不安になってきた。

「他にも人はいるのに何で……」

と、言いかけてふと気付く。そうだ、夏河と大紀は無事だろうか。

「他にここに連れてきた奴はいるのか?」

「確か、あなた様と一緒に5人ほど、連れてきたと聞いております」

ということは、夏河、大紀も来ているはずだ。確かあの時の店におれたち以外に2人しかいなかった。おれは部屋を飛び出して廊下に出た。

 が、肝心の場所が分からなかった。

「爺さん! そいつらはどこにいる?」

「ええ、離れの施設に入れております」

「離れ?」

「見に行きたいか?」

 横から女が喋りかけてきた。すらっとした感じで、背は170くらいありそうだ。日本人の平均身長より(僅かに)上のおれと目線が同じくらいか。肩にかかるくらいの短い黒髪だが、やはり外人顔。

「おお、エリルか! ちょうど良い。勇者様を案内しなさい」

「承知」

 エリル、と呼ばれた女の返事を聞くと、爺さんは去っていった。

「こっちだ。行くぞ」

「あ、ああ」

 おれはエリルに従って廊下を歩いて行った。


 城の外の、庭のような所に出た。見慣れない植物だらけだだが、綺麗に管理されており、不気味というよりは不思議な印象だった。おれは今更ながら、ここは日本ではないと思い始めるようになった。


 庭を抜け、石造りの殺風景な建物に着いた。どうやらこれが離れのようだ。扉には『関係者以外の立入禁止』と書かれている。おれはそれを読むとき、何故か違和感を覚えた。

「お前は、まだこの世界のことを受け入れていないな」

 エリルが扉の方に体を向けたまま言った。当たり前だ、と言いたかったが、エリルがこちらを向いて言葉を続けた。

「ここに入れば、お前は全てを受け入れるだろう」

 エリルの目を見て悪寒が走った。こいつ、何か企んでいる……? エリルは扉を開けて入る。少し間をおいて、おれも中へ入った。


 外観からおれが想像していたのと違い、中は灯が灯っており明るい。


「ここはこの国で生きていく術を覚えさせる、いわば学校のような施設だ。この世界はお前たちのいた世界とは違い、機械もなければ電気もない。逆に、この世界にしかないものも多い。そういう知識などをここで頭に詰め込んでもらっている」


 エリルの説明を聞いて、少し胸を撫で下ろした。エリルは近くにいた青年に、最近ここに来た者たちの場所を訊いた。

「そこの角を曲がった部屋だ」

 おれは急いでその角を曲がり、部屋の扉を開いた。そこにはトランプに興ずる夏河、大紀、店員、そして二人のおばさんがいた。


 夏河がおれに気付く。トランプを捨ておれに抱きついてきた。

「xxxxxx!」

 夏河が喋りかける。

「xxxx!」

 大紀もそう言って駆け寄る。

 後ろで店員とおばさんらが話している。

「xxxxxx...」「xxxxxxxxxxx! xxxxxxxx」「xxxx」


 分からない…何を言っているのか。5人が喋っているのは間違いなく日本語であるのに。日本語だと分かるのに。しかし、何故だ、何故おれは理解できない…。

 戸惑うおれに気付いたのか、夏河と大紀も心配そうな顔になる。

「理解できないだろう?」

 後ろからエリルの言葉が聞こえた。何故日本語が分からないのに、こいつらとは話せる?

「どういうことなんだ? 何でおれは日本語が分からない? 何でお前の言葉は分かる?」

 エリルはおれの問いに答えることなく、懐から拳銃を取り出し――

(じき)に分かる」

――夏河の眉間を撃った。

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